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初めての宿坊体験【前編】 早寝早起き&ヘルシーな食事で生活をリセット

  • 2015.11.20
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お寺の参拝者のための宿泊施設「宿坊」。精進料理を味わえたり、座禅や写経などの体験ができる宿坊もあり、最近ではワンランク上の旅を求める女性にも人気。でも、なんだかハードルが高いような気がしますよね。「気軽に宿泊していいのかな?」「厳しい修行が待っているのかも?」そんな疑問を解消するため、ことりっぷ編集部が実際に宿坊を体験してきました。

美しい日の出が拝める地、千葉県清澄寺へ

今回訪れたのは、千葉県鴨川市の清澄寺。千葉駅からJR外房線の普通電車に揺られること約2時間。安房天津駅で下車し、タクシーで約15分、山を上がったところに清澄寺はあります。左右に阿吽の金剛力士像を安置した仁王門がドンと迎えてくれ、その大迫力におのずと期待感が高まります。

仁王門のすぐ脇にある建物のインターフォンを押すと、お坊さんがにこやかに出迎えてくれました。私達を案内して下さったのは、清澄寺主事の齊藤英博さん。普通の宿と同じように受付で手続きを済ませると、宿坊での過ごし方を説明して下さいました。

今回の宿泊スケジュールはこんな感じです。

18:00 夕食

19:00〜21:00 お風呂

21:00 就寝

5:00 起床

5:30 日の出を見に行く

6:00 朝のお勤め

7:30 朝食

8:00 写経、浄心行(瞑想)

10:00 チェックアウト

私たちが今回泊まったのは10畳ほどのシンプルな和室。暖かいお茶も用意されていて、ほっと一息休めます。

床の間にお経が飾られている以外は普通の宿と変わりありません。しかしそこはやはり宿坊。部屋の窓からは荘厳な雰囲気の大堂を眺めることができ、思わず気持ちが引き締まります。17時になると、鐘を撞く音が部屋の中まで響き渡り、お寺の中に泊まっているのだなと実感させられます。

若い女性から外国人旅行者まで、誰でも気軽に泊まれる

改めて宿坊とはどんなところなのか、主事の齊藤さんにお話を伺うことができました。まず宿坊には、どんな人が泊まりにくるのでしょうか?

「ここは清澄という名前の通り、空気がとても清らかに澄んでいますので、心を落ち着かせたい方々が、老若男女問わずいらっしゃいます。こちらの宿坊は研修会館でもあるので、団体客の受け入れもあります。夏休みになると、子どもたちの寺子屋合宿が開かれたり、春先には社員研修での利用も多いですね。もちろん個人での宿泊も大歓迎です。異国文化を味わいたい外国からのお客さんや、若い女性客の姿も見られますよ。」

こちらの宿坊は、20部屋ほどの客室があり、団体の宿泊客も多く受け入れているとか。やはり皆さん、宿坊ならではの体験を求めてやってくるのでしょうか?

「自分を見つめなおしたり、精神を鍛える目的で、修行を体験していかれますね。お寺では早朝、お坊さんたちが仏様の前でお経を唱える法要が行われていて、宿泊者はこの朝のお勤めに参加することができます。あとは写経を希望される方がとても多いですね。団体のお客さまの場合、「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」というお題目をひたすら繰り返し唱える唱題行(しょうだいぎょう)を行なう場合もあります。」

このような体験を通して、日常生活を忘れて自分を見つめ直し、心を落ち着けることができるそうです。そこが、普通の宿と宿坊の一番の違いと言えそう。宿坊によってそれぞれですが、清澄寺ではあまり厳しい修行は行なわないので、初めての方でも気軽に行くことができますね。

なお、清澄寺は日蓮宗の開祖である日蓮聖人が修行した寺として知られていて、大堂には能満虚空蔵菩薩(のうまんこくうぞうぼさつ)様が祀られています。「智慧(ちえ)授けの菩薩」として親しまれていて、受験シーズンになると、学問のご利益を求めて受験生などが多く参拝に来るのだとか。

お祭りや初詣の時などでも…宿坊に泊まるのに良いタイミングは?

ところで、宿坊に泊まりに行くのにオススメのタイミングとは? どんなきっかけで訪れると良いのでしょうか?

「初めての方なら、毎年9月13日に行なわれる虚空蔵菩薩大祭(こくうぞうぼさつたいさい)やお正月など、行事のある日にお寺を訪れるついでに泊まっていかれてはいかがでしょうか? もちろん、大きな仕事の前に気持ちを引き締めたいとか、失恋して心機一転したいといったような個人的なことがきっかけでもいいですよ。宿泊者には、『今日はなんで見えられたのですか?』と、お坊さんが声をかけることもありますので、悩みなどがあれば相談に乗ることができるかもしれません。お坊さんと話すのは敷居が高いと思われる人もいますが、どうぞお気軽にお話しして下さいね。」

日頃接点の少ないお坊さんと直接お話できる機会があるのは、宿坊ならではのメリットですね。

宿坊の夜はとにかく早い!生活のリズムを整えて

こちらの宿坊では、18時には食堂で早めの夕食をいただきます。肉や魚を使わないヘルシーな精進料理ですが、品数も多く、美しく盛り付けられ、とても満足感を得られます。精進料理を味わうために宿泊する方もいるそうです。食事の後にお風呂の時間となります。部屋備え付けのお風呂と中浴場、大浴場があり、宿泊者の人数によって用意されるお風呂は変わります。この日入ったのは中浴場。簡素な作りですが清潔感があり、旅館などと同じように、シャンプーとボディソープ、部屋には歯ブラシ、フェイスタオル、浴衣も用意されていて安心です。

気になる就寝時間ですが、特に決まりはありません。この日は翌朝早起きして日の出を見るために、アラームをセットして21時には就寝しました。ただ、張り切って布団に入ったものの、こんな時間に寝ることに慣れていないのでなかなか寝つけません。しかも、「5時に起きなきゃ!」という気持ちが強すぎたせいか、夜中に何度も目が覚めてしまいました。宿泊日の前には、早寝早起きして、生活のリズムを整えておくと良いかもしれません。

翌朝は5時に起床し、まだ眠い目をこすりながら、日の出を見るために徒歩5分の旭が森へ。ここは、富士山と離島を除いて日本で一番最初に日の出が見られる場所としても有名です。しかし、残念ながらこの日は雲が多く、日の出を見ることができませんでした。

齊藤さんによると、水平線から昇るご来光は、年に数度しか見られない貴重なものだそう。でも、早起きをして澄んだ空気を味わいながら朝焼け空を眺める清々しさは格別なものでした。

日常生活の忙しさから切り離された空間で気持ちを落ち着かせ、自分の内面を見つめなおす時間を持つことができる宿坊。早寝早起きをしたり、ヘルシーな精進料理を食すことで、日頃の乱れた生活をリセットするいい機会になるかもしれませんね。

後半では、朝のお勤めや写経など、宿坊ならではの体験を詳しくレポートします。

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