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生きることを選び、前向きに諦める気持ちを持つ。治療を続ける私の心の現在地|連載"生きる"を綴る

  • 2024.2.29
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全身性エリテマトーデス(SLE)を発症して、再燃して、わたしには一度たりとも「薬を飲まない」という選択肢はありませんでした。

そればなぜか…理由はただひとつ。この先の人生をまだまだ生きてみたいからです。

再燃し、緊急入院をした当時の主治医に、「今の宮井さんの状態は決して良いとは言えない。SLEは予後が良いとされているのに、です。私は宮井さんに、仕事や子育て、趣味も謳歌し、健康と言われる同年代の女性と同じようにこの先の人生を送ってもらえるように、これから新しい治療方法を提案します」と言われたことを鮮明に覚えています。

入院中の記憶は曖昧で正直あまり覚えていないのですが、あの日呼び出された場所も主治医の表情も空気感までもはっきりと覚えているのです。それくらい、「私はこんなにもギリギリのところまで来てしまったんだ」と、しばらく涙が止まりませんでした。

あのような経験をした一人として、「薬を飲まない選択」をしているSLE当事者がいるという事実を知り、驚くと同時に胸を痛めています。

SLEの症状は全身多岐に渡ります。皮膚や関節に現れる紅斑や炎症といった目に見える症状だけではなく、腎臓、肝臓、心臓、肺にも影響が出ます。人によって症状や度合いは異なるものの、併発する病気や合併する病気があるのも事実です。

私たちの病気は、医療の進歩により5年生存率は95%以上になりました。

この有難い現状の背景には、ステロイドの存在があります。SLEの治療にはステロイドが不可欠であり、ステロイドが使われていなかった時代に比べると病気のコントロールは良好となり、おかげで生存率が上がったとされています。

ステロイドが使われていなかった1950年代の5年生存率は50%程と言われていますから、いかにステロイドが不可欠なのか一目瞭然です。とはいえ、ステロイドによる副作用は、当事者ならば現実に目を背けたくなることが沢山あるでしょう。私自身も、様変わりする見た目の変化に愕然とした日々を過ごした経験は忘れられません。

見た目の変化で言えば、抜け毛、脱毛、顔に脂肪がついて満月のようになるムーンフェイス、首から肩、上背部にかけて脂肪がつく野牛肩(バッファロー肩)、体幹部に脂肪がつく中心性肥満など、鏡を見るのも悲しくなるような経験をしてきました。

日に日に変わっていく姿を直視するのが怖かった日を過ごし、「ステロイドさえ飲まなければこんな風にならなかったはずなのに…」と何度思ったかわかりません。

それでも、ステロイドをはじめSLEに有効だと言われている薬を服用してから今に至るまでを振り返って思うこと。それは、日常生活を人並みに過ごせるところまで回復したのは、治療のおかげとしか言いようがない、ということです。

私は2019年に発病、2021年に再燃を経験したのですが、肝臓と腎臓の数値がなかなか改善せず、新しい治療を始めるまで少し時間が掛かりました。とことん悪くなると、新しい治療を始めることすら出来ない、進まないことも初めて知りました。

ですから、現段階で症状が軽いから、薬の副作用が怖いからという理由で薬をやめないでほしい。決して自己判断でやめないでほしいのです。

あなたが、大切な人と当たり前に過ごしている日常が奪われる前にぜひとも治療を再開してほしい。正しい情報と知識を手に入れて、自分自身の身体と人生を守ってほしいのです。

そのためにも、当事者である私たちのヘルスリテラシーを高める必要がありますし、発信する一人一人も言葉に責任を持たなくてはいけないのだと思います。

大きなお世話と知りながら、届けたくても届かない、同じ病の当事者へメッセージを贈った私は昨年12月、ステロイド性による特発性大腿骨頭壊死症と診断されました。

ステロイドの恩恵を感じながらも、ここまでくると憎き存在ではありますが、結果だけを切り取って後悔をすることは簡単です。

憎くても止めることが出来ない治療薬である以上、今を嘆くよりも前を向いて進むしかありません。

現在、日常生活を過ごす上でいくつか不都合さはありますし、歩行もこれまでのようにはいきません。好きだったランニングもしばらくお預けです。

惨めとも、情けないとも違うような、恥ずかしさとも違うような、そんな感情を抱きつつも、どうせ格好つけたって不都合さは隠せません。

ここで「出来ない」ではなく「出来たことが出来なくなる」を想像してみてください。

ごく当たり前に出来ていたことが、突如あるいは徐々に出来なくなる気持ちは言葉にし難いほど、とても複雑です。日常が随分と変わってきます。
見る景色も、見ようとする景色も変わってくることでしょう。

未だに気持ちを表すドンピシャな言葉は見つかりませんが、ただただ言えるのは「これまで出来たことが出来なくなる」を認めるには勇気が必要で、「これまで出来たことが出来なくなる」を受け入れるには覚悟が必要だということ。逆らって、抗って生きるより、ありのままで生きる方がラクなのかもしれない。今までのように歩けなくても、フルマラソンどころか小走りさえも走れなくても、このような状況でインストラクターとして復帰することに意を唱える人がいたとしても、私はこれまで出来たことが出来なくなった事実を認め、受け入れ、これまで同様に前向きな諦めをしました。

勇気と覚悟があれば怖くない。

あの日以来、まるで鎧を剥がしたかのように気持ちがとてもラクになりました。

こんな姿を可哀想とか気の毒ねとか言う人がいるかもしれないけれど、私には私にしか生きられない人生が、そして、あなたにはあなたにしか生きられない人生があるはずです。

私は私の人生を謳歌し、これからも強く、たくましく生きていきたいと思っています。

宮井典子

SLE Activistとして活動。37歳のときに膠原病予備軍と診断される。38歳で結婚し、39歳で妊娠、出産。産後4カ月で仕事復帰し、ピラティスのインストラクターとして精力的に活動。46歳のときにSLE、シェーグレン症候群を発症。現在は、誰もが生きやすい社会を目指してSNSを中心に当事者の声を発信。

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