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軽視するとブラック扱い? 経営者が理解すべき「産休&育休」の現状

  • 2015.12.14
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【パパからのご相談】

中小企業の社長です。産休育休を取らせてあげてるにも関わらず、復帰せず退職する恩知らずな社員に悩まされています。

なんでも、 「復帰時のポジションを不当に下げられてはたまらない」とか「元と違う部署に勝手に転属させられるのは困る」とか言ってきますが、そんなの休んでたのだから当然でしょう。私にも子どもがいますが、私のころには産休を取得するなんてことは、上司からも同僚からも後ろ指を指される行為でした。それに比べたら随分ましになった思うのですが……。

今の若い連中は、口を開けば「権利、権利」のブラック社員で、本当に困り果てています。どうにかならないものでしょうか。

●A. “ブラック”なのはどちらでしょうか?

育休取得中のパパライター、矢山ユースケです。

さて、どうお答えしてよいものか……。2015年11月に“マタハラ訴訟”についての報道がありましたが、経営者側の方々の認識が、今回のご相談者様と同じようなレベルだとしたら、安心して子どもを産み育てられる日はまだまだ遠いのかな、と思わざるを得ません。

ご相談の内容を読む限り、ブラックなのは社員側ではなく、ご相談者様の会社が“ブラック企業”であるように思えます。理由としては、社長であるご相談者様が、あまりに産休・育休という制度について誤認識が多いからです。

それでは、ポイントごとに解説していきます。

●産休・育休は労働者の正当な権利です。会社が与えているものではありません

まず、経営者や管理者の方々に勘違いしていただきたくないこととして、「産休、育休は会社が与えるものではない。法律で定められている労働者の権利である」という大前提があります。

産休・育休は、法律で定められた労働者の権利です。労働者側が「産休を取得したい」と申請した場合、事業者側はこれを拒むことはできません(だからといって、労働者側が無理なスケジュールで申請したり、上司や同僚に相談なく産育休を取得してよいというわけではありません)。

●復帰時のポジションは“原則維持”が原則です

続いて、復職時のポジションについてです。こちらは法の指針として、『育児休業後においては、原則として原職又は原職相当職に復帰させることが多く行われているものであることに配慮すること』と定められています。

『事業主は、育児休業をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない』という別の条文と重ね合わせても、事業者側が休業後の労働者のポジションを“不当に”“勝手に”むやみやたらと異動して構わない、ということにはなりません。

復帰後の配置についての処遇は努力義務ですが、それを盾にして事業者側の意図を押し付けてよいことにはなりませんので、くれぐれも勘違いなさらないようにしてください。ただし、絶対に休職前と同じポジションに戻さなくてはならないというわけではなく、例えば「元の所属部署が廃止になった」というような場合は配置転換が可能となります。

●「恩知らず」というほどの制度が定められていますか?

ここが最大のポイントなのですが、ご相談者様の会社では、産休・育休時に、何か特別な補助が制定されているのでしょうか。

企業によっては、法律で定められた以上の、手厚い産休・育休時の補助制度を定めている素晴らしい企業があります。ご相談者様の会社に特にそのような定めがなく、休業中の従業員に対して金銭的なサポートなどを行っていない場合は、少なくとも「恩知らず」などと言える立場ではありません。

従業員が産育休を取得するにあたり、仕事の割り振りや代替スタッフの手配など、事業者側として「煩わしい」と感じる部分があったことでしょう。そのお気持ちはわからないでもありません。しかし、それらの一連の出来事に対して「やってやった」と上から目線で見てしまうと、心理的な行き違いが発生してしまいます。

●正しい認識で、社長として恥ずかしくない対応を

ご相談者様がお子様を育てられたころには、現在のように産休・育休の制度が整備されていなかったことでしょう。しかし、現在ではきちんと法整備され、わずかではありますが、私のように男性でも育児休業を取得する労働者も出現し、現政権もそのような活動を後押ししています。

もし、今後、ご相談者様が今の誤った認識のままで取引先など他社のトップ級と接してしまった場合、「あの会社は時代錯誤だ」「コンプライアンス意識が低い」「社員がかわいそうだ」といったマイナスの評価を得る可能性があります。特に外資系企業は個人の権利についての意識が高いことが多いので、注意が必要でしょう。

これを機に、正しく産育休について認識していただき、社長として恥ずかしくないようなご対応されることを期待します。

【参考リンク】

・育児・介護休業法について | 厚生労働省(http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/tp0701-1.html)

●ライター/矢山ユースケ(IT系パパライター)

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