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「人付き合いに感じる疲れが半端ない…」それでも人脈を増やしたい人に経営学者からの絶妙なアドバイス

  • 2022.12.6
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人付き合いは苦手だが人脈を増やしたい。どうすればいいか。経営学者の入山章栄さんは「経営学の視点から見た場合、人脈には大きく分けて2つのタイプがあります。タイプを見分け、付き合い方を変えるのがポイントなんです」という――。

※本稿は、さわぐちけいすけ、入山章栄『経営理論をガチであてはめてみたら自分のちょっとした努力って間違ってなかった』(日経BP)の一部を再編集したものです。

心のモヤモヤを言語化できるか

自分が何をしたいのか、自分でも分からないので焦ってしまう……。みなさんも将来のキャリアについて焦ったり、悩んだりすることがあるかもしれません。

僕はこの「私は何をやりたいの? 病」の最大のポイントは「言語化」にあると思っています。人はそもそも豊かな感覚を持っています。本当は多くのみなさんに、何かやりたいことへの思い、なんとなく「いいな」と感じていることへの感覚が心の中にあるはずです。ただ、それが言語化されていないだけのことも多いんですよね。

そこで紹介したいのが、経営学でも重視される「形式知と暗黙知」です。これは、ハンガリー出身の学者、マイケル・ポランニーが提唱したもので、この視点を経営理論に昇華させたのが、一橋大学名誉教授の野中郁次郎先生の知識創造理論、別名「SECIモデル」です。この理論は世界的に有名なんです。

誰かと語り合う「知的コンバット」の効用

まず、「形式知」とは言語化、記号化された知のことです。他方の「暗黙知」とは言語、文章、記号などの表現が難しい、なんとなくの感情・感覚・モヤモヤを指します。心の奥底に眠る、でも言葉になっていない「自分のやりたいこと」なんかは、まさに暗黙知ですね。人が持っている暗黙知は、形式知よりはるかに豊かであるとされています。

つまり、「私は何をやりたいの? 病」を克服するには、自分のなかに眠っている「やりたい」「好き」「自分に向いていそう」などのなんとなくの感覚=暗黙知を言語化して、形式知に変える必要がある、ということです。

では、具体的にみなさんのなかの感覚をどうやって言語化すればいいのでしょう。野中先生は、暗黙知を形式知化するには、1人で悶々と考えるのではなく、誰かと向き合ってアツく議論する「知的コンバット」が重要とおっしゃっています。僕もその通りだと思うのですが、今のご時世ではアツい語りだけでなく、お酒でも飲みながら友人や上司と夜通し語り合う「ゆるゆる知的コンバット」でも効果があるかもしれない、とも考えています。

打ち合せ中のビジネスパーソン
※写真はイメージです
普段深く話したことがない人と語り合う

ここからは僕の私見でもあるのですが、自分のやりたいことがうまく形式知化できない理由は、主に2つあります。1つは「ピッタリくる言葉(=形式知)を知らない」、2つ目は「ピッタリくる言葉がこの世に存在しない」ということです。以下で、それぞれ対策を説明しましょう。

1つ目の「ピッタリくる言葉を知らない」場合は、自分のやりたいことを言語化してくれる言葉がこの世にあるのに、まだ自分の知識不足で知らない状態です。なので、このときに大事なのは、「なるべく会ったことがない人、普段深く話したことがない人と語り合う」ことです。まさに、前に解説した「知の探索」です。

僕は、この好例を知っています。社会的活動を支援するクラウドファンディングサービス会社READYFORの代表取締役で、いま注目されている米良はるかさんという起業家をご存じでしょうか。実は彼女も、学生の頃は自分のやりたいことが見つからず、悶々としていたのだそうです。ところが、たまたま潜り込んだ東京大学の研究会で指導教授の先生に思いをぶちまけたところ、「君がなりたいのは起業家なんだよ」と言われたそうです。

そこで「起業家」という言葉に初めて出合った米良さんは、雷に打たれたように、「そうだ、私がやりたいのは起業なんだ!」とビタっときたそうです。まさに米良さんが先生と語り合った結果、その言葉で彼女の暗黙知が形式知化されたんですね。

カンファレンスで拍手をする女性の手元
※写真はイメージです
言葉がなければつくってしまえばいい

では、2つ目の「ピッタリくる言葉がこの世に存在しない」場合は、どうでしょう。この場合は、そもそも言葉がまだこの世にないのだから、新しい言葉をつくってしまえばいいんです。

新しい言葉をつくるのに重要なのは、「既存の言葉と、別の既存の言葉を新しく組み合わせる」ことです。例えば、「医療事務」と「ライター」を掛け合わせて、「医事ライター」という、ある意味で新しい職業ジャンルをつくってしまうわけです。

一見言葉遊びのようですが、これがすごく大事なんです。僕自身、経営学者でありながら、他にもいろいろなことをやっているので、言葉を組み合わせて「子育て経営学者」とか「キングダム経営学者」など新しい肩書きの言葉をつくることで、仕事を増やしたりしていますよ。

人付き合い疲れから脱却するには

人付き合いって「面倒だな~」って感じること、ありますよね。でも、人脈が大事なのも確かですよね。経営学では人脈から得られるメリットを総称して、「ソーシャルキャピタル」(Social Capital/社会資本)と呼びます。人にとって金融資本、人的資本に続く、「第3の資本」ともいわれています。人脈は仕事にもキャリアにも重要です。その意味で、飲み会にはやはりそれなりに出ておいたほうがよさそうです。

さわぐちけいすけ、入山章栄『経営理論をガチであてはめてみたら自分のちょっとした努力って間違ってなかった』(日経BP)
さわぐちけいすけ、入山章栄『経営理論をガチであてはめてみたら自分のちょっとした努力って間違ってなかった』(日経BP)

ただし、経営学の視点から見た場合、人脈には大きく分けて2つのタイプがあります。タイプを見分け、飲み会での付き合い方を変えるのがポイントなんです。

まず1つは、「ボンディング型のソーシャルキャピタル」です。ボンディング型は、比較的少人数で、密度が高く閉じたネットワーク構造のことを指します。メンバー同士が緊密につながって、ある意味で相互監視の状態にあるので、「合理的な意味での信頼関係」を築いています。この手のネットワークでは、自分勝手な振る舞いはしにくいです。

例えばメンバー同士の内輪話を外に漏らすなどしたら、昔でいう「村八分」状態にされかねません。これってちょっとウザいですよね。でもこの牽制機能があるから、互いに「ここだけの話」ができるわけです。仕事やキャリアや人間関係を考える上でも、「ここだけの話」を得るのはやはり大事ですよね。ですので僕のオススメは、ボンディング型の人脈の集まりには「たまに参加すること」です。毎月参加はちょっとキツイかもしれませんよね。でも、3カ月に1回くらいなら顔を出せるのではないでしょうか。「ちゃんと来てるよ、仲間だよ」とみんなを安心させるわけです。

異業種交流会は30分で帰る

もう1つの人脈のタイプは、「ブリッジング型のソーシャルキャピタル」です。さまざまな人と、薄く、弱く、でも手広くつながる関係性です。異業種交流パーティーなんかが典型ですね。とにかく人はそもそも認知がとても狭い。ですから、常に自分の認知を超えるようなサーチ・知の探索がなくては、人は成長しません。ですから、こういう一見自分とは畑違いのような人たちと交流するのは、とても重要ではあるんです。

ただし、この手の人間関係は、お互いの関係が希薄なので、スカスカ感はハンパありません。よく知らない人と表面的な会話ばかりするので気疲れしてしまう人もいるでしょう。

そこでオススメの方法は、異業種交流会のようなブリッジング型の人脈に関わるときは、「なるべく顔を出すが30分で帰る」です。一通り名刺交換したら、さっさと帰っちゃいましょう。解散時まで付き合う必要はありません。あとは場合に応じて、メールやLINEなどでフォローすればいいわけです。

名刺交換
※写真はイメージです

というわけで、「ネットワークは使い分けが重要」と心得れば、気疲れもきっと少しは克服できるのではないでしょうか。経営学では、人のキャリア形成に人脈がとても大事なことが、すでに多くの研究で示されています。ぜひ疲れないように、うまく人脈を活用してみてください。

入山 章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学大学院経営管理研究科教授
1972年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、同大学院修士課程修了。三菱総合研究所へ入所。2008年、米ピッツバーグ大学経営大学院でPh.D.取得。その後、米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。19年より現職。専門は経営戦略論および国際経営論。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』(日経BP社)、『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)他

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