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日本で観られそうな目玉作品も。サーチライト、A24、Netflix…サンダンス映画祭で見つかる映画ファン必見作は?

  • 2023.2.3
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毎年アカデミー賞のノミネーション発表前後にユタ州パークシティで行われるサンダンス映画祭は、「未来のオスカー候補」を見つける映画際として、スタジオやストリーミング各社が駆けつける場所になっている。それは、サンダンス出品作の多くが特定のスタジオが企画から立ち上げた作品ではなく、世界中のクリエイターが独自に作った作品(インディペンデント作品)をお披露目する場で、それらの作品はサンダンスを出発点に配給会社を見つけ、世界中の映画祭や映画賞にピックアップされていくからだ。大手スタジオはどこも小規模アート系作品を扱うサブブランドを持っていて、ディズニーで言えばサーチライト・ピクチャーズ、ソニー・ピクチャーズで言えばソニー・クラシックス、ユニバーサル映画ではフォーカス・フィーチャーズと、どのレーベルもアカデミー賞の常連になっている。

【写真を見る】日本のオウム真理教を題材にした『AUM: The Cult at the End of the World』もサンダンス映画祭で上映された

サンダンス映画祭出品はアカデミー賞受賞につながる説!今年の注目作は?

2022年のサンダンス出品作の『生きる LIVING』(3月31日公開)のビル・ナイは、第95回アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされた [c]Courtesy of Sundance Institute
2022年のサンダンス出品作の『生きる LIVING』(3月31日公開)のビル・ナイは、第95回アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされた [c]Courtesy of Sundance Institute

例えば、2020年のサンダンスで話題となったのは、リー・アイザック・チョン監督の『ミナリ』(20)と、フローリアン・ゼラー監督の『ファーザー』(20)、エメラルド・フェネル監督の『プロミシング・ヤング・ウーマン』(20)、ドキュメンタリーの『アメリカン・ファクトリー』(19)などだった。『ミナリ』はUSドラマ部門の審査員賞と観客賞をW受賞し、他の作品も翌年の第93回アカデミー賞で各賞を受賞している。

完全オンライン開催だった2021年は、『コーダ あいのうた』『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』(すべて21)などが上映された。『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』は第93回アカデミー賞でダニエル・カルーヤが助演男優賞と歌曲賞を、翌年の第94回で『サマー・オブ・ソウル』が長編ドキュメンタリー映画賞を受賞している。『ミナリ』同様、USドラマ部門の審査員賞と観客賞受賞の『コーダ あいのうた』はサンダンスでプレミアされた作品として初めてアカデミー賞作品賞受賞作品となった。

1月24日に発表になった第95回アカデミー賞のノミネーションには、2022年のサンダンス出品作の『生きる LIVING』(3月31日公開)から主演男優賞候補のビル・ナイ、脚色賞候補のカズオ・イシグロが、『ファイアー・オブ・ラブ 火山に人生を捧げた夫婦』(22)と『Navalny』が長編ドキュメンタリー賞候補に選ばれている。

『Past Lives』『Polite Society』『Fair Play』など、日本でも観られそうな“目玉作品”も!

アクションとミュージカルを混ぜた軽快なコメディ作品『Polite Society』は、春頃に北米公開になる [c]Courtesy of Sundance Institute | photo by Parisa Taghizadeh
アクションとミュージカルを混ぜた軽快なコメディ作品『Polite Society』は、春頃に北米公開になる [c]Courtesy of Sundance Institute | photo by Parisa Taghizadeh

賞レースだけでなく、年間を通して「これはおもしろい!」と話題になる作品が多く揃うのがサンダンス映画祭。今年のサンダンスから、2023年と2024年にエンターテインメント界隈を賑わせ、日本でも観られそうな作品をピックアップしてみたい。

オンラインとインパーソンのハイブリッド開催となった今年のサンダンスでは、一部の“目玉作品”がユタ州の会場のみで上映された。なかでもA24、韓国のCJ ENM、そして『キャロル』(15)などを手掛けた名プロデューサーのクリスティーン・バションのKiller Filmsによる『Past Lives』は、多くの批評家や観客が「今年のベスト」に選んでいる。韓国系アメリカ人女性(ドラマシリーズ「ザ・モーニング・ショー」のクロエ役のグレタ・リー)が、現在の白人男性のパートナーと昔の恋人の韓国人男性との間で揺れる物語で、監督のセリーヌ・ソンは劇作家から映画監督デビューとなった。2月の第73回ベルリン国際映画祭でも上映され、2023年中にA24が北米公開予定。

フォーカス・フィーチャーズは、製作作品の『Polite Society』と観客賞受賞の『A Thousand and One』を出品、どちらも春頃に北米公開になる。『Polite Society』は、スタントウーマンを目指すパキスタン系イギリス人の妹(「ブリジャートン家」のプリヤ・カンサラ)が、アーティストを目指していた姉の突然の玉の腰結婚を阻止しようと奔走する物語で、アクションとミュージカルを混ぜた軽快なコメディ作品になっている。

『Fair Play』は、ニューヨークのヘッジファンド企業で社内恋愛中の二人が陥る心理サスペンス。Netflixから全世界配信予定! [c]Courtesy of Sundance Institute
『Fair Play』は、ニューヨークのヘッジファンド企業で社内恋愛中の二人が陥る心理サスペンス。Netflixから全世界配信予定! [c]Courtesy of Sundance Institute

「ブリジャートン家」のダフネ役、フィービー・ディネヴァーと『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(18)のハン・ソロ役オールデン・ケイレブ・エアエンライクが主演する『Fair Play』は、ニューヨークのヘッジファンド企業で社内恋愛中の2人が陥る心理サスペンス。Netflixは2000万ドル(約26億円)以上で全世界配信権を取得した。同じく2000万ドルでApple TV+が落札したのは、『はじまりのうた』(13)、『シング・ストリート 未来へのうた』(16)のジョン・カーニー監督の新作『Flora and Sons』。ジョセフ・ゴードン=レヴィットとU2のボノの娘であるイヴ・ヒューソン(Apple TV+「バッド・シスターズ」)による、ダブリンを舞台にしたミュージカル。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(19)のトリプルA役のモリー・ゴードンが主演と共同監督を務める『Theater Camp』は、劇場公開を予定している [c]Courtesy of Sundance Institute | photo by Eli Raskin
『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(19)のトリプルA役のモリー・ゴードンが主演と共同監督を務める『Theater Camp』は、劇場公開を予定している [c]Courtesy of Sundance Institute | photo by Eli Raskin

サーチライト・ピクチャーズは、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(19)のトリプルA役のモリー・ゴードンが主演と共同監督を務める『Theater Camp』を800万ドル(約10億円)で購入、劇場公開も予定している。ベン・プラットや「一流シェフのファミリーレストラン」のシドニー役アイオウ・エディバリーが出演、子ども向けのミュージカルキャンプのモキュメンタリー(擬似ドキュメンタリー)で、笑えて泣ける楽しい作品だ。今作は、審査員特別賞アンサンブルキャスト賞を受賞している。もう1本の『Rye Lane』はイギリスのレイン・アレン・ミラー監督の長編初監督作で、HBOのドラマ「インダストリー」のデヴィッド・ジョンソンらによるコメディ。カラフルな画作りと、アンダーグラウンドのパーティで繰り広げられる会話劇がおもしろい。

Netflixは、「メディア王 〜華麗なる一族〜」の長女シヴ役でおなじみのサラ・スヌークがオーストラリアに戻り主演したサイコサスペンス『Run Rabbit Run』をピックアップした [c]Courtesy of Sundance Institute | Photo by Sarah Enticknap.
Netflixは、「メディア王 〜華麗なる一族〜」の長女シヴ役でおなじみのサラ・スヌークがオーストラリアに戻り主演したサイコサスペンス『Run Rabbit Run』をピックアップした [c]Courtesy of Sundance Institute | Photo by Sarah Enticknap.

Netflixは、「メディア王 〜華麗なる一族〜」の長女シヴ役でおなじみのサラ・スヌークがオーストラリアに戻り主演したサイコサスペンス『Run Rabbit Run』をピックアップ、監督は「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」や「シャイニング・ガール」のエピソード監督を務めたダイアナ・リード。ガエル・ガルシア・ベルナルがルチャ・リブレのエクソティコで活躍するカサンドロを演じる伝記映画『Cassandro』は、Prime Videoが配信予定。

NBAのゴールデンステート・ウォリアーズ所属のスター選手、ステフィン・カリーの『Stephen Curry: Underrated』はApple TV+で2023年に配信予定 [c]Courtesy of Sundance Institute
NBAのゴールデンステート・ウォリアーズ所属のスター選手、ステフィン・カリーの『Stephen Curry: Underrated』はApple TV+で2023年に配信予定 [c]Courtesy of Sundance Institute

ドキュメンタリー作品では、NBAのゴールデンステート・ウォリアーズ所属のスター選手、ステフィン・カリーの『Stephen Curry: Underrated』、難病パーキンソン病と闘病するマイケル・J・フォックスの半生を綴る『STILL: A Michael J. Fox Movie』はApple TV+で2023年に配信予定。深海を潜るフリーダイビングの世界で世界新記録を目指すダイバーを追う『The Deepest Breath』はA24などの共同製作で、Netflixが2023年中に配信する。また、公開・配信は未定だが日本のオウム真理教を題材にした『AUM: The Cult at the End of the World』も上映された。2020年のサンダンス出品作『83歳のやさしいスパイ』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされたマイテ・アルベルディ監督の新作は、アルツハイマー病と向き合う夫妻の『The Eternal Memory』で、ワールドドキュメンタリー部門審査員賞を受賞している。

ボディビルダーを目指す黒人青年の精神的抑圧の物語『Magazine Dreams』 [c]Courtesy of Sundance Institute | photo by Glen Wilson
ボディビルダーを目指す黒人青年の精神的抑圧の物語『Magazine Dreams』 [c]Courtesy of Sundance Institute | photo by Glen Wilson

これらの作品のほかにも、ボディビルダーを目指す黒人青年の精神的抑圧の物語『Magazine Dreams』や、北朝鮮から中国へと亡命する人々の『Beyond Utopia』(USドキュメンタリー部門観客賞受賞)など、今後配給が決まると話題になりそうな作品も多い。例年よりも配給会社の財布の紐は固いようだが、配信系の作品は日本でもすぐに観られるようになることだろう。

文/平井 伊都子

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