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「ジョジョの奇妙な冒険」や「ムー」とのコラボも、コロナ禍を乗り越えた「地球の歩き方」の秘策

  • 2023.1.10
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「最強の時間割」Lesson5が配信 (C)TVer
「最強の時間割」Lesson5が配信 (C)TVer

【写真】ラランドの2人と櫻坂46・大園玲がゲストに話を聞く

民放公式テレビ配信サービス・TVer初の完全オリジナル番組「最強の時間割〜若者に本気で伝えたい授業〜」が無料配信中だ。1月6日(金)に配信開始となったLesson5には、コロナ禍で打撃を受けた旅行ガイドブック「地球の歩き方」の宮田崇編集長が講師として登場し、ピンチをチャンスに変える精神を説いた。

コロナ禍で売上95%減。史上最大のピンチをどう乗り越えた?

「最強の時間割 ~若者に本気で伝えたい授業~」は、さまざまなジャンルのトップランナーが特別授業を実施し、ラランドのサーヤとニシダ、櫻坂46のメンバー、そして学生ゲストが参加。トップランナーたちの授業がアーカイブされることで、TVerに「最強の時間割」が完成するというコンセプトの番組だ。

Lesson1、2では、King Gnuの「白日」のミュージックビデオを手がける映像作家のOSRIN、Lesson3、4では、川口春奈とSnow Manの目黒蓮が出演した大人気ドラマ「silent」の村瀬健プロデューサーが講師を務めた。この番組だからこそ聞ける業界人の熱い授業に注目が集まる中、Lesson5に講師として登場したのは「地球の歩き方」の宮田崇編集長だ。

同誌は1979年に創刊された老舗の旅行ガイドブック。約160の国と地域の情報を網羅し、累計発行部数はなんと8000万部を超える。しかし、コロナ禍に突入以降、感染拡大予防の観点から旅行者が激減。それに伴い、減少していく売上をV字回復させた救世主として知られているのが、宮田である。

宮田は同誌の編集に携わりながら、時代の移ろいを目の当たりにしてきた。最初に訪れたピンチは2007年頃。スマートフォンが登場し、誰もが自分で情報を取れる時代に突入したことで、「紙媒体の売上が下がるのでは?」との懸念が広がった。だが、宮田をはじめとした同誌の編集者たちは自らもスマホを取材に活用することで、情報にこれまで以上の深みを持たせたという。

幾度となくピンチをチャンスに変えてきた同社だが、コロナ禍で史上最大のピンチに陥った。売上はコロナ前と比較して95%減。それが1年以上続き、宮田は「記憶がないくらい大変でしたね」と振り返る。

そんな中、宮田たちが乗り出したのは“知識の再編集”。2020年7月には、図鑑シリーズ第1弾「世界244の国と地域」を発売。「地球の歩き方」のリミックス版ともいえる同著には、ガイドブックには載らない小ネタがまとまっている。例えば、「カタール航空ではひとり1羽まで飛行機にハヤブサを持ち込める」というルールが掲載されているが、これはカタール人の約7割が富裕層のシンボルであるハヤブサを飼っているためだ。

東京五輪の開会式のチケットが外れ、自宅のテレビで観る人が楽しめる本を。そんな思いにより作られた1冊だという。

ボケたつもりが……サーヤの企画が好評

他にも荒木飛呂彦による大人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」や月刊誌「ムー」など、異ジャンルとのコラボでコロナ禍を打破してきた同社。様々な企画が生まれる編集室のスタッフは12人と意外にも少ない。だからこそ、「全員プロデューサーでひとり10本以上担当している」と宮田は語る。

それに大きな関心を示すのは、今回の講義にゲストとして参加した学生たちだ。せっかくなので、彼らも「地球の歩き方」の新企画を考え、編集長である宮田にプレゼンしてみることに。中には将来、編集の仕事に就きたいと考えている学生もいて、「(内容が)本当に良かったら発行します」という宮田の言葉にテンションが上がる様子。

学生たちからは、金運スポットや各地の願掛け方法を紹介する「世界の金運アップスポット」、世界各国の衣装を紹介するとともに、その国の美に対する価値観などについて記載した「世界の伝統衣装&美しい人図鑑」といった新鮮な企画が飛び出した。

特に後者については、「可能であればすぐにでも出したい」と前向きな姿勢を示した宮田。これまでも伝統衣装をテーマにした本の企画は出てきたが、データから売れないと判断したそう。だが、今回はそこにプラスの要素が入っており、宮田は「諦めようとした扉を開けた」と企画を絶賛した。

会話が最も盛り上がったのは、サーヤの企画。居抜きの建物を見るとテンションが上がるというサーヤは、以前の設備や内装がそのまま使われている建物を紹介するガイドブックを提案した。

実は2022年夏頃、茨城県常総市にある、ガソリンスタンドだった場所をそのまま使用したラーメン屋「天下一品」水海道店がSNSで話題に。「ボケたんでしょうけど、これがあったか!って見てニヤッとしました」と宮田に言われたサーヤは照れ笑いを浮かべていた。

ラランド・サーヤ (C)TVer
ラランド・サーヤ (C)TVer

宮田編集長の考える「かっこいい大人」とは

ラランド (C)TVer
ラランド (C)TVer

ニシダの「ふざけたアイデアでもいいのか」という質問に、宮田は「可能性って止めるものではないので、思いついたことは口にすべきですし、私も積極的にボケる」と答えた。トップである宮田が誰かに怒られるまでふざけると、次の週に他のメンバーが持ってくるアイデアが柔らかくなるのだという。

ボツになったネタも数知れず。例えば、宮田は「世界のゴリラ図鑑」の企画を出したが、ゴリラは2カ国にしか生息していないため、即座にボツを食らったそうだ。

他にも「世界の鉱石・宝石」など、すでに編集物として確立されているものはNGとなる。しかし、ボツが集まればリミックス版として発行できる可能性もあり、宮田は「企画ってその時はボツでも半年後は分からない」と語った。

野球が大好きだという宮田は、先に4勝した球団が日本一の称号を得ることができる日本シリーズを例に出す。強いチームは4勝0敗で勝つが、宮田は4勝3敗のチームに興味をそそられるという。

「負けた試合も含めて計7試合できれば、7試合観客の人に夢を与えたことになる」

負けてもいいから、やってみる。それが、宮田の考えるかっこいい大人だ。

■文/苫とり子

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