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70代の血圧の数値が子どもと同じに!? 「100歳まで健康に生きる」ための食事法とは

  • 2022.11.20
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「人生100年時代」という言葉が浸透している。100歳まで生きるのが当たり前になる――そんなこれからの時代、せっかく長生きするなら健康に生きたい。でも、100歳まで健康でいるなんて可能なのだろうか?

『科学的エビデンスにもとづく 100歳まで健康に生きるための25のメソッド』(東京大学出版会)は、シドニー大学医学・健康栄養学部教授のルイージ・フォンタナさんによる、老化を遅らせ健康を保つための科学的なメソッドを紹介した1冊だ。本書のメソッドを実践すれば、100歳まで若々しく生きることも夢ではないかもしれない。

サルが、ヒト年齢換算で120歳以上生きた!

ここでは本書から、長寿を叶える「食事」についてご紹介しよう。フォンタナさんは、老化を遅らせ、寿命を延ばす食事とは、「低栄養状態とならない程度にエネルギー摂取量を制限すること」だと断言している。どういうことだろうか。

本書によると、マウスやサルの実験で、ビタミンやミネラルなどが不足しないよう注意しながらエネルギー摂取量を減らした場合、その減少量に比例して動物の寿命が延びることがわかっているそうだ。ヒトの年齢に換算して、なんと120歳以上生きた場合もある。

さらにフォンタナさんの臨床研究では、ヒトにおいてもエネルギー摂取量を減らすと健康にいいことがわかっている。エネルギー摂取量を20~30%減らすと、典型的な欧米食を摂取していた人たちに現れていたさまざまな心血管系疾患の発症リスクが劇的に改善したのだそうだ。70代後半の人の血圧の数値がほぼ子どもと同じくらいになる例まであったという。

「腹八分目」は科学的に正しい

ただし、適切にエネルギー摂取量を制限するには、栄養計算の知識が必要になる。方法を誤ると月経不順や骨密度低下などの悪影響を及ぼすため、健康のためには、厳しいエネルギー摂取制限をする必要は必ずしもないという。

測定なしでエネルギー摂取量をコントロールするには、食品自体に気をつけることが重要だ。フォンタナさんらの研究で明らかになっているのは、「エネルギー摂取量をコントロールし、体重を減らし、さらに代謝機能を改善するための簡便かつ最善の方法は、食物繊維・植物繊維を豊富に含む食品を多く摂取するというもの」であるということだ。

精白パン、スイーツ、糖類入りソフトドリンク、白米、加工食品などを避け、全粒穀物、全粒粉パン、豆類、ナッツ類、野菜類を摂るようフォンタナさんは勧めている。さらに肉類は頻度を減らし、かわりに魚を食べるとよいという。フォンタナさんが勧めているのはまさに"健康的な食事"というイメージの食品だが、そこには「エネルギー摂取量を適切に減らすため」という、科学的な根拠があるのだ。

さらにフォンタナさんは、エネルギー摂取量を適切に減らす方法として、日本の「腹八分目」という言葉も紹介している。「腹八分目」を意識すれば、細かく測定することなくエネルギー摂取量を約20%減らすことができる。

本書では他にも、BMIやウエスト周囲長がなぜ重要なのか? ということや、健康を保つための食事や運動、さらに脳の老化を予防するトレーニングや、健康的な人生を手助けするマインドフルネス瞑想まで、健康のためのメソッドを幅広く紹介している。内容は欧米圏の生活に準じているため、付録資料には「日本人の基準値と診断基準」が収録されている。

全てが科学的に裏付けられた、本書のメソッド。健康長寿をめざす人のバイブルになる1冊だ。

【目次より】
はじめに
訳者まえがき

第I部 英知のはじまり
第1章 人生を楽しむ準備はできているか?
第2章 健康的な百寿者──健康長寿の探求
第3章 健康寿命および老化のメカニズム

第II部 自身の身体を治す
第4章 健康のための栄養科学
第5章 エネルギー摂取制限と絶食による長寿効果
第6章 子どもたちの健康にとって必要なこと
第7章 食事の質の重要性

第III部 地中海式食から健康長寿食へ
第8章 地中海式食──美味しさと健康が出会う場所
第9章 現代の健康長寿食
第10章 摂取すべきではない食品および摂取量を大幅に削減すべき食品

第IV部 日々の治療薬としての身体活動
──体力と健康を保持するための運動トレーニングの科学的根拠
第11章 身体活動によって健康状態を最良なものにする
第12章 有酸素性運動による有益な効果
第13章 有酸素性トレーニング
──どのようにトレーニングを始め、その質を改善するか
第14章 骨格筋と骨を強化する──レジスタンストレーニングの科学
第15章 姿勢、平衡感覚および柔軟性──欠かすことのできない運動
第16章 ハタ・ヨガ、太極拳──西洋と東洋の融合

第V部 予防
第17章 健康であり続けるための予防策を講じる
第18章 健康診断の重要性

第VI部 私たちの心
──感性、直観力、創造力を養うための方法とその科学的根拠
第19章 心を豊かにし、頭脳を鍛える
第20章 休息と睡眠の質
第21章 マインドフルネス瞑想
──今起きていることに集中し、現実を受け入れる方法を学ぶ
第22章 家族、幸福感、不安・恐れのない未来

第VII部 私たちの世界
第23章 健康的で持続可能な生活環境
第24章 病気の原因としての環境汚染
第25章 未来・将来を守る

読者へのメッセージ

付録 計測できるものは改善できる──自身の状況を追跡調査する

付録資料 日本人の基準値と診断基準

■著:ルイージ・フォンタナさん
シドニー大学医学・健康栄養学部教授。

■翻訳:寺田新(てらだ・しん)さん
東京大学大学院総合文化研究科准教授。

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