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広瀬すず×櫻井翔が語り合う、俳優としての歩みと映画『ネメシス』での再会「この空間にはもう信頼しかない」

  • 2023.3.31
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天才的なひらめきを持つ探偵助手のアンナと、ポンコツだが人望が厚い探偵の風真が様々な謎に挑む姿を描いた人気ドラマシリーズを映画化した『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』が、3月31日(金)より公開。ドラマシリーズ総監督に引き続き、『22年目の告白―私が殺人犯です―』(17)、『AI崩壊』(20)など数々のヒット作で知られる入江悠がメガホンをとり、「アンフェア」シリーズの原作者で、謎解きミステリーの名手・秦健日子が脚本に参加する本作。ドラマでお馴染みのメンバーに佐藤浩市ら新キャストも加わり、夢と現実が交錯しつつ物語が展開。道路を封鎖してのド派手なアクションや、ダイナミックな映像も見どころだ。

【写真を見る】仲間たちが次々と悲惨な死を遂げる悪夢を毎晩見るアンナ。それを演じる広瀬すずが撮影中に見た夢は?

ドラマ最終話から2年後を舞台に、探偵事務所「ネメシス」3人が新たな事件に立ち向かう [c]2023 映画「ネメシス」製作委員会
ドラマ最終話から2年後を舞台に、探偵事務所「ネメシス」3人が新たな事件に立ち向かう [c]2023 映画「ネメシス」製作委員会

描かれるのは、ドラマの最終話から2年後。突如、依頼がピタリと止まり、探偵事務所「ネメシス」が経営難に陥るなか、20歳になったアンナは仲間たちが次々に悲惨な死を遂げる悪夢を毎晩見るようになり、風真も怪しげな行動を取り始めるようになる。アンナと風真を演じた広瀬すずと櫻井翔に、本作の見どころや撮影秘話と共に、仕事への向き合い方を語ってもらった。

「一瞬のためにじっくり時間をかけて、一気にガッて撮る感じがすごく好き」(広瀬)

――完成した映画をご覧になられていかがでした?

広瀬「映像のパワーを感じました。いままで自分がやってきた作品とは全然違うテイストの映画で新鮮でしたし、もう一回観たいなって。『きっと一回観ただけでは全部はわかりきれていないだろうな』って、自分を疑うぐらい(笑)、いろんなものが詰まってました」

櫻井「映像ならではの表現がふんだんに入っていて、脚本からより立体的になったというか。例えば、アンナがベッドで寝ているシーンで画がグイーンって反転する場面だったり、終盤で背景が動いていくなかで行われるアクションシーンだったりは、テレビサイズで観るより映画館の大きなスクリーンで観たほうが、より浮遊感を味わえるんじゃないかなと思います」

――なかでもお2人が「映画ならでは」と感じたシーンを挙げるとするなら?

広瀬「“映画ならでは…”ということで言えば、やっぱりカーアクションです!」

櫻井「プロのカースタントの方が運転する車に乗って、何テイクも撮ったんだよね」

広瀬「助手席に乗ってた翔さんが、あまりの衝撃で途中からお芝居するのを一瞬忘れていらっしゃったのか、後ろを振り返りながら『うわぁ~、ヤバいヤバい!』って(笑)」

櫻井「あれはホントにヤバかった(笑)。リアルなジェットコースターみたいだったからね」

広瀬「あとは、江口(洋介)さん演じる栗田さんとアンナが廊下で2人きりで話すシーンの撮影も、すごく印象に残ってます。『これ本当に映ってる?』って思うほどカメラ位置が遠くて、何回かリハーサルをしてからワンカットの一連で撮ったんですが、『ここはこうだから、こういう動きのほうがいいんじゃないか』と、全員がそれぞれ意見を出し合いながら作っていった感覚がありました。そういう時間は、映画ならではだなと。一瞬のためにじっくり時間をかけて、一気にガッて撮る感じがすごく好きでした」

櫻井「わかる!僕もあのシーンは観ていてめちゃめちゃ興奮しました。台本を読んで『このシーンを撮影するのにどれぐらいかかるのかな』『結構、カットを割るんだろうな』と思っていたら、『ワンカットで撮った』と聞いて、『うわ、映画じゃん!』って痺れたんです」

「ドラマの世界観を壊さない範囲で考えながらお芝居をするのが、おもしろくもあり、難しくもあり」(櫻井)

――オリジナル脚本ならではの難しさというのもあったりしますか?

広瀬「小説でも漫画でも原作があるとイメージしやすい部分もありますが、私は結構気にするタイプなので、今回みたいにセリフが多い作品を、初見の台本だけを頼りに作っていく時に、『台本の読み取り方を間違えてないかな』とすごく心配になります。私から見たアンナと、私から見た『きっと翔さんはこういうふうに演じられるだろうな』っていう風真さんとで、その作品の世界観が出来上がってしまうから、私が間違えていたらどうしようって思っていました。たまに『あれ?私が思ってたのと意味が全然違ってた!』と、現場で驚くことがあるので。監督から『ここはこうしてほしいんです』と説明されて初めて、自分が勘違いしてたことに気付くというか。ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』の現場でも、原作のないオリジナル脚本であるうえに、方言がたくさん出てくるので、『そっちの意味だったんですか!』みたいなこともあったりして」

櫻井「なるほどね」

アンナが武術カラリパヤットを駆使するアクションシーンも必見 [c]2023 映画「ネメシス」製作委員会
アンナが武術カラリパヤットを駆使するアクションシーンも必見 [c]2023 映画「ネメシス」製作委員会

広瀬「解釈によってセリフの重さも全然変わったりするものだから、一から自分ですべて作り上げてくことは大変だなって思います。『ネメシス』の場合は、ドラマと映画で脚本家も全然違う方だったから、プレッシャーもすごくありましたけど、『普段なかなかやらないチャレンジングなことをやっているな』と思うと楽しみでした」

櫻井「僕の場合は、原作のあるなしというよりかは、『ドラマの延長線上にある映画』というところが大きかったかな。僕としてはドラマの映画化は恐らく北川景子ちゃんと共演した『謎解きはディナーのあとで』という作品以来だったんですが、原作のイメージを持っている方がいるのと同様に、ドラマにはドラマのファンがいて。映画が『あれから〇年後……』という設定なら、観ている人それぞれのなかに、『〇年後はこうなっているのかな』とか『こうなっていてほしいな』というようなイメージもあるでしょうから、そこの世界観を壊さない範囲で考えながらお芝居をするのが、おもしろくもあり、難しくもあり…というところですかね」

――今回は「あれから2年後」という設定でしたが、お互いどんなことを意識されました?

櫻井「アンナは、ドラマの時とはだいぶ変わってるもんね。成長して大人になってるから」

広瀬「そうなんです。今回はアンナが1人で悩んでみんなと別行動するシーンも多かったし、10代後半の18歳から20歳までの2年間ってめちゃくちゃ変わる時期だから、むしろ全然違う人になっていてもいいのかなと思いながら私は演じていました。けど、翔さんの場合はドラマ版から地続きの風真さんを演じながら、夢の中のシーンでは“双子のもう一人”と思うくらい、まったく違う雰囲気の風真さんも演じる必要があったはずなので、バランスのとり方が難しかったと思います。夢に別人格の風真さんが出てきたせいで、アンナのお芝居も変わるから、夢と現実の風真さんを翔さんがどんな風に演じ分けるのかすごく楽しみでした」

櫻井「別人格の風真を演じることについては、もちろん自分のなかでも意識はしたと思いますけど、あのシーンだけ倉庫みたいな場所で撮影したからガラッと違ったし、環境だったり照明だったりで、雰囲気を作ってもらったところが大きかったと思いますね。映画の冒頭に、江口さんと僕が2人で踊っている場面があるんですけど、むしろああいったシーンこそ、栗田と風真としても、実際の江口さんと櫻井としても、ドラマから地続きの関係値があるからこそのおもしろさみたいなものが出てるんじゃないかなと思っているんです」

仲良しの栗田と風真の関係がガラリ一変!その裏には一体なにがある? [c]2023 映画「ネメシス」製作委員会
仲良しの栗田と風真の関係がガラリ一変!その裏には一体なにがある? [c]2023 映画「ネメシス」製作委員会

「夢に共演者が出てくることがかなりあります。夢の中で映画のシーンを先に撮影しちゃってる…」(広瀬)

【写真を見る】仲間たちが次々と悲惨な死を遂げる悪夢を毎晩見るアンナ。それを演じる広瀬すずが撮影中に見た夢は? [c]2023 映画「ネメシス」製作委員会
【写真を見る】仲間たちが次々と悲惨な死を遂げる悪夢を毎晩見るアンナ。それを演じる広瀬すずが撮影中に見た夢は? [c]2023 映画「ネメシス」製作委員会

――本作は「夢」がキーワードですが、撮影期間中、夢に共演者が出てくることもありますか?

広瀬「私はかなりあります。撮影の前日にセリフを覚えながらそのまま寝たりすると、夢の中でそのシーンを先に撮影しちゃってる…みたいなことが結構あります(笑)」

――夢の中では、相手のお芝居も広瀬さんがイメージしてるってことですよね?

広瀬「そうです、そうです。でも、起きていざ現場に行くと、私が夢で見ていたのとは全然違います!そういう時に『自分は監督業には向いてないな』って痛感します(笑)」

櫻井「へー!おもしろいね、その話(笑)。僕の場合は、セリフを覚えていないのに現場に行く夢とか、踊りも歌も覚えていないのに急にコンサートで舞台の上に呼ばれるとか、一つも勉強していないのにいきなり試験を受けるとか。そういう夢は、結構よく見るんだけど…」

――朝起きて、「あぁ、夢でよかった~!」って安心するってことですね。

櫻井「『夢でよかった~!』ってめちゃくちゃ思います」

広瀬「翔さん、夢の中ではかなりギリギリで生きてますね(笑)」

櫻井「すずちゃんもセリフを覚えてない夢とか見ない?いろんな人に共感されるんだけど」

広瀬「私“ヒヤヒヤする”みたいな夢はほとんど見ないです。子どものころ、夢の中で爆弾が転がってきてヒヤヒヤしたことはありますけど」

櫻井「僕が子どものころによく見ていた怖い夢は、円形の流れるプールでずっと流されてる夢!」

広瀬「アハハハ(笑)!」

櫻井「超怖いよ!陸に上がれないんだから。ずっと流されてるんだよ!あれは怖いよ~」

広瀬「アハハ(笑)。それめっちゃおもしろいです!もがいても、もがいてもダメなヤツですね」

撮影現場で笑顔を見せる広瀬すず、櫻井翔、江口洋介 [c]2023 映画「ネメシス」製作委員会
撮影現場で笑顔を見せる広瀬すず、櫻井翔、江口洋介 [c]2023 映画「ネメシス」製作委員会

「仕事に対する感覚は、180度変わった気がする」(広瀬)

真摯に役と向き合ている広瀬すず [c]2023 映画「ネメシス」製作委員会
真摯に役と向き合ている広瀬すず [c]2023 映画「ネメシス」製作委員会

――広瀬さんは、女優デビューから今年で10年経ちますが、心境の変化はありましたか?

広瀬「ありました。最初のころは『辞めたいな』と思っていた時期もありましたけど、『いま辞めたら中途半端だな』『辞められなくなってきたな』みたいな、緩やかな変化があった気がします。ある意味すごく人間っぽいとも言えるんですが… (笑)」

櫻井「なるほど。グラデーションがあるんだ」

広瀬「多分、周りからどれだけ『お芝居に向いてるよ』と言われても、自分が本当に好きじゃなかったら続かないと思いますね。だからこそ、好きなことはちゃんと貫きたいし、そこだけは自分に嘘をつくのをやめようと思っているんです。でも結局は、『こんなこと言われた!』とか『あれができなかった!』みたいに悔しくなったり、舞台や映画を観て『あの作品いいな』と感じたりもします。仕事関係のことで自分の心が一番動いているのがわかるので。仕事に対する感覚は、180度変わった気がしますね」

櫻井「すずちゃんは鍛錬するのが好きだよね。“刀を磨ぐ”のが苦にならないというか、どちらかと言うとそういう作業が好きだから、その結果として出てくる表現がすてきなものになっているんじゃないかなと。『ネメシス』の撮影後にすずちゃんが出演していた『Q:A Night At The Kabuki』という舞台を観に行ったんですけど、それも本当にすばらしかったので。すずちゃんの作品に懸ける情熱が漏れ伝わってくるというか。その表現に至るまでに費やした時間なのか、傾けた想いなのか。それがいったいどういうものなのかまでは僕にはよくわからないけど、そういったプロセスが観ている側にもちゃんと伝わってくるようなところがあったんですよね」

「お芝居していて『楽しい!』と感じるようになったのは、自分のなかの変化としては大きい」(櫻井)

櫻井翔が俳優業に対する想いを明かす [c]2023 映画「ネメシス」製作委員会
櫻井翔が俳優業に対する想いを明かす [c]2023 映画「ネメシス」製作委員会

――櫻井さんご自身は、俳優業に対する想いや向き合い方に変化はありますか?

櫻井「いや…わからないですね。僕は何年かに一回しか映像作品に出てないし、ましてや映画は『ラプラスの魔女』以来で、『この数年、広瀬すずとしか映画に出てない』と言ってもいいくらいのペースだから(笑)」

広瀬「アハハ(笑)。本当ですね。そういえば私、『ラプラスの魔女』でも“作られた人間”の役をやってるんですよ。だからいつも『翔さんは人間の役でいいな』と思ってて(笑)」

櫻井「それ、(妖怪人間)ベム、ベラ、ベロの言い方だから(笑)。でも、言われてみたら本当にそうだね」

広瀬「なぜだかわからないけど、どちらもお父さんしかいない役です」

櫻井「その設定、“広瀬すずあるある”だね(笑)」

広瀬「だから『私が“作られた人間”の役をやる時は、翔さんとなんだろうなぁ』って思うくらい(笑)。この空間にはもう信頼しかないです。一緒にお芝居するのが楽しいです」

櫻井「楽しいよね。それこそ僕も20年くらい前は、さっきのすずちゃんの話じゃないけど、『悔しいな』とか『納得できなかったな』と感じることのほうが多かったし、もちろんいまでもそう思うことはあるけど、お芝居していて『楽しい!』と感じるようになったのは、自分のなかの変化としては大きいんじゃないかと思いますね。すずちゃんみたいに、お芝居でご一緒する機会が多くて、お互いのこともよく知ってて、距離が近ければ近いほど、『ヨーイ!』で、カチンコが鳴った後にどう出てくるのか。そこからの“つばぜり合い”じゃないけど、お互いが“真剣を抜く”瞬間にめちゃくちゃ緊張感があって、すごく楽しみなんです」

取材・文/渡邊玲子

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