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分断を超えた男同士の絆がエモい!『愛の不時着』より胸アツの“南北分断”韓ドラ&映画

  • 2023.1.28
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ドラマ「愛の不時着」がブームになったが、北朝鮮と韓国の対立を素材にした映画やドラマの秀作は他にも沢山ある。そんな作品を独断で紹介!

①工作 黒金星と呼ばれた男:南北分断の超裏側を描く実在のスパイの物語

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’92年、核開発疑惑が持ち上がっていた北朝鮮。実態を探るため、国家安全企画部(現・国情院)の指令を受けたコードネーム「黒金星」ことパク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は一介の事業家を装い、「南北合同の広告事業」を口実に北朝鮮の対外経済委員会リ・ミョンウン所長に接近する。

その裏で、体制維持をしたい北の当局と、既得権益を手放したくない南の政党が結託し、広告事業を阻む。両国に翻弄されるにつれ、2人の関係はいつしか奇妙な連帯に変わっていき……。

実話を基にしたリアリティもさることながら、この作品の驚くべき点は、すべての場面が見どころであることだ。緊迫感が伴う探り合いはもちろん、盗聴、録音などの諜報戦はまさに精神のバトルアクション。

北朝鮮潜入シーンや金正日総書記役(キ・ジュボン)の凄まじい再現度にも唸ってしまう。リ所長を演じるイ・ソンミンの感情を抑制した小刻みに震える演技も天下一品だ。そして騙し合いから変化する2人の関係も、物語に深みを持たせる。

「なぜ私を信じたのですか?」「信じる以外に方法がなかったから」――なんといっても圧巻なのはラストシーン。分断を超えた男同士の絆に熱い涙がこぼれるはずだ。

②プンサンケ:38度線を自由に行き交う、物言わぬ謎の男の寓話

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38度線を飛び越え、3時間以内に何でも配達する正体不明の男「プンサンケ」(ユン・ゲサン)。プンサンケはある日、韓国に亡命した北朝鮮の高官から愛人のイノク(キム・ギュリ)を連れてくるよう頼まれる。死線を乗り越え、無事にイノクを引き渡したプンサンケだったが韓国諜報員の裏切りに遭い捕らえられてしまう。

一方のイノクは老いた高官の嫉妬に愛想を尽かし、プンサンケに思いを寄せるように。劇中、言葉を一言も発しない主人公のプンサンケは南北間に翻弄され黙殺される全ての事象のメタファーといえる。

頻出する「お前はどっちの犬だ」というセリフや、北と南の幹部集団の戦闘シーンも南北対立の虚しさを描いている。38度線のみならず良作と駄作の評価をも往来する、挑戦作。

③JSA:南北分断映画の原点の一つにして“頂点”の一作

’99年、38度線上の南北共同警備区域(Joint Security Area)で起こった射殺事件。北は韓国軍の襲撃だと憤り、南は北の拉致からの脱出だと主張する。消えた一発の弾丸。食い違う当事者たちの供述。誰が誰を殺したのか。

最大の見せ場は、板門店で実施された韓国軍兵長のスヒョク(イ・ビョンホン)と、朝鮮人民軍中士ギョンピル(ソン・ガンホ)が同席した聴聞会だ。

お互い友情を秘めながらも、上官たちを前に憎み合わなくてはならない状況に耐え切れず、すべてを暴露しようとするスヒョクを殴り倒し、「朝鮮労働党万歳! 金正日将軍万歳!」と叫ぶギョンピルの鬼気迫る姿は、「事実を隠してこそ平和が保たれる」という物語の核心を突く名シーンだ。

マニア的視点で言えば、注目すべきは北側詰所に置かれたカセットデッキ。A面B面の音楽が自動で切り替わるオートリバース機能に、そこにいる人たちの意思にかかわらず平和と戦争を不意に行き来してしまう、南北分断の悲しいリアルが投影されている。

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④モガディシュ 脱出までの14日間:南北両大使館員が協力し、死地から脱出を試みる

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’90年、ソマリアの首都モガディシュ。国連正式加盟に向け南北双方が出し抜き合いの外交戦を繰り広げる中、激烈な内戦が勃発。大使館は襲撃され、通信やライフラインも遮断される。絶体絶命の危機に、いがみ合う南北両国の大使館員らが協力し合い脱出を図るが……。

実話をベースにした超政治的な物語を、アクションあり、カーチェイスあり、笑いと涙ありのエンターテインメントに仕上げてしまうのは韓国映画ならでは。

特に北朝鮮の大使館員らが韓国大使館に入った夜の食事のシーンは秀逸。毒が入っていないことを証明するため韓国大使がご飯を交換したり、重なって取りづらくなったエゴマの葉を北朝鮮の女性が箸で押さえて取りやすくしてあげたり、言葉を交わさずともそこに小さな絆が芽生え始める様子はセリフ以上に雄弁だ。

現実では溶け合うことのない南北の大使館員らが生命を懸けて助け合う姿が胸に迫るし、だからこそラストシーンがアツくもあり悲しくもある。

リアルすぎてお蔵入りになった伝説の北朝鮮作品

南北分断をテーマにした作品は北朝鮮でも少なからず製作されている。代表作と言われるのは、『名もなき英雄たち』(’78)だ。朝鮮戦争を背景に、韓国で活動する北朝鮮スパイの活躍を描き、日本では拉致被害者・曽我ひとみさんの夫であるジェンキンス氏が出演していたことで知られている。

この映画の脚本家リ・ジヌは北朝鮮の伝説的スパイと呼ばれたある男の半生を描く『赤い紅葉』という作品の脚本も書いている。

これは公開当初、北朝鮮で爆発的な人気を獲得したが映画の内容が事実そのものだったため、韓国で実際のスパイ網が一網打尽にされてしまうという事件が起き、北朝鮮本国では今では完全非公開となっている。

【今回のSPA!偏愛者・安宿緑】

南北分断映画やドラマは必ずチェックしている。実家がラブホテル「ホテルグリーン」を経営(破綻)。

<取材・文/週刊SPA!編集部>

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