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「子持ち様」で分断する職場の人間関係。「子持ち様は無責任だよ」「介護は相談すらできない」

  • 2024.4.24
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社会の制度もあり職場で優遇されている子持ちの女性たち、ネットでは「子持ち様」などと言われている。面倒をみなくてはいけないのは、子どもだけではなく年老いた両親だったりすることもある。今の時代、不公平感はつのっていると感じられる。
社会の制度もあり職場で優遇されている子持ちの女性たち、ネットでは「子持ち様」などと言われている。面倒をみなくてはいけないのは、子どもだけではなく年老いた両親だったりすることもある。今の時代、不公平感はつのっていると感じられる。

ネット上で「子持ち様」という言葉が一人歩きしている。子どもの支援が取り沙汰されているときだけに、不快感を覚える人もいるのかもしれない。だが、こういった言葉によって、そこはかとなく嫌味と悪意が飛び交い、さまざまな人間関係を壊していくのではないだろうか。

小さな職場だけに肩身が狭い

「私は、産休を経て今年から職場復帰。7歳、4歳、1歳の子がいるので時短で働いています。保育園だったら預けておけるんですが、いちばん上が学童に入れなくて。今までも産休を完全にとったことはなくて、なるべく早く復帰してきたけど、今回は時短勤務を願い出るしかありませんでした」

ユミさん(40歳)は少しやつれた表情でそう言った。ユミさんはメーカー勤務で、女性6人、男性2人のグループに属している。うち女性ひとりが、入れ替わりのように産休に入ったので、時短を言い出すのは苦しかった。

「なんとか仕事を割り振ってもらったり、家でも仕事はするからと言ってはあるのですが、ときおり『子どもがいる人はいいよね』という独身女性たちの声は聞こえてきました。差し入れをしたり、ときには家に仕事を持ち帰るからと言ったりしていますが、うちの班長の言動がはっきりしない。そこに問題があるような気がします」

50代班長「生まない人たちの分まで…」と

班長は50歳の男性。今どきのコンプライアンスの風潮を気にしているのだろう。時短のユミさんの仕事を独身女性たちに割り振った。

「あげく、子どもを育てるのは大変なんだ。しかも3人もいるんだから、生まない人たちの分も生んでくれてるんだぞ、と言わないでいいことまで言ってしまうので、そのとばっちりが私に来ているんじゃないかと思いますね。

もうちょっとシステマティックに割り振るとか、私が家でできる分を見極めてくれればいいのに、うちの会社は時短勤務の場合、家で仕事をしてはいけないんです。いけないというより出社して働く場合の仕事と、在宅で働く場合の仕事の内容がまったく違う」

ユミさんはあくまでもチームで仕事をしたいと考えている。だから在宅でできる仕事はあまりないのだ。在宅で仕事をしたいなら部署を異動するしかない。中堅企業なのに融通がきかないんですとユミさんは苦笑した。

「会社側が社員の実態についてきてない。時短の場合も融通がきかないので、退社する直前に仕事が回ってきて、ちょっと片づけちゃおうかなと思っても許されない。しかたなく隣の人に頼むしかないんです。

先日も身を縮めて帰ったんですが、どうやらグループ内の女性がその日、SNSに『だから子持ち様は困る』と書き込んだみたい。もちろん匿名でしたけど、その人の投稿を遡ってみたら、だいたい誰だかわかりました……」

誰かにしわ寄せがいってしまうような仕事配分であれば、仕事を肩代わりする人たちにとって負担は大きすぎる。これはやはり上司や企業側が改めるしかない。

子どもがいるのがエラいのかと言いたくなることも

一方、独身で仕事が大好きなリオさん(37歳)。バツイチ子なし、いくらでも働きますというスタンスで仕事をしていると笑う。

「ただ、確かに“子持ち様”の仕事を途中から担当しなければならないときなどは、ちょっと負担が大きいなと感じますね。子どもがいて時短で働いているのに、やたらと仕事を抱え込んでいた同僚がいるんですよ。

あるとき上司が、すべて彼女が担当するのは無理と判断、私と別の同僚に仕事が割り振られたんですが、ある程度進んでいた仕事を途中から引き継ぐのが大変でした。だったら、最初からこっちに任せてくれればいいのにと、あのときは陰で『子持ち様は無責任だよね』と同僚と悪口を言いました(笑)」

お互いさまだからと、情でカバーするのは限度がある。子どもが急に熱を出したとか、学校でケガして駆けつけなければならないとか、もちろん子どものいる人には「不測の事態」がついて回る。それはわかっているけど、とリオさんは言う。

「実は私は母とふたり暮らしなんですが、一昨年、母が胃の手術をして退院してきたあと、1日5~6回、小分けにして食事をしなければいけない時期が続いたんです。体力も落ちているし、私も時短にしたいくらいだったけどそうもいかない。

残業して帰って、翌日の母の食事を作って、朝も自分と母の分のお弁当を作ってから出社していました。誰にも言えなかったですね、あのときは」

看護や介護は相談すらできないのか?

だからこそ、子どものことなら言い分を聞いてもらえて、看護や介護の場合は誰にも相談すらできないのかとかなり暗い気持ちになったという。

「もちろん、企業側が社員の状況に合わせて働き方の要望を聞いてくれないと改善されないのは当然のことですが、まあ、私の場合でいえば、ひがみや妬みもありますね(笑)。

結婚に失敗してバツイチになって子どももいなくて、あとは親の介護がいつ来るかと思っている。先が暗いわけですよ。でも子どもをもっている人は、子どもの成長も楽しみだろうし優遇もされている。その不公平感が、今の時代、どんどん大きくなってきているのかもしれません」

個人間では解決できない不満のタネが、職場には静かにたまり続けているのかもしれない。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。

文:亀山 早苗(フリーライター)

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