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3年前に不倫した女性を、猛烈に反省させた“妻の叫び”。近くにいた他人の心までえぐる|ドラマ『あなたがしてくれなくても』

  • 2023.6.8
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6月1日に放送された『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系、木曜よる10時~)の8話は、これまで以上のしんどさを与えるヘビーな内容だった。

女子SPA! ドラマ『あなたがしてくれなくても』第8話より ©フジテレビ(以下同じ)

パートナーに断られる辛さ、求められない苦悩

8話冒頭から、誠(岩田剛典)との浮気を確信した楓(田中みな実)がみち(奈緒)を詰めるシーン、加えて結衣花(さとうほなみ)に対してかつて結衣花が3年前に不倫した男性の妻である鞠子(佐藤めぐみ)が慰謝料を請求するシーン、というハードすぎる2試合がいきなり開始。クライマックスのような展開が繰り広げられ、一気に緊張感が高まる。

まず楓と未知のマッチアップでは“被害者”である楓がみちに謝罪させたりなど有利に試合を進めるが、浮気のキッカケが吉野家のセックスレスだったことを告げると事態は一転。

楓は「たかがレスごときで」と口にする。その言葉にみち自身もイラっとしたとは思うが、それ以上にまさに目の前にいる楓とのセックスレスに悩み苦しんでいた誠の顔が浮かんだのだろう。「たかが、じゃないです。身体の関係がないことだけが辛いんじゃないです」「断られると『私に魅力がなくなったのかな』って。どんどん自信がなくなっていって。それでも毎晩ベッドに入ってドキドキしながら待つんです」とセックスを断ること、求めないことがいかにパートナーの心を殺すのか、思いのたけを必死に絞り出す。

この言葉に、誠を拒んで求めなかった当事者の楓は激しく動揺するが、あくまでも自分自身は被害者という認識が強い。その場では実は加害者でもあったという可能性を頭から消し去りたいのか、「レスが辛いからって不倫して許されるわけじゃないでしょ? 不快だわ」と“正論”を吐き捨て、みちの前から姿を消した。

「私の心は死にました」妻の心の叫びが心をえぐる

次に結衣花と鞠子のやり取りでは、結衣花は謝罪の言葉を口にして、その不倫相手から連絡は来たものの一度も会っていないと話す。しかし、鞠子は「そんなのどうでもいい。接触したのが許せなかったんです」と一蹴。続けて、「この3年間、空を見て『綺麗だな』と思ったことはありますか? お腹が痛くなるくらい笑ったり、声を荒げるほど腹を立てたことは?」「私の心は3年前に死にました」と、不倫に心が殺されたことを語る。さらにはこの3年間鞠子もセックスレスで苦しんでいたことを告白。そして、「私を殺した女の顔、一目見れて良かったです」と言って店を後にした。

激高して怒鳴り散らして、コーヒーでもかけてくれれば「あそこまでする?ww」と多少は笑い話にでき、気がまぎれたかもしれない。しかし、“サレ妻”がどれほど心に深い傷を負ったのか、その苦しみが丁寧かつ鋭利に伝わり、結衣花は自分がしたことの重大さに打ちひしがれ、言葉を失うのみ。

また、この試合は陽一(永山瑛太)の勤務先のカフェで行われたため、セックスレスに悩むみちとは真剣に向き合わず、不倫してしまった実績を持つ陽一にもグサッと刺さった。

どこにでもいそうな夫婦だからこそ生々しい

シチュエーションは違えど、セックスレスがどれほど重要な問題なのか、嫌というほど突きつけられるシーンとなった。なぜここまで感情が揺さぶられるのかを考えた時、登場人物が全員“どこかにいそう”と思わせるからだ。

新名家は広々としたラグジュアリーな部屋で暮らしているが、吉野家はあまり広くない部屋で2人暮らしをしている。リビングのテーブルには柿ピーが入った大きな容器があり、友達夫婦にいそうな生活レベル

その地に足のついた空気感がみちや陽一以外にも派生し、生々しさが醸成されたからこそ、みちだけではなく、急に登場した鞠子の言葉もスーッと耳に入ったのではないか。ドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)のしんどい回を見ているようなヒリヒリ感を覚えたのは、ここまで日常に寄り添った描き方を徹底してきた制作陣の努力の賜物と言えるかもしれない。

拒まれて苦しんだ2人が、今度は拒否する側へ

楓も陽一もセックスレスがいかに残酷なのかに気付いた今回。ようやくそれぞれのパートナーと向き合うようになり、ラストで各夫婦はベッドインする。これでめでたしめでたしとなりそうだが、その欲求をみちも誠も拒否。どちらもまだパートナー以外への未練が残っており、拒否される側から拒否する側になってしまう。

ついにみちと誠がお互いに向き合うという待望の展開が始まる、そんな予感をしたくなる終わり方だった。しかし、なぜここまでみちと誠は互いに意識し合っているにもかかわらず、ここまで頑なにパートナーと向き合うことを選んだのか。「離婚すればいいのに」と思う瞬間は度々あったが、不思議とみちも誠も“離婚”という選択肢は頭にない様子。

その背景として、「夫婦だから多少の紆余曲折はあるだろう」「なんだかんだで永遠の愛を誓い合ったパートナーだから」といった価値観がストッパーになっていたように感じる。この常識があるからこそ、心が死んでしまいそうになってもパートナーに期待していたのだろう。

ただ、耐えに耐えてやっとパートナーが期待に応えた時には、すでに自分の心の中にパートナーがいなかったことを知る、という皮肉な自覚を得ることとなった。陽一も楓も別にセックスレスでも問題なさそうだったため、むしろ現状維持を続けたいのであればセックスするべきではなかったのかもしれない。そんな残酷な可能性を考えたくなるほど、感情の機微に目を向けたくなる話だった。

これまで毎話のようにすれ違いを繰り返してきた2人が、ついに結ばれるのか、求め合うのか。次回も期待しかない。

<文/望月悠木>

【望月悠木】

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

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