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長男しか愛せない!? 子どもを「えこひいき」するママの心理&解決策

  • 2015.11.26
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【ママからのご相談】

21歳で結婚し、3人の子宝に恵まれました。現在8歳(女の子)、6歳(女の子)、3歳(男の子)の母親です。もともと子ども好きで子だくさんが夢だったので、毎日の育児はとても充実しています。だた、ついついやんちゃ盛りの末っ子に目が行ってしまい、上の2人から「ママはK(長男)ばかりかわいがってる」 と不満を言われることが多くなってきました。

娘たちには、「ママは3人ともかわいいんだよ」と伝えていますが、内心は待望の男子である長男が一番かわいい! と思えてしまうこともあります。私のえこひいきが原因なのか、最近では長女が口をきいてくれなかったり、次女と2人で結託して私と距離を置こうとしたり、ギクシャクすることも増えてきました。

3人ともわが子なのに、なんだか自分がひどい母親のように思えて落ち込んでしまいます。また、私の母も義母も、困ったことに長男を一番かわいがるところがあり、2人とも相談相手にはなりません。このままでは、子育てに何か悪い影響が出てしまうでしょうか?

●A. 落ち込まないで! 親子関係の正常化には“感情”<“理性”です。

ご相談ありがとうございます。ライターの月極姫です。

お子さんのためにご自分の育児を謙虚に見つめなおそうとされている、若くても頼もしいママさんという印象を受けます! まずは、ご自分がひどい母親なのでは? と落ち込むのはやめて、一旦冷静になってみましょう。親子であっても、お互いの個性は違うもの。相性や生理的な感覚は、無理矢理変えようとして変えられるものではありません。

イギリスの育児ウェブサイト『Netmums』が行った調査によると、2人以上の子どもを持つ母親のうち6分の1が「特定の子をえこひいきしてしまう」と回答しており、「すべての子に平等に接している」と回答した母親は3分の1に留まったのです。

また、「心の中ではえこひいきしているが平等に対応できている」「平等に対応できているか自分でもわからない」といったグレーな回答も多く、ご自分のえこひいきをきちんと自覚しているママは、むしろ自分を客観視できている優等生であるといえます。

しかし、「相性が合わないから」「興味がわかないから」といって、特定の子へのえこひいきを肯定し、他の子に冷たく接し続けてよいものでしょうか? いいえ、感情のままにお子さんを差別し続けることは、お子さんの将来に暗い影を落としかねません。まずは、えこひいきをしてしまう理由を把握し、お子さんがなるべく不満や不安を抱かない接し方ができるよう考えていきましょう。

●子どもを“えこひいき”してしまうママのパターン4つ

人はなぜ、お腹を痛めて産んだ子どもたちに平等に接することができないのでしょうか? 諸説ありますが、えこひいきのタイプ別に4つのパターンに分類してみました。

●(1)自分と似た子を好む(または嫌う)=本能や自分の過去の経験を反映させる“押し付け型”

えこひいきの心理について、生物学者、人類学者、心理学者などがじつにさまざまな実験を行っています。人は外見や性質が自分に似ている対象を好んでしまうことが多いのですが、これは進化の過程で、仲間と群れるために身に付けた傾向であり簡単にコントロールできるものではありません。

また、逆に幼少時に親に冷たくされたり、自分を否定するようなことを言われた経験がある人は、そのトラウマから自分似の子どもを否定したくなったり、嫌悪感を覚えることもあります。「なぜか無性にかわいい」「なぜかかわいいと思えない」という深刻な差別の背景には、こうした心理が働いているのかもしれません。

本能もトラウマもコントロールが難しいとはいえ、差別される子どもにしてみればまったくのとばっちりです。

●(2)甘えん坊・問題児系を好む=じつは自分の存在価値を維持したい“共依存型”

危うくて放っておけない、世話を焼きたくなってしまう、やんちゃで問題行動を起こしやすいお子さんを好んでしまうパターンです。特徴は、えこひいきの対象となるやんちゃな子どもを極端に甘やかしてしまう点です。

このケースではたいてい、差別されている方の子どもはしっかり者で手の掛からないタイプです。よくできた子どもでも、親に甘えたい気持ちに変わりはないのですが、共依存型の親は「私がいなくては、この子はダメ」という設定が大好きなので、よくできた努力家の子どもを放ったらかします。

もともと自分の存在価値に自信がなく、育児が“子どものため”ではなく“自分の居場所作りのため”になってしまっている厄介なパターンです。このパターンに当てはまる人は、俗にいう“だめんず”を好きになって旦那さんとも共依存関係に陥りやすいので、注意が必要ですね。

●(3)家や夫に振り回される=母親としての自信がなく育児のポリシーを持たない“被支配者型”

4つの中ではもっとも古風で、最近は少ないタイプかもしれません。子どもにとっての祖父母や家長が圧倒的な権力を持つ家庭に多くみられます。個人より家を重んじる空気の中で、自由な育児ができずに特定の子を尊重してしまう。ママが義父母やパパのいいなりという窮屈なパターンで、家業を営んでいるお家にありがちかもしれませんね。

たとえば歌舞伎役者の家系に女子が誕生した場合、古くからの伝統で女性は歌舞伎役者になることはできません。しかし、それはまったく違う道を選ぶ自由が与えられているということでもあり、男の子と女の子、どちらが幸せかは本人たちにしかわからないと思います。

梨園の女性が女優や歌手として才能を発揮したりしているのを見ると、女性というだけで不利な環境の中、しっかりと愛情を注いで育てることの大切さを感じます。どんな環境でも両親の育児のあり方を自信を持って実行することで、家からのしかかるプレッシャーは跳ね返せるものなのかもしれません。

●(4)スペックの高い子を好んでしまう=向上心は高いがエゴも強い“虚栄心型”

「子どもながらイケメンだから、美人だから」「成績優秀だから」「スポーツ万能だから」……数え上げればキリがありませんが、子ども自身を愛しているというより、子どもの才能・資質を愛するあまりえこひいきが発生してしまうパターンです。負けず嫌いな親、他人や世間からの評価に重きを置く親、自分がなし得なかった目標を子どもに託す親にありがちです。

ある子どもの才能をほめたたえるあまり、他の子どもへの対応が雑になったり、逆に極端なプレッシャーをかけて追い詰めてしまうのは子どもにとって酷なものです。

出発点は「子どもに、より良い人生を送ってほしい」という親心なのかもしれませんが、子どもたちを苦しめるほどの差別はもはやエゴでしかありません。差別された方の子どもは親の無関心にさらされることになり、眠れる才能が目を覚ましたときに何のサポートもしてもらえない、という非常にもったいない事態も引き起こしてしまいます。

●子どもの未来に影を落とす……深刻なえこひいきの弊害

4つのえこひいきパターンを見てきましたが、このような差別は子どもたちの人格にどのような影響を与えるのでしょうか?

2001年から、パデュー大学のジル・スーター教授が309家族、725人の子どもたちを対象に行った実験によると、

・親にえこひいきされた子どもはうつになりやすい

・えこひいきされなかった子は非行に走りやすい

という結果が出ました。

えこひいきされている子どもは、傍目からみるとおいしい立ち位置にいるようにも映りますが、結局は親の支配下から逃れられないまま幼少期~思春期を過ごします。また、自然に芽生えるはずの兄弟愛を、親の不平等な接し方によって否定されてしまいます。孤独感と不信感、親の手のひらから脱出できない閉塞感が、抑うつ状態の引き金となっても何ら不思議ではありません。

また、えこひいきされず差別を受けたこどもは、たまった鬱積を外で晴らそうとします。もともと家の中に居場所を作ってもらえなかったわけですから、これも当然な流れでしょう。血縁者への信頼感が薄いため、外の仲間と徒党を組んでさまざまな悪さをするようになりがちです。

しかし、非行少年、非行少女とよばれる子どもたちが、話してみるとじつに優しい面をもっており、仲間を思いやる心を持っていることに気づかされます。長年家の中で差別を受けてきた子どもたちは、十分過ぎるほど“痛み”を知っており、それを癒す術を見つけられないでいるのです。

親が不用意にえこひいきすることで兄弟間で嫉妬が生まれ、兄弟関係が悪化することもあります。長い人生、本来助け合うはずの兄弟がいがみ合いながら生きていかなくてはならないのは、親にとっても心配の種ですよね。

私たち親が、ずっと子どもたちの側についていてあげられるというのは幻想です。自分亡き後のことまで考えない子育てにはウソがあると、筆者は考えます。今は小さくても、いずれ子どもたちは親から離れ、親亡き後もオリジナルの人生を築いていかなくてはなりません。兄弟が助け合い、それぞれが主体的な人生を生きていってほしいと思うなら、幼少期にその基礎を作るところまでは親の仕事だと自覚しましょう。

●子どもは所有物にあらず。親は有能なスポンサー兼マネージャーになろう!

では、つい特定の子をえこひいきしてしまう自分をコントロールする術はあるのでしょうか?

私たちはともすれば、愛情というものをエモーショナルなものにとらえてしまいますが、本音や激情をそのままぶつけることばかりが愛情なのでしょうか?

少しでも医学を学んだことがある方はご存じかと思いますが、人間の脳は、本能や情動をつかさどる部分と、高度な理性的思考をつかさどる部分にわざわざ分かれています。そして、あらゆる生物の中で、高度な理性的な思考をつかさどる“大脳新皮質”と呼ばれる部分がもっとも発達しているのが私たち人類です。

人としての大仕事“育児”にあたって、いたずらに情に任せるよりも、この理性の脳をもっともっと使うべきです。理性は誰にでもあるものですが、育児中はだれでもつい多情になり、カッとなってしまうことも多いことでしょう。しかし、日頃から意識することで理性的な言動が身につきます。

まずは、子どもに愛情を注ぐ大前提として「この子たちは私のものではない」という冷厳なる重要事項を忘れないことです。確かに子どもたちは大人の庇護がなくては生きていけません。が、だからといって子どもたちを大人の感情で翻弄して良いわけはありません。

難しいことかもしれませんが、育児に見返りを求めないことが大切なのではないでしょうか。親は、愛情あふれるマネージャー兼スポンサーに徹するくらいの気持ちでいいと思います。

●年代の違う親とも話し合いを。えこひいきが生む“負の連鎖”を断つ

“個人”より“家系”が重んじられた時代には、どちらかというと男子の誕生の方が喜ばれる風潮がありました。男子は家や家業を継ぎ、家系を存続させる役割を期待されていたからです。

最近では逆に、「かわいくて手がかからず、育てやすいから」「結婚しても実家の方に遊びに来てくれるから」といった理由で、女の子の誕生の方が喜ばれる傾向があります。しかしどちらも、大人のエゴに尽きる自分勝手な発想だと思いませんか?

難しい面もあると思いますが、この際ご相談者さまのお母様たちともよく話し合い、兄弟の扱いに格差をつけないよう協力してもらいましょう。もし世代間ギャップが埋められずなかなか協力してもらえなくても、ママであるご相談者様が先導して公平な空気を作り、子どもたちの権利を守ることを忘れないでくださいね。

ご相談内容の中にパパさんが登場しませんが、たとえ忙しくて接する時間が少ない父親であっても、子どもたちに平等に接するように協力を仰ぎましょう。親が、つねにフェアであること。感情を肯定しつつ、感情に振り回されない生き方を見せるのもまた教育ではないでしょうか。

【参考文献】

・『兄弟と姉妹―生まれてくる順番の神秘』カルル・ケーニッヒ(著)

・『わが家の子育て2』読売新聞社婦人部・著

●ライター/月極姫(フリーライター)

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