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森山未來が出身地・神戸とディープに対話、思い描く「理想」は?

  • 2023.3.21
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神戸という地をアートに見立て、再び「魅力」を発見する。そんなプロジェクト『KOBE Re:Public Art Project』が2022年9月より神戸で発足されており、神戸出身の俳優・アーティストの森山未來がメインキュレーターをつとめている。

『KOBE Re : Public Art Project』のメインキュレーターをつとめる森山未來(左)と参加アーティストのひとり・内海昭子さん(右)

ここ数年、さまざまなプロジェクトで神戸を訪れ、リサーチを重ねている森山。彼がこの半年間で見たものとは? 同プロジェクトに参加するアーティストのひとり、内海昭子(うつみあきこ)さんとともにお話を伺うと、「単なる観光地では終わらせない神戸」へのビジョンが浮かんできた。

■ 「各地に芸術祭があるのに、神戸だけ蓄積されていない」(内海)

同プロジェクトは、メインキュレーターをつとめる森山未來を中心に、国内からアーティストを集い、実際に神戸に滞在しながらリサーチし、それぞれのアーティストが発見した「モノ・コト・バショ」を元にアート作品制作、あるいは演劇、ダンス、音楽ライブといったパフォーマンス作品を招聘し、上演してもらうというもの。

参加アーティストの作品を見つめる森山未來

──2022年9月から本格始動したプロジェクト。「『パブリック・アート』はつくらずとも、『パブリック』に『アート』はすでにある」と、街をあげてのプロジェクトとしては珍しいものだと思います。

森山「そうですね。このプロジェクトに関しては、『やったからOK』ではないというか。ここからどう人々に認知してもらって巻き込んでいくかが大事。今回は例えば空き屋や廃墟などといった、かつてあり、そして今は忘れ去られている、そういったものがフォーカスされているのですが、そこにはかつて人々の動線があり、風が流れていたわけです」

「そういう場所にアーティストの視点が入ると、これまでの観光のあり方とはまた違う『文化観光』の視点が生まれていく。一過性で終わらず、中長期的に続けていくことで、『どのような景色が広がっていくのか』というところをこれからも共有していけたらいいなと思っています」

──内海さんはこのプロジェクトのどこに魅力を感じましたか?

内海「そうですね、かなりユニークな企画だと思っています。各地に芸術祭があるのに、神戸だけ蓄積されていないということも気になっていたので、そこを新しい形で今後も続けていけるのであればすごく価値があると思います。年間を通してイベントが開催されたりアーカイブを見る機会があったりと、『通年の芸術祭』みたいな形になると、いいかなと」

内海昭子さんの作品は神戸の地層がテーマとなっており、かつてポートアイランド造形のためにおこなわれていた、山→海へと土を運ぶプロジェクトがインスピレーションとなっているそう

──なるほど、あくまでもスタート地点にすぎない。

内海「あと森山さんが神戸の人というのが、すごく大きくて。だいたいの芸術祭はキュレーターをどこかから呼んできて、イチからリサーチして・・・と考えていくのですが、森山さんはめちゃくちゃ神戸のことを知ってはったから(笑)。そのリソースが使えたし、人的な魅力がプロジェクトに入っているというのは、初年度としてはすごくアツいものになったのでは?」

森山「まあ、初年度にありがちな、ちょっと盛りすぎたっていう話もありますけど(笑)」

内海「でもアートだけだと正直厳しいというところもあると思うので、『喫茶演劇』だとかダンスや大道芸など、そういうものが一緒になっていることで豊かな企画になったのではないかと思いますね」

■ 「神戸に対する解像度、すごい上がってないか?」(森山)

2021年の中頃から、神戸での活動に精を入れる森山。「あくまで長期的に」と、神戸のポテンシャルを感じながら積極的に動いているが、現段階での手応えはいかがなものか。

『KOBE Re : Public Art Project』の未来について、そして神戸のあるべき姿について話す森山未來

──森山さんにお訊きしたいのですが。このプロジェクトには登場キャラクターが多いのが魅力のひとつで、「廃屋ジャンキー」と呼ばれている西村組の西村周治さんだったり、茅葺屋根の職人・相良育弥さん、純喫茶「喫茶ポエム」のオーナー・山崎俊一さんなど、さまざまなジャンルで活動されている神戸の方々も多かったと思います。

森山「ここ数年の神戸でのリサーチのなかでさまざまな出会いがあり、このプロジェクトに結集してもらっています。僕にとっては神戸のアベンジャーズです(笑)。僕の立場としては、地元の人たちとアーティストをつないでいき、そのプロセスのなかでどういうことが起こっているのかを知る必要があった」

「さらにアーティストというのは、強度のある素晴らしい作品を創作するためにそれぞれに独自の視点を持っていて、その視点を元に神戸をどんどん深掘りしていく。そんなみなさんのリサーチをフォローアップしていった結果、『自分の神戸に対する解像度、すごい上がってないか?』 って(笑)」

一同「(笑)」

森山「みんなの知識や情報が自分に集まってくるから、解像度が上がり過ぎてもはやこれはアウトプットできないのではないかとすら思いますね」

このインタビュー場所もプロジェクト内で使われた場所のひとつで、メリケンパーク(神戸市中央区)近郊の倉庫

──神戸でのダンス作品制作や映画撮影、2022年4月にはアーティスト・イン・レジデンス・神戸「AiRK」の設立と、この1年は神戸で新たな風を吹かせるべく、さまざまな活動をおこなってきました。なにか肌で感じる手応えみたいなものはありましたか?

森山「まだまだこれからですね。パフォーマンスに関しては本番というゴール地点がありますが、アーティスト・イン・レジデンスに関しては立ち上げた時点ではゴールにならない。10年以上続けていけるかが肝で、このプロジェクトもそう。まだ『何かが変わった』って思っちゃいけないとは思います。ただ、そもそもない使命感みたいなものが自分のなかに立ち上がってくるとしんどいので、あくまで自分のなかで感じられる神戸の風を楽しんでいければいいなと思いますね」

内海「このプロジェクトは今後もずっと続いていって、いろんなアーティストが入ってきて、それこそ解像度を上げていく作業が仕上がっていくのを、神戸市民として楽しんでいきたい。絶対おもしろい街になる」

──こうしたさまざまな人が関わり合うからこそ、生まれるなにか。楽しみにしています。

森山「普段では持つことのないような視点を提案していく。これはこのプロジェクトだけに限らず、ダンスや演劇、アート、それぞれが同じ役割として持っているものでもあります。その視点は地元の人や外の人に対して開かれていき、鑑賞者、あるいは観光者にも伝播して、そうやって神戸という街への視点が、複合的になっていくとおもしろいなと思います。そのときに初めて『ただポートタワーを見に来るだけの神戸じゃない』ということが立ち上がってくるんじゃないかな、と思います」

『KOBE Re:Public Art Project』初年度の会期は3月19日をもって終了したが、今後もさらに神戸が「おもしろい街」へと進化を遂げるべく、長い目で見守っていきたい。参加アーティストの詳細など、詳細は公式サイトにて。

取材・文/Lmaga.jp編集部 写真/バンリ

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