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人と人、人と道具の出会いの"基点"に。河口湖の名店「STANDARD point」の哲学とは?

  • 2023.3.16
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河口湖キャンプの交差点「STANDARD point」

富士山の絶景を拝めることから、多くの人気キャンプ場がある河口湖エリア。そんなキャンプの聖地の入口、河口湖ICからクルマで10分ほどに、今回訪れた「スタンダードポイント」があります。ショッピングモール「フォレストモール富士河口湖」の一角にあるお店は、これからキャンプへ向かう人、キャンプを楽しんで帰路につく人、それぞれの交差点になっています。

今や人気アウトドアショップとして全国にファンをもつお店ですが、その設立にはオーナーの長田孝洋さんが経験したキャンプでの運命的な出会いがありました。人生を変えたキャンプのことから、キャンプ場近くならではのエピソード、「キャンプブーム」と「裏原ブーム」の意外な関係など、ここでしか聞けない話を伺ってきました。

人生を変えた2つのキャンプ

ーー長田さんは、お店を開く前からキャンプをよくやっていたんですか?

長田孝洋さん(以下「長田」):もともとは、妻の友人に誘われて始めるようになりました。それまでアウトドアは好きではなかったんです。虫が出るし(笑)。でも、外でお酒を飲むと本当に気持ちいいし、いろんな道具を試すのも男心をくすぐられました。地元もこのあたりなんですが、よくキャンプイベントが開催されていることもあって、自然とキャンプは身近なものになっていきましたね。

ーー当時から、キャンプにつながるようなお仕事をされていたんですか?

長田:実は、まったく関係ないんです。前職は臨床工学技士という医療関係の仕事でした。人工透析、人工呼吸器、人工心肺等の医療機器を操作、メンテナンスする国家資格が必要な仕事だったんです。

ーー医療関係のお仕事だったんですね!趣味でキャンプをしていたとはいえ、そこからアウトドアショップを開くというのは大きな決断ですね!

長田:そうですね、よく言われます(笑)。実は、店を開くきっかけになった思い出深いキャンプが2つあるんです

ーーぜひそのお話聞かせてください!

長田:1つ目は、キャンプへの考え方が変わった体験です。2016年に行った「ふもとっぱらキャンプ場」でのキャンプでした。そのとき僕は1人で、隣のサイトにバイクの男性が「ここいいですか?」って来たんです。お互い1人だったので、「晩ご飯一緒にどうですか」って感じでいろいろと話しているうちに意気投合。詳しく聞くと、その人はキャンプ関連のアプリをつくっていて、とてもキャンプに詳しかった。そのキャンプ観を間近で聞いて、自分の考えも変わったんです。

ーー偶然の出会いですね!その人はどんなキャンプ観をもっていたんですか?

長田:キャンプを「手段」として考えていました。当時の僕にとって、キャンプは「目的」。やることといえば、せいぜいお酒を飲むことくらいでした。でも、その人は「旅をするためにキャンプをする」「人に会いに行くためにキャンプをする」という感じで、はっきりした目的があり、その手段としてキャンプをしていた。もっている知識もリアルで実用的だし、「生活の延長線上にキャンプがある」という印象でした。

ーーキャンプを「手段」とするか「目的」とするか…考え方がガラッと変わりそうですね。

長田:はい、大きく価値観を揺さぶられました。キャンプを手段として考えるようになり、より”自分ごと”になったんです。だから、自分でもキャンプに関わる仕事をやろうという気持ちも強くなってきました。

お店のロゴが入った「スタンダードポイント オリジナルシェラカップ」サイズ:172×122×45(h)mm/重さ:95g/価格:1,650円(税込)

ーー2つ目の思い出深いキャンプはどのようなものですか?

長田:2つ目は、キャンプの楽しさと道具の魅力を存分に味わった体験です。2017年の3月に、ふもとっぱらで出会った人のアプリを通じて知り合ったメンバー12人でキャンプに行きました。特に何をしたという訳ではないんですが、キャンプってこんなにもおもしろいんだと気づかされたんです。

ーーけっこうな大人数で行かれたんですね!

長田:実は、ほとんどが初対面の人でした。それでもキャンプを楽しく過ごせたのは"道具"があったからです。みなさんが持っているギアは、どれも初めて見るものばかり。

「これは何ですか?」「どうやって使うんですか?」「他のものと比べて使いやすいですか?」

こんな話をずっとしていました。いろいろなギアがあることで話がはずみ、一気に距離が縮まったことを覚えています。今では僕がお客さんにギアの説明をする立場になりましたが、この体験がキャンプ道具の奥深さと、人と人とをつなぐ魅力にあふれていると感じた原体験ですね。

店内には定番から、めずらしいものまでこだわりのギアがずらりと並びます

ーー道具には、単に使うだけでない魅力があるんですね!

長田:道具のおかげで、そのキャンプは大盛り上がり。3月とはいえ夜中には気温が氷点下にまでなったんです。それでも、みんな寒さを忘れ、焚き火を囲んでずっと外で話し込んでいました。今では考えられません(笑)。

12人も集まれば、中には「それっきり」になってしまう人も少なくないと思いますが、いまだに全員と深い交流があります。ことあるごとにお店に遊びに来てくれたり、仕事の相談に乗ってくれたり…かけがえのない仲間です。

ーー今でも全員とつながりがあるのはすごいことですね。

長田:この2つのキャンプは、まさに人生が変わったといえる「ターニングポイント」です。そこで出会った人たちには、お店のオープンにも深く関わってもらいました。お店のロゴを考えてもらったり、オンラインショップをつくるのも手伝ってもらったりと、その出会いがなければスタンダードポイントはできなかったし、そもそもお店を開こうとすら考えていなかったかもしれません

「20万円のテントが売れる」キャンプ場近くならではの理由

お店に堂々と鎮座する「ノルテント ギャム6 エクストリーム」使用サイズ:370×370×185(h)cm/使用人数:6人/重さ9.6kg/価格:281,600円(税込)

ーーキャンプでの運命的な出会いからスタンダードポイントは生まれたんですね。河口湖でお店を開いたのはなぜですか?

長田:もともと地元が近くて、よくこのあたりでキャンプをしていたんです。このフォレストモールで待ち合わせすることも多かったんですよ。食材の買い出しなどにはとても便利なのですが、キャンプ用品を扱っているお店はなくて、「ここにアウトドアショップがあったら便利だろうなあ」って、いちユーザーの立場で思っていたんです。

開店当時からずっと取り扱っている「ダイス ピクニックチェア」サイズ:23×24×43(h)cm/重さ:720g /価格:4,290円(税込)

ーー実際にお客さんとしてフォレストモールを利用していたんですね!

長田:そうなんです。自分が待ち合わせにも使っていたように、多くの人にとってもキャンプをする際の「基点」になればと思い、店名を「STANDARD point」と名付けました。

スタンダードポイントが入る「フォレストモール富士河口湖」には「マックスバリュ」や「ダイソー」などもあるため、キャンプ前の買い出しにはうってつけ

ーーたしかに、駐車場にはこれからキャンプに行くであろうクルマが多く停まっていましたね。キャンプ場が近いからこそ売れるようなものはありますか?

長田:うーん、「忘れもの」需要はけっこうありますね。チェアやシュラフを自宅に忘れちゃったから、うちの店で買って、そのままキャンプに行かれるなんていうケースが多々あるんです。過去には、テントを忘れたお客さんが、20万円のものを買って行かれたことがあります(笑)!

ーーに、20万円のテントをその場で!?それはすごい…(笑)。キャンプ場に近いからこそのエピソードですね。

「ペトロマックス エナメルパン」サイズ:28.4×13.5×7.6(h)cm/容量:5L/重さ:370g/価格:5,940円(税込)

長田:まあ、これは極端な事例ですね(笑)。忘れものだけではなく、こんなものがあればよりキャンプが楽しくなる、便利になるというものもおすすめしています。

例えば、このペトロマックスのエナメルパン。ホットミルクなどを作るときに使うものなんですが、日本だとあまりなじみがないですよね。ここに牛乳を注ぎ、紅茶のティーバッグをそのまま入れて煮込むと、とっても濃厚なミルクティーが簡単に作れちゃうんです。うちでこのソースパンを買っていただき、となりのマックスバリュさんで牛乳と紅茶を買えばカンペキです(笑)!

レアアイテムは「LINEグループ」で情報収集

豊富なアウトドアスパイスのラインナップ。「そういえば持ってくるの忘れた!」というちょっとしたアイテムも、スタンダードポイントに立ち寄れば見つかるはず!

ーーお店で扱うギアは、どのように探してくるんですか?

長田:メーカーさんなどとやりとりするのはもちろんですが、他のショップのオーナーさんたちから情報を仕入れることも多いです。

ーー横のつながりもあるんですね!

長田:例えば、京都の「風街道具店」の米良慎平さんとは、お互いお店を開いた時期も近いことからずっと仲良くさせてもらっています。米良さんや他のショップオーナーさんとのLINEグループをつくって、そこでギア情報のやりとりもしているんですよ

ーー人気ショップオーナーたちの情報網、気になります!

「オールアラウンドファンV2」サイズ:360×360×180(h)mm/重さ:4kg/価格:49,500円(税込)

長田:最近、そのライングループで話題になったのが、このストーブファン「オールアラウンドファン V2」です。韓国メーカーのもので、いちばんの特徴は上から下へ空気の流れをつくること。一般的なファンであれば、空気を上へ流します。温かい空気は上に行く性質がありますから、一般的なファンだとテントの上のほうばかり温かくなって、足元は冷たいままです。オールアラウンドファン V2は温かい空気を下に送ることで、テント全体に空気を循環させ、足元まで温かくしてくれるんです!

ーー逆転の発想ですね!このようなめずらしいギアが並ぶのも、横のつながりがあるからなんですね。

「キャンプブーム」と「裏原ブーム」の意外な共通点

ーー他ショップのオーナーさんとは、他にどんなことを話すんですか?

長田:「キャンプブーム」について話すこともありますね。最近面白かったのは、今の「キャンプブーム」って「裏原ブーム」と似ているんじゃないかという話題です。

ーー「裏原ブーム」とですか?どんなところに共通点があるのか気になります。

長田:僕自身も"裏原世代"ど真ん中でして、20代のころは裏原のショップのTシャツを買うために、店前に徹夜で並んだこともありました。今のキャンプブームはガレージブランドが引っ張っている部分も大きいかと思います。ガレージブランドのギアもレアものが多く、新作を買うためのお店に行列ができることもありますよね。そういったガレージブランド好きは、40代くらいの人が多く、ちょうど裏原世代と被るんですよ

カウンターでは看板犬のピケちゃんがお出迎え

ーーなるほど、ものを買うことにお金や時間をいとわない世代が「裏原ブーム」を牽引し、今では「キャンプブーム」の担い手にもなっているのですね。

長田:一方で、今の若い世代は、服でいえばファストファッションを好むなど「コスパ」を重視する傾向がありますよね。キャンプ”ブーム”を”文化”にまで定着させるには、若い世代へアプローチすることが必要不可欠です。お金も時間も惜しまない「裏原世代」とコスパ重視の「令和世代」をどう結びつけるかが、これからのキャンプシーンに課せられた課題だと思っています。

ーーとても重要な課題ですね…長田さんとしては、どのような解決策があると思いますか?

長田:正直まだわかりません(笑)。でも、足がかりになる活動は広がっているかなと思っています。例えば、横浜に「TARPtoTARP」というキャンプをコンセプトにしたカフェがあります。そこではさまざまなイベントをしており、キャンパーどうしがつながる「場」となっています。

ーー世代を超えたつながりができれば、カルチャーが醸成される場になりそうですね。

長田:そういう狙いをもって、どんどん新しいことをしていきたいですね。僕のお店でも定期的にイベントを開催しています。「ものを売る」だけではない、「つながりをつくる」という価値も提供して、世代を超えたコミュニケーションの場にしていきたいと考えています。そういう意味でも「基点」になりたいですね。

あとは、オリジナルのブランドも作りたいし、もっとお客さんとコミュニケーションをとる接客スタイルを磨きたいし…やりたいことばかりで時間が足りません(笑)。でも、大好きなキャンプに少しでも貢献できる時間は何ものにも代え難いですね。

編集部のお買い上げアイテム

「SOTO プレミアディーラーシップ限定モデル レギュレーターストーブ ST-PD310IG」使用サイズ:166×142×110(h)mm/重さ:330g/価格:8,800円(税込)

キャンプでの運命的な出会いで生まれた「スタンダードポイント」。キャンプで人生を変えた長田さんだからこその、今のキャンプシーンをさらによくしていきたいという強い思いを聞くことができました。

そんなスタンダードポイントで運命的な出会いを果たしたのが「SOTO プレミアディーラーシップ限定モデル レギュレーターストーブ ST-PD310IG」。取材当日が発売日の限定モデル!これはまさに運命と言わざるをえません。通常のST-310とは異なり、五徳部分がブラックに塗装されています。また、遮熱板と滑り止めのシリコンチューブがアイスグレーでよりクールな印象に。早く火をつけたくてウズウズします。

富士山を一望できる河口湖エリアは、最高のキャンプ体験ができること間違いなし。河口湖キャンプの前は、スタンダードポイントに立ち寄って忘れものをチェック。おすすめのギアもぜひ長田さんに聞いてみましょう。きっと運命的な出会いが待っているはずです。

【基本情報】
住所:山梨県南都留郡富士河口湖町小立8017-1 フォレストモール富士河口湖
電話番号:0555-68-9072
営業時間:平日10:00〜19:00/土日祝7:00〜18:00
定休日:無休(臨時休業あり)

詳細はこちら:STANDARD point
Instagramはこちら: @standard_point

撮影:赤田英志

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