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【騒動解説】ハリウッド映画での誤射事件、銃を撃ったアレック・ボールドウィンが過失致死罪で起訴された理由

  • 2023.1.20
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2021年に映画『Rust』の撮影現場で俳優のアレック・ボールドウィンが小道具の銃を誤射し、撮影監督が死亡した事故で、検察当局がアレックを過失致死容疑で刑事訴追すると発表した。(フロントロウ編集部)

アレック・ボールドウィンが過失致死容疑で訴追へ

2021年、俳優のアレック・ボールドウィンが主演兼プロデューサーを務める映画『Rust』の撮影中に小道具の銃を誤射し、撮影監督が死亡した事件で、ニューメキシコ州の地区検察は19日(現地時間)、「徹底的に検討した結果、刑事告訴するのに十分な証拠があると判断した」として、アレックと武器係のハンナ・グティエレス・リードをそれぞれ2件の過失致死罪で訴追する方針を明らかにした。

米Peopleによると、ニューメキシコ州で過失致死罪は第4級の重罪で、最高で18ヵ月の懲役と5,000ドルの罰金に処せらる。もうひとつの不法行為による過失致死罪も同じく第4級の重罪で、最高で18ヵ月の懲役と5,000ドルの罰金に処せらるが、銃器が関与している場合は追加でペナルティが発生し、有罪になれば5年の懲役刑が確定するという。

画像: アレック・ボールドウィン(左)と亡くなった撮影監督のアリナ・ハッチンス(右)。
アレック・ボールドウィン(左)と亡くなった撮影監督のアリナ・ハッチンス(右)。

検察の発表を受けて、アレックの弁護士であるルーク・ニカス氏は、「この決断は、アリナ・ハッチンス氏の悲劇的な死を歪曲し、ひどい誤審を意味するものです。ボールドウィン氏は、銃の中あるいは映画のセットに実弾があることを知る由もありませんでした。彼は、一緒に仕事をした銃のプロフェッショナルが、その銃には実弾が入っていないと断言したことを頼りにしていました。私たちはこの容疑と戦い、必ずや勝利します」と声明を発表。

また、全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)は、「アリナ・ハッチンスの死は悲劇であり、予防可能であったからこそ、より一層悲劇です。しかし、それは演者の義務違反や犯罪行為ではありません。俳優が制作現場で銃器の機能的・機械的動作を確保する義務を負うという検察官の主張は誤りであり、無知です。俳優の仕事は、銃器や武器の専門家になることではありません」(※一部抜粋)と、アレックを擁護するコメントを出した。

銃誤射事件をめぐるこれまでの流れ

2021年10月、米ニューメキシコ州で撮影中だった映画『Rust』のセットで、撮影監督のアリナ・ハッチンスが小道具の銃の誤射によって亡くなる事故が発生。この事故でジョエル・ソウザ監督も負傷した。銃に弾が装填されていることを知らずに撃ったアレックは、事前に銃を確認した助監督から“安全”だと伝えられており、彼に銃を渡した助監督や武器係の確認不足が事故の原因と見られている。また、アレックが撃った銃は正確には小道具の銃ではなく“本物の銃”で、なかに実弾が入っていたことがその後の捜査で明らかになっている。

画像: 事故の現場となった教会。
事故の現場となった教会。
画像: 事故後、警察の事情聴取を受けるアレック・ボールドウィン。
事故後、警察の事情聴取を受けるアレック・ボールドウィン。

FBI(連邦捜査局)が新たに行なった科学捜査の結果、問題の銃は「引き金を引かなければ発射させることができない」と結論づけられたが、アレックは事故の責任はアーマラーと呼ばれる武器係のハンナ・グティエレス・リードと、自身に実弾が入っていない“コールドガン”だと言って銃を渡した助監督のデイブ・ホールズの2名にあると主張。事故発生以来、亡くなったアリナのことを考えない日はないとしたうえで、事故の責任は自分にはないという姿勢を貫いている。

アリナの遺族は、『Rust』の撮影現場で基準違反があったとして、アレックを含む映画の製作陣に対して訴訟を起こしていたが、昨年10月、訴えを取り下げると同時に、アリナの夫マシュー・ハッチンスが『Rust』の製作総指揮を務めることを条件に同映画の撮影再開に同意した。

アレックはなぜ過失致死容疑で訴追された?

アレックが過失致死容疑で訴追された理由について、米CNNの取材に応じたニューメキシコ州サンタフェメアリー・カーマック=アルトワイズ地区検事はこのように説明している。

1. 銃を扱う者は皆、安全を確認する義務がある

「銃を扱う者は皆、人に向けて引き金を引く場合、弾丸を発射して人を殺すようなことがないように確認する義務があります。俳優だからといって特別扱いされることはありません。それがとても重要なことなのです。ここニューメキシコ州では、誰もが法の下に平等です」

2. 撮影現場は安全が確保されていない状態だった

「(『Rust』の)撮影現場は、安全・安心の基準が欠如していました。セットには実弾がありました。誰もちゃんと銃を確認しておらず、一貫した確認作業が行われていませんでした。そして、どういうわけか、アレック・ボールドウィンに渡された銃に(実弾が)装填されたのです。彼もそれを確認しませんでした。彼は自分の安全や周囲の人の安全を確保するために、やるべきことを一切やらず、アリナ・ハッチンスに銃口を向け、引き金を引きました」

3. 事故であっても犯罪でないとはかぎらない

「事故だからといって、犯罪でないとはかぎらないのです。過失致死罪は意図的でない殺人を対象としています。故意でない=意図してやったわけではないということです。殺意がなかったということです。しかし、それ(事故)は起きました。過失以上のものがあったからこそ起きたことです。慎重さを欠いたために、このような事態になったのです」

4. 銃の引き金は間違いなく引かれた

「FBIの研究所は世界でもトップクラスです。(アレックは『引き金を引いていない』と主張しているが)我々は、銃が発射されるには引き金が引かれなければならなかったと確信しています」

5. アレックにはプロデューサーとしての責任がある

「アレックは銃の引き金を引いた俳優としてだけでなく、プロデューサーとしても責任があります。彼には撮影現場の安全性を確認する義務があり、我々の調査では、(死亡事故が起きる前にも)誤射の事故があったことがわかっています」

アレックの訴追を取り下げると検察が発表

現地時間4月20日、ニューメキシコ州の検察当局は「さらなる調査と法医学的分析を必要とする新たな事実が明らかになった」として、2件の過失致死罪で起訴されたアレックの訴追を取り下げることを発表した。

ただし、今回の決定はアレックの刑事責任を免除するものではなく、捜査は継続していることから、その過程で再び訴追される可能性もあるという。なお、武器係のハンナ・グティエレス・リードへの訴追は現時点では取り下げられていない。

検察の発表を受けて、アレックの弁護団は「私たちは、アレック・ボールドウィンに対する訴えを棄却する決定を喜ぶとともに、この痛ましい事故の事実と状況について、適切な調査が行われることを望みます」とコメントを発表。

また、時を同じくしてインスタグラムを更新したアレックは、「私はこの女性に何から何まで恩恵を受けている(ルーク、あなたにも)」と、困難な時期に自分のことを支えてくれた妻のヒラリア・ボールドウィンと弁護士のルーク・ニカス氏に感謝した。(フロントロウ編集部)

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