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昔の恋人に惹かれてしまう……若かりし頃の恋の相手と再び結ばれたカップルたち。

  • 2023.1.12
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実例。愛は永遠に続くものではないかもしれない。でも初恋の思い出はいつまでも心に刻まれたまま、理想の美しい恋として、慈しまれ続ける。もう一度、それをよみがえらせようとする人もいる。

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大人になってから、まるでバックミラーをのぞくように初恋をよみがえらせた人たち。photography: Getty Images

ジャン=マルタンが初恋を語り始めると目が潤む。彼女の名前はエロイーズ。お互い19歳になったばかりだった。マルセイユ沿岸のソルミウの入り江をふたり乗りのバイクで走った時、彼女の太ももが自分の太ももに触れた感覚を思い出す。コルシカ島の自然の中でのキャンプ。真夜中、エクス・アン・プロヴァンスの街中にあるロトンド噴水にふたりで入ったこと。大学時代の3年間を一緒に過ごしたあと、エロイーズはイギリスの大学の奨学金を得た。そしてふたりの関係は終わった。「僕は結婚をし、ふたりの子どもを育て上げました。特に彼女を思い出すことはありませんでした。当時の友人と会って彼女のことが話に出ることがあっても、感傷的になることはなかったのです」とジャン=マルタンは振り返る。

45歳で離婚。女性を誘うのが苦手で、デートをしてもげんなり。半年間そんな状態が続く中、テレワークをしていたある朝、ふと初恋の人の名前を「ググって」みた。すぐに彼女がヒットし、お互いパリ近郊に住んでいることが分かった。そしてエロイーズも離婚をしていた。その後は……?「レストランで食事をしながら、それまでの人生を語り合おうということになりました。でも思いつきで楽しいことをするが大好きな彼女は、前菜を食べ終わったところで切り上げようと提案。200キロも離れたノルマンディー地方のドーヴィルに海の幸を食べにいこうと言ったのです! 結局週末をそこで過ごしました」と20歳の気分の彼は語った。ふたりは今もむつまじく暮らしている。

初恋を忘れることはない。この初めての恋こそ、その後にやってくる恋愛関係を形づくり、恋の物差しとなる。思い出の人と関係を取り戻すことは、妄想に終わってしまうことがほとんど。でも一歩踏み出し、かつての恋を今に再現させる人もいるのだ。

一つの時代を再現させる

過去へのフラッシュバック。そして、そこでの心の高ぶりに打ちのめされたのがジュリエット。地元で開催されたコンサートで彼女はたまたまトムと出くわした。その瞬間、全てがよみがえってきた。「彼が私に微笑みかけた時、彼の頬に現れたえくぼが20歳の頃の思い出をどっとよみがえらせたのです」と42歳で広報担当の彼女は言う。寝室での信じがたいほどの相性。夜更けまでの語り合い。同じ家族感を持っていることも発見。コンサートは完璧な恋物語を復活させたのだった。そしてジュリエットは夫と別れた。

若きころの情熱の再燃は、当時の自分を思い出すきっかけとなる。それは50歳のエティエンヌにとって、なんとも陶然とさせるものだった。「シルヴィといると、若くて、自由で、何にも縛られていなかった頃の自分に戻れるんです。かつて僕を魅惑した彼女の穏やかさや優しさに、再び虜になっていました」

なぜ我々はこのように過去に惹かれるのか? 『Du décodeur amoureux, Autant s'aimer longtemps(原題:恋の解読ーどうせなら長い間愛し合えるように)』(1)の著者である心理学者のイヴ=アレクザンドル・タルマンさんの説明はかなり現実的なものだ。「理由は味気ない、とても平凡なものです。私たちの脳みそはとても合理的に出来ていて、可能な限り働きを減らそうとします。少なくとも、努力をするならそれに値する価値がなくてはならないと考えます。知らない人を魅惑するにはとても大きな労力が必要だし、マッチングアプリで膨大なプロフィールから選択するには、何時間ものリサーチが必要。だから我々の脳みそは、すでに魅了したことのある人に向かうことを選ぶのです。過去に恋愛感情を持てたのなら現在も可能だろう、という考えで」

すなわち、例えばジャン=マルタンが元カノと復縁したいと思うのは、怠け者であるか、少なくとも合理主義的な脳みそのせいなのだ。元カノ自身も離婚経験があったのは運命なのか……統計的なものなのか。フランスでは年間数万件の離婚があり、結婚は平均15年間で幕を閉じる。40~45歳の間の別離が最も多いとInsee(フランス国立統計経済研究所)は発表している。

過去の過ちを繰り返す危険

自分の人生を振り返える時期を迎えると、“後戻り恋愛”に対する意欲が高まる人がいるようだ。自分には運命の人がいるはずだという確信。若い時は心の準備ができていなかったが、それなりの経験を積んでいる今ならうまくいくという思い込み。「昔の恋愛を通して、今より幸せだったと思える時代に自分を閉じ込めてしまう可能性があります。でもその幻想は脳のいたずらでしかないのです。我々は似通った恋愛経験を繰り返す傾向が強いので、過去の恋人とよりを戻したくなることもあるようです」とイブ=アレクザンドル・タルマン先生は言う。同じ過ちを繰り返すこともある。かつてのエティエンヌとシルヴィの関係は、彼の浮気で終った。20年後シルヴィが再登場し、一年間愛し合ったものの、「彼女よりもっと情熱的な人」が現れ、エティエンヌはまたシルヴィに別れを告げた。

過去の恋人とよりを戻す場合、ふたつのパターンがあるとイブ=アレクザンドル・タルマン先生は言う。「人生経験を経て成長し、特に人間関係をマネージする能力が向上した人の場合、うまくいく可能性があります。でもその人が成長していなかった場合は同じ過ちを繰り返す可能性は高く、結果、また傷つくことになるでしょう」

しっかりした基盤を持つ関係を

思い出の美化、妄想の膨らませ過ぎ、これらを警戒するべきだと心理学者は指摘する。「記憶にとって過去はどうでもいいのです。記憶の役目は未来を予測することなのです。記憶は思い出を変えてしまうことがあり、その場合、脳は過去に新たな解釈を与えるのです」

トムとの関係が再開し、興奮が冷めてきたころ、ジュリエットは彼の短所が目につくようになった。「彼の嫉妬深いところや、いろいろなことを後回しにする癖を思い出しました。自分は幻想を追いかけていたということに気付き、こんな過ちを犯した自分をののしりました」と彼女は語った。しかし20歳だった時と比べて彼女は成長していた。再び全てを捨て去るのではなく、関係を新たな視点で捉えることにした。「昔だったら逃げていたでしょう。でも今では、恋愛関係は話し合いと譲り合いによって築き上げていくものだということを理解しています」と言う。現在、二人は体外受精の治療を受けている。「以前、子どもが欲しいのか確信が持てなかったのですが、トムといるとそれは当然のように思えるんです。彼は私のソウルメイトです」。若い頃の恋愛を復活させるには自分を深く見つめ直し、自分へのたくさんの問いかけが必要だとイブ=アレクザンドル・タルマン先生は言う。しかし結局、大事な質問は一つしかないとも言う。「最初の恋愛が最後の恋愛になるほど、お互い十分に成長したかどうか」という問いだ。

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