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野球選手を諦めない! 「腱板損傷」で肩を痛めた子どもへのアドバイス

  • 2015.12.16
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【ママからのご相談】

40代。15歳の息子のことでご相談です。息子は9歳のときから野球を始め、中学校の野球部でも1年生のころからエースピッチャーとして活躍してきました。

ところが、 中2の後半から中3にかけて「肩が痛くて投げられない」と訴えるようになり、総合病院の整形外科で診ていただいたところ、医師から『腱板損傷(インピンジメント症候群) 』で投手を続けて行くのは無理だと宣告されました。

将来はプロ野球のピッチャーを夢見ていた子ですので、つらくてかける言葉もありません。どうしたらいいのでしょうか?

●A. 野手に転向してバッターとして大スターになることをすすめてみてはいかがでしょうか。

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。ご相談ありがとうございます。

筆者はピッチャーをやりたくても素質がなくてやらせてもらえなかった野球少年でしたので、息子さんの気持ちは逆の意味でよく分かります。

ピッチャーは野球の花形です 。ただ、だからといっていつまでも泣いていたって仕方がありません。

腱板損傷(インピンジメント症候群)という疾患の特徴に正面から向き合えば、野球の9つあるポジションの中で、投手以外であれば今からでも大スターになれる可能性がいくらでもあることに気づくはずです。

息子さんには、野手に転向してバッターとして大スターになったらと、新しい夢を持つことをすすめてみてはいかがでしょうか。

都内の大学病院の整形外科でスポーツ診療科を担当するドクターに伺ったお話を参考にしながら、一緒に考えてみましょう。

●腱板損傷(インピンジメント症候群)の症状とメカニズム

『腱板損傷(インピンジメント症候群)は、“野球肩 ”と呼ばれます。肩を上げていくときにある角度で引っかかりを感じ、痛くてそれ以上には上げられなくなる症状の総称です。

腕を上げていく(あるいは下ろしていく)ときに、およそ60度から120度の間で特に強い痛みを感じることがあり、これを有痛弧徴候(ペインフルアーク) といいます。野球の9つのポジションの中ではピッチャーの発症率が極端に高い のです。

この疾患が起こるメカニズムは腱板と肩峰が“衝突(インピンジメント)”する刺激が繰り返し加わることによって滑液包に浮腫や出血が起こるというものです。

安静にするとこの状態は正常に戻りますが、動作を反復・継続すると症状は再発し慢性化していきます。進行すると腱板が部分断裂することもあり、また肩峰の下部に棘(とげ)状の骨ができて、痛みがとれなくなっていきます。

そもそも骨の形態の個人差で肩峰が生まれつき下方向に突出している人に発症しやすい疾患のため、基本的な治療法は投球動作のような痛みを引き起こす動作を避けることになります。

野球を続けることは差し支えありませんが、ピッチャーとしてプレーすることには医師としては賛成いたしかねます 』(40代男性/都内大学附属病院整形外科・スポーツ診療科医師)

●医学的には“投手以外のポジションで大成する”ことの方が合理的です

息子さんは今はさぞかしショックであろうと拝察いたしますが、スポーツ診療科のドクターの説明で分かるように「野球を続けてはならない」と宣告されたわけではありません。

ドクターも「ピッチャー以外であればほとんど問題ない 」とおっしゃっているに等しいのです。

よく、整体治療院のWebサイトで「腱板損傷でも投手は続けられる」という記述を見かけることがありますが、筆者は医学的に合理的な「投手以外のポジションで大成する 」という目標で野球を続けることの方が賢明な選択ではないかと思います。

●メジャーで内野手や捕手の大選手となれば日本人選手初となれます

日本の野球がこと投手に関しては世界トップレベルであることは、今や誰もが認めるところです。

米国のメジャーリーグでも野茂英雄選手、佐々木主浩選手、黒田博樹選手、田中将大選手、ダルビッシュ有選手、上原浩治選手、岩隈久志選手といった大投手が既に出ていて、もはやピッチャーに関して言えばメジャーリーグも日本人野球選手のフロンティアではありません。

それよりも、米メジャーリーグの関係者たちから「日本人選手が大成するのは身体能力的に極めて難しい 」と言われている内野手や捕手といった分野で挑戦してみるというのは、いかがでしょうか。

また、外野手の分野も(鈴木)イチロー選手や松井秀喜選手の成功例があるとはいえ、本塁打王や打点王を獲得するほどのスラッガーは日本人選手からは出ないだろうと言われています。

息子さんは、その常識に挑戦してみてはどうでしょうか。こんなに夢のある大きなチャレンジもそうはないと思います。

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腱板損傷の医学的なお話に戻りますが、温熱療法、ヒアルロン酸や副腎皮質ステロイド薬の局所注射。

それでも効果が薄い場合には肩峰の前下面の切除や烏口肩峰靱帯の切除手術といった治療法もあるにはあるようです。

しかし、ピッチャー以外のポジションならそこまでしなくても問題なく野球を継続できるというのであれば、その方向に夢を切り替えることの方が、無理がないようには思われませんか?

息子さんの気持ちが落ち着いてきたころを見計らって、一度お話しされてみるのも無駄ではないように思います。

【参考リンク】

・インピンジメント症候群とその治療法 | 順天堂大学医学部付属順天堂順天堂医院整形外科・スポーツ診療科(http://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/seikei/kanja/kanja02_03_3.html)

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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