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サンフランシスコ、ミッション地区のストリートアート 〜共存するということ〜

  • 2015.11.18
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サンフランシスコのミッション地区には、アーティストや学生達が
描いた200以上の壁画アート(ミューラル)が点在している。

 

ゲイタウンの中心として有名な愛溢れるカストロが近くにあり、
その奥にはビクトリアンハウスが立ち並ぶ閑散な住宅街もある。

 

 

壁画アートが集まっているミッション中心地は、ラテン系アメリカ人や異国の労働者が昔から住んでおり、
多様な文化とライフスタイルが混在しているため、観光地とは一味違う本来のサンフランシスコらしさも
堪能することができるようだ。

 

特にミッションストリートには、個人商店、雑貨屋、異国料理の色鮮やかな軒並みが印象的な中、
駐車場や店先にも沢山のユニークなアートが広がっていた。

 

現在も、常時アートは描きたし描き直されているようで、作成中の様子に出くわすこともある。

 

 

ミッションストリートから1本裏の道や小道に入っても、
至る所で建物一面を使って描かれた絵が、突如目に飛び込んでくる。

ストリートアートはパステルな色だと目立たないのだろうか、どのアートも鮮やかな色が使われている。
その唐突さと鮮やかさは、歩く私たちをワクワクした気持ちにさせてくれる。

 

 

こうした絵はダイナミックさを感じると同時に、建物の枠の中にちゃんとおさまっている。
どこか計算されたような緻密さと安定感さえも感じるのが不思議だ。 

 

一方中には、窓や冊子、換気口もアートの一部として取り入れているものもある。

 

 

 煉瓦の壁にも木材の壁にも電柱にも地面にも迸る情熱が、溢れんばかりに飛び散っている。

 

これらのアートたちは当たり前のように街に存在している。

美術館の中で見るものとは違うストリートアートならではの街と共存している面白さ。
そして、そこにいる多種多様な人々の雰囲気が混ざりあう未知なる魅力がある。

 

大きくても、小さくても、情熱的でも、シニカルでも、そこには自由がある。
自然ととけこんでいるとは言い難い不自然なものもここにはあるけれど、それでもそこにアートはただ存在している。
この街は単なる街とアートだけでなく、”人とアート”、”宗教とアート”、
“文化とアート”、様々なものとアートは共存しているように感じる。

 

しかし、その中でも激しいメッセージと風刺画が立ち並んでいたエリアClarion Alleyがある。
ミッションストリートと平行して並ぶバレンシアストリートを結ぶこの小道は、
道の両側に一定の幅で絵が描かれている。

 

 

ポップで明るいアートに「ストップ!企業支配」の文字。
近年、シリコンバレーの影響で後からIT系の住民が参入しているこの地域。
そのために家賃が高騰して、住めなくなった人々が現れるという様々な問題が起きているようだ。
富裕層が住んでいる新しいアパートやビクトリアンハウスの前の壁に、このような絵が描かれている所もあるそうだ。

 

 

地球の上に無数のビル埋め尽くしている壁画やデモクラシーの文字と同性愛をモチーフにした壁画。

 

こうした社会性の強い壁画がいくつも並び、時には攻撃的なメッセージも目にした。

 

この小道を抜けるとそれまでの雑多な雰囲気とはうって変わり、
ハイセンスで独立系のホットなショップが立ち並んでいるバレンシアストリートが広がる。

 

こんなにもすぐ近くの通りでも、街の表情が一気にガラッと変わる。

 

 

綺麗で透き通った青の絵に目を奪われた。

街とアートが共存していたように、人と人が共存するのはなんて難しいことなのか…。
でも共存していきたいと願っている、そんな想いをこの絵から感じる。

 

帰国後、映画「MILK」を見た。アメリカで初めて同性愛者であることを
公表しながらサンフランシスコで公職についた「ハーヴィー・ミルク」の伝記映画だ。
その道のりは、一個人としての沢山の犠牲や喪失を経ながら、
それでも手にしなければならいない沢山の自由のために戦った、大きなものだった。

 

サンフランシスコの自由と愛と平和を主張するアート。
主張をせざるおえない理由がその背景に沢山ひそんでいる。
その不自由、その貧困、その格差、その差別、その偏見、その孤立、その争い。
幾人の、どのような深く重たい人生がそこにはあるのだろう。

 

文・写真 /Yoshiko

 

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