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ダークホースのNetflix映画『西部戦線異状なし』とは?第95回アカデミー賞のサプライズノミネーション

  • 2023.1.28
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現地時間3月12日(日)に授賞式が行われる第95回アカデミー賞のノミネーションが1月24日、ついに発表された。最多ノミネートを獲得したのはA24製作の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(3月3日公開)で、作品賞や監督賞を含む10部門で11ノミネート。賞レースの主役と期待されてきた作品が盤石の強さを見せつけた。本コラムでは大本命作品を始めとしたノミネート作品を振り返りつつ、ダークホースとなったNetflix映画『西部戦線異状なし』やサプライズ作品となった候補作を一挙にチェックしていく。

【写真を見る】戦争の恐ろしさを真正面から描く『西部戦線異状なし』…生々しい戦場表現

『エブエブ』が圧倒的パワーでオスカーへまっしぐら!

作品賞をはじめ10部門で11ノミネートを獲得した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 [c] 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
作品賞をはじめ10部門で11ノミネートを獲得した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 [c] 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.

「アベンジャーズ」シリーズのルッソ兄弟が製作を務めた『エブエブ』こと『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、破産寸前の主婦エヴリンの前に“別のユニバースから来た”夫のウェイモンドが現れ、突如として世界の命運を託されることになる奇想天外なアクションエンタテインメント。2022年3月に北米公開を果たして以降、話題が話題を呼び、A24作品の興収新記録を更新。すでに世界中の映画賞で228受賞484ノミネートを達成している。

主人公エブリンを演じたミシェル・ヨーは、アジア系女優として初の主演女優賞ノミネートを達成。また、助演男優賞には『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』(84)や『グーニーズ』(85)で人気を博し、これが20年ぶりのハリウッド映画復帰となったキー・ホイ・クァンがノミネート。両者とも前哨戦の第80回ゴールデン・グローブ賞で受賞を果たしており、近年のアカデミー賞のトレンドとなっているアジア旋風が今年も起きることに期待が寄せられている。さらに助演女優賞にはジェイミー・リー・カーティスとステファニー・スーの2名もノミネートされた。

「ハロウィン」シリーズでおなじみのジェイミー・リー・カーティスも初のオスカー候補に!(『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』) [c] 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
「ハロウィン」シリーズでおなじみのジェイミー・リー・カーティスも初のオスカー候補に!(『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』) [c] 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.

監督賞にノミネートされたのは“ダニエルズ”ことダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート監督。これまで同部門でコンビ監督が候補入りを果たしたのは『ウエスト・サイド物語』(61)のロバート・ワイズ&ジェローム・ロビンズ、『天国から来たチャンピオン』(78)のウォーレン・ベイティ&バック・ヘンリー、『ノーカントリー』(07)と『トゥルー・グリット』(10)のコーエン兄弟の4例で、うち『ウエスト・サイド物語』と『ノーカントリー』は受賞を果たしている。5例目となった“ダニエルズ”が、これに続けるのか注目だ。

『イニシェリン島の精霊』は8部門9ノミネートを獲得! [c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
『イニシェリン島の精霊』は8部門9ノミネートを獲得! [c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『エブエブ』と共に前哨戦をリードし、第80回ゴールデン・グローブ賞では作品賞(ミュージカル・コメディ部門)など3部門を制したサーチライト・ピクチャーズ作品『イニシェリン島の精霊』(公開中)は、作品賞や監督賞と脚本賞、コリン・ファレルの主演男優賞、ブレンダン・グリーソンとバリー・コーガンの助演男優賞、ケリー・コンドンの助演女優賞など、8部門9ノミネート。

ほかにバズ・ラーマン監督の『エルヴィス』(22)が作品賞を含む8部門で候補にあがり、スティーヴン・スピルバーグ監督の『フェイブルマンズ』(3月3日公開)が7部門、『トップガン マーヴェリック』(公開中)は最有力と目された撮影賞での候補を逃したものの、作品賞や脚色賞など6部門で候補入りを果たした。

世界的“反戦小説”を初めて自国ドイツで映画化!

なかでも今年大躍進を見せたのは、Netflix作品『西部戦線異状なし』(配信中)。1928年に発表されたエーリヒ・マリア・レマルクの反戦小説を原作にした同作は、作品賞や国際長編映画賞を含む9部門でノミネートされている。

【写真を見る】戦争の恐ろしさを真正面から描く『西部戦線異状なし』…生々しい戦場表現 Netflix映画『西部戦線異状なし』独占配信中
【写真を見る】戦争の恐ろしさを真正面から描く『西部戦線異状なし』…生々しい戦場表現 Netflix映画『西部戦線異状なし』独占配信中

この原作小説は過去にも映画化されており、ルイス・マイルストン監督が手掛けた『西部戦線異状なし』(30)は第3回アカデミー賞で作品賞と監督賞を受賞。また1979年にはオスカー受賞者であるデルバート・マン監督のメガホンでテレビ映画も制作されているのだが、いずれも英語作品。物語の生まれた地であるドイツで、しかもドイツ語で映像化されるのは今回が初めてのこととなる。

舞台は第一次世界大戦勃発から3年後の1917年。17歳の青年パウル・ボイメル(フェリックス・カマラー)は、英雄になることを夢見て3人の友人らと共にドイツ帝国陸軍へと入隊する。しかし北フランスの戦地に送られるやいなや敵軍からの砲撃に見舞われ、仲間が次々と死んでいく様を目の当たりにすることに。やがてパウルは、戦地に出向くまで抱いていた高揚感を失い、戦争がもたらす絶望や恐怖に追い詰められていくのである。

第一次大戦下を舞台に、希望を胸に戦争に参加した青年が味わう絶望を描く『西部戦線異状なし』 Netflix映画『西部戦線異状なし』独占配信中
第一次大戦下を舞台に、希望を胸に戦争に参加した青年が味わう絶望を描く『西部戦線異状なし』 Netflix映画『西部戦線異状なし』独占配信中

メガホンをとったのは、ベネディクト・カンバーバッチ主演のドラマシリーズ「パトリック・メルローズ」などを手掛けたエドワード・ベルガー監督。脚色賞にもノミネートされたレスリー・パターソンとイアン・ストーケルが執筆した脚本を、自らドイツ語に直していったベルガー監督。ドイツ人としての視点を取り入れることを重視しながら、原作小説や過去の映像化作品への敬意を払い、原作にはない新たな描写も取り入れている。

映画冒頭から見受けられる、戦地での生々しい描写の数々。痛みや死、そして人間を変えてしまう戦争という魔物の恐ろしさ。90年以上前に書かれた物語でありながらも、ナショナリズムの増大など現代にも通じるあらゆるテーマを携えており、まさにロシアによるウクライナへの侵略戦争が起きているいまだからこそ観るべき作品に仕上がっている。

技術部門を中心に大量ノミネート!一躍今年の有力作に(『西部戦線異状なし』) Netflix映画『西部戦線異状なし』独占配信中
技術部門を中心に大量ノミネート!一躍今年の有力作に(『西部戦線異状なし』) Netflix映画『西部戦線異状なし』独占配信中

前哨戦となる全米各地の批評家協会賞ではめざましい成績をあげられなかったが、英国アカデミー賞では最多の14部門にノミネート。そしてこのアカデミー賞で大量ノミネートを獲得して一気に注目を集めることになった。すでにNetflixで配信されており、今回の主要部門ノミネート作のなかでもアクセスしやすい作品となっている。是非とも授賞式前に、心して目撃していただきたい。

土壇場で大逆転ノミネート!主演女優賞は一気に大混戦に

今年のビッグサプライズをもうひとつ紹介したい。それは主演女優賞にノミネートされた『To Leslie』のアンドレア・ライズボローだ。宝くじの高額当選を果たすも、すぐにそれを浪費してしまったシングルマザーが人生を立て直そうとする様を描いた同作は、2022年春のサウス・バイ・サウスウエスト映画祭でお披露目され、10月に小規模劇場公開された。

『オブリビオン』のアンドレア・ライズボローが『To Leslie』でビッグサプライズを巻き起こす [c]Everett Collection/AFLO
『オブリビオン』のアンドレア・ライズボローが『To Leslie』でビッグサプライズを巻き起こす [c]Everett Collection/AFLO

前哨戦ではインディペンデント・スピリット賞とシカゴ映画批評家協会賞にノミネートされただけに留まり、賞レースへの参戦の可能性は薄いと思われていたのも束の間、アカデミー賞の投票がスタートした頃から突然、名だたる女優たちがライズボローへの支持を表明。ケイト・ウィンスレットやエイミー・アダムス、グウィネス・パルトロー、さらには今年『TAR/ター』(5月12日公開)で同部門にノミネートされたケイト・ブランシェットも。

ブランシェットと『エブエブ』のミシェル・ヨーの一騎討ちになるとの見方も強い一方、前哨戦で注目された有力候補者が落選したり、厳しい戦いになると思われた『ブロンド』(Netflixにて配信中)のアナ・デ・アルマスが候補入りを果たすなど、主要部門のなかでは今年一番の大混戦となりつつある主演女優賞。急激に支持を拡大しているライズボローが受賞までたどり着く可能性まで指摘されており、どんな結果が待っているのか特に目が離せなくなりそうだ。

長編アニメーション賞部門では実写×アニメのハイブリッド映画が!

長編アニメーション賞で最有力と目される『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』 Netflix映画『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』独占配信中
長編アニメーション賞で最有力と目される『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』 Netflix映画『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』独占配信中

また、長編アニメーション賞では日本からエントリーしていた『犬王』(22)と『雨を告げる漂流団地』(Netflixにて配信中)、『グッバイ、ドン・グリーズ!』(22)の3作品はいずれもノミネートに届かず。大本命と目される『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』(Netflixにて配信中)を筆頭に、同部門で人気の高いドリームワークスの『長ぐつをはいたネコと9つの命』(3月17日公開)や、ディズニー&ピクサーの『私ときどきレッサーパンダ』(ディズニープラスにて配信中)が順当にノミネートされ、『ジェイコブと海の怪物』(Netflixにて配信中)がサプライズで滑り込み。

なかでもこの部門で注目は、全米公開時に批評家から大絶賛を集めた『Marcel the Shell with Shoes On』がノミネートを果たしたことだ。ドキュメンタリー作家がAirbnbで借りた家で出会った小さな貝殻のマルセルへのインタビュー動画を撮影し、行方不明になったマルセルの家族を探すというモキュメンタリー作品で、この部門としては異例の実写×ストップモーションアニメのハイブリッド作品となっている。

実写とストップモーションのハイブリッド!『Marcel the Shell with Shoes On』が長編アニメーション賞にノミネート [c]Everett Collection/AFLO
実写とストップモーションのハイブリッド!『Marcel the Shell with Shoes On』が長編アニメーション賞にノミネート [c]Everett Collection/AFLO

長編アニメーション賞には、上映時間の大部分をアニメーションが占めていることという規定が設けられている。同作にはほぼすべてのシーンでストップモーションアニメの技術が用いられておりエントリーも認められたとはいえ、過去には実写パートの多い作品がノミネートに漕ぎ着けなかった例もあり、どのような判断がなされるのか注目が集まっていた。アニメーション映画賞の歴史を変えた同作が、本選でどこまで活躍できるのか楽しみだ。

第95回アカデミー賞授賞式は、現地時間3月12日、日本時間では3月13日(月)の午前中より行われる。MOVIE WALKER PRESSでは今年も「第95回アカデミー賞特集」と題し、授賞式に向けて注目ポイントやアカデミー賞関連のニュースやコラムをお届けするほか、授賞式当日には受賞結果の速報もお伝えしていく予定。候補作から届けられる続報に乞うご期待!

文/久保田 和馬

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