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世界最大の動物『街』に密着?SFドラマ「CITY LIVES」の怖さと切なさ

  • 2023.1.26
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高嶋政宏 ※画像はWEBザテレビジョン タレントデータベースより
高嶋政宏 ※画像はWEBザテレビジョン タレントデータベースより

【写真】スーツ姿の高嶋政宏、織田裕二との2ショット

世界でいちばん大きな動物、<街>。大きさは数平方キロメートルあり、人間が暮らす都市に擬態する謎多き生物だ。日本には7個体の生息が確認され、その巨大な体を引きずりながら荒野を移動し続けている……。

生えるビル、呼吸するアスファルト……生きている<街>

これはフジテレビで放送中の「CITY LIVES」の話。巨大生物<街>と、その生態を調査する保護管に密着したドキュメンタリー……に見せかけたドラマ、いわゆる「モキュメンタリー」である。

巨大生物<街>は、見た目は本当に普通の街である。住宅があって道路があってビルがあって、近所で見た感じの景色そのまま。しかし、よく見ると電柱がユラユラ揺れていたり、夜中にビルがニョキニョキ生えてきたり、アスファルトのひび割れから呼吸したりする。その様子はVFXを駆使して表現され、本当に<街>が「生きている」ように見えるのだ。

高嶋政宏(本人)がナビゲーターを務める設定

その<街>にたった一人、本物の人間として駐在するのが、都市型生物保護機構(通称・都生保)の保護管である。

「CITY LIVES」では、高嶋政宏(本人)がナビゲーターを務めるドキュメンタリー番組“Lives”の取材という設定で、保護管の暮らしに密着する。#1で密着するのは、「E604」という中規模の<街>を調査する、男性保護管の高城(広田亮平)

作業着姿で<街>を記録する高城曰く、<街>は近くにいる人間の記憶を読み取って擬態するという。そのせいで、<街>は高城が生まれ育った街にそっくり。通っていた小学校もあるし、もう取り壊した祖父母の家もある。「いい思い出が擬態されることが多いんです」と目を細める高城。

気に入らない人間に<街>が嫌がらせをしてくる

だが、<街>は高城に懐いていない。じっとしていると足元に水たまりを出してくるし、人間に似せた“擬似住民”を作り出して威嚇してくる。住んでいる部屋には勝手に何本もチェーンロックをかけてくるし、寝ている高城の枕元に室外機を作り出して喉をガラガラにする。完全に嫌がらせである。

道路標識がニョキニョキ生えてくるようなVFXは、ずっと登場するわけではない。むしろ登場人物以外、誰もいない街をただ映している時間のほうが長い。それでも「巨大生物<街>」という設定と、時折聞こえる低いうなり声のせいで、なんでもない風景が脅威に感じるのだ。<街>が本気を出したら、人間なんてひとたまりもないだろうな、と。

そうした怖さが、先ほどの「嫌がらせ」のような小ネタで中和されると、<街>が憎めないやつに見えてくる。だって、路上に捨ててある空のペットボトルが<街>の老廃物だったりするのだ。そんなとこまで擬態しちゃうのって、もう逆にかわいい。ということは、うちの近所のゴミ集積所は<街>にとってトイレなのか、いやいや生物の上にトイレがあるのはおかしいか……と、いつもの街まで違って見えてくる。

「好きなものは忘れられないよね」

24日放送の#2で密着したのは、女性保護管の辻(片山友希)。高城とは別の<街>、「N507」を調査している。

密着取材中、辻は近くの街から家出してきた女子高生・川井(松澤可苑)と出会う。バスケ部に所属していた川井は、ケガでバスケができなくなり、学校に居場所が無くなっていた。そんな川井に、<街>は執拗にバスケットボールを転がしてくる。「<街>ってデリカシーないわー」と川井。

その川井に辻は、学生時代に好きだった人のことを話す。彼と辻はベンチでよくしゃべっていた。そのベンチも<街>が何度も出現させてきて、そのたび辻は撤去していた。彼を忘れようとしているのに。

高城も辻も「<街>は良い記憶を再現する」と思っている。<街>が何をもって、その記憶の良し悪しを判断しているかはわからない。ただひとつ言えるのは「好きなものは忘れられないよね(川井)」ということ。

その言葉を踏まえて#1を振り返ると、「E604」が作り出した部屋に高城が動揺する場面がある。それとまったく同じ部屋は「N507」にもあり、辻は「わたしが学生時代に使っていた部屋」と説明しているのだ。さらに「E604」にも“あのベンチ”があり、高城がためらいつつもそこに腰掛けて、取材を受ける場面がある。

<街>は近くにいる人間の記憶を元に擬態する。その生態は、登場人物たちが奥に秘めた思いを具現化する装置となる。その具現化された「記憶」たちを見て、登場人物たちは自分の思いに気づくのだ。「CITY LIVES」は記憶をめぐる物語でもある。

<街>の巨大さ、「記憶」のはかなさ

「CITY LIVES」は全3回の放送で、31日放送の#3が最後となる。#2の最後、辻のスマホに「第2種接近警報」が鳴り響き、<街>個体間の干渉が観測された。「E604」からロケットのように発射される電柱、それに無数のマンホールで応戦する「N507」。それぞれの街の担当者に連絡を取り合ってはじめて、2人はお互いが保護管になっていることを知る。

なぜ<街>同士が干渉したのか、それには辻と高城の「記憶」が関係しているのか……。<街>という巨大な存在と、「記憶」というはかない存在が交錯する「CITY LIVES」から目が離せない。

※高嶋政宏の「高」は正しくは「はしご高」

文=井上マサキ

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