1. トップ
  2. レシピ
  3. 韓国、タイ、台湾も…“アジアホラー”がアツい! 大島育宙オススメ4作品

韓国、タイ、台湾も…“アジアホラー”がアツい! 大島育宙オススメ4作品

  • 2022.11.14
  • 4406 views

ananトレンド大賞2022“CULTURE”。ここでは、アジアの文化背景を生かした高品質なホラーが多く誕生した“アジアホラー”に注目。お笑い芸人、YouTuberの大島育宙さんが解説します。

アジアホラー

日本だけでなく韓国やタイ、台湾など、近年ますます盛り上がってきているアジア発のホラー。今年の春には、台湾映画として2022年最高の興行収入を記録している『呪詛』が一躍話題に。Netflixで全世界に配信されたということもあり、その圧倒的な影響力によって普段ホラーを観ない層にまでその人気が伝播していった。

「『呪詛』や『哭悲/THE SADNESS』『返校 言葉が消えた日』を生んだ台湾では、1962年に金馬奨という賞が作られたのをきっかけに映画業界がぐんと盛り上がっていきました。当初はアクションの多い任侠映画が中心だったようですが、1970年代に日本とアメリカとの交流が途絶えたことで海外映画に触れる機会がなくなり、その反動で1980年代には“台湾ニューシネマ”という低予算で高品質な作品を作るムーブメントが生まれました。2000年代以降には行政が映画制作に潤沢な予算を使うという施策を打ち出し、そこから言論も自由化されていく中で、より多様な作品が作られるように。『呪詛』は配信でNetflixとタッグを組むという新しい方法に挑戦し、『哭悲/THE SADNESS』はカナダ出身の監督が制作。『返校 言葉が消えた日』は日本文化好きの監督が台湾の“白色テロ時代”を歴史エンタメホラーとして昇華しています。それぞれ毛色は違いますが、どれも国を挙げて映画制作を頑張ったおかげで生まれたと思うと羨ましい話ですね」

そんな中、大島さんが“今年のベストアジアホラー”だと語るのは『女神の継承』。タイのホラー映画にたびたび登場する、タイ東北部にあるイサーン地方を舞台にした物語だ。

「年間20~30本ほどしか映画を制作しない時期もあったタイでは、作品数が少ない分、一つずつ丁寧に作り上げている印象があります。なかでも怪奇映画には特に力を入れていて、2000年代頃からおもしろいホラー映画が連続的に発表されていました。そのため、タイのホラー映画ブームは今に始まったものではないといえるかもしれません。今回の『女神の継承』は『哭声/コクソン』で知られるナ・ホンジン監督が手がけているのですが、映画を世界へ届けるためのノウハウがある韓国の映画制作チームが参加したこともあって、よりいっそう海外から注目されやすかったのかなと思います」

『リング』や『呪怨』など、日本のホラー映画のヒットが続いた平成期を経て、アジアの他の国・地域の作品がこれまで以上に数多く触れられるようになった今。ここ数年に公開された映画を観ていると、かつてのJホラーからの影響を感じる点も多くある。

「個人的には、日本のホラーは昔ほど海外へ通用しなくなってきていて、今はリベンジの時期だと考えています。Netflixが2020年に制作した『呪怨:呪いの家』もとてもおもしろかったけれど、海外でヒットしたかというとそうでもないんですよね。しかし、やはり平成のJホラーは今なお偉大で、『リング』や『呪怨』に影響を受けた世代が“自分がこの国でああいう映画を作るならどうしよう”と考えて作ったのが、近年のアジアホラーなのかなと思います。アジアと欧米での違いでいうと、まず霊というものに対しての解釈が全然違うという点も重要です。英語圏には基本的にゴーストとモンスターしか存在しませんが、アジアには妖怪やお化け、精霊などがいて、これらは英語で表現しにくいアジア独自の存在です。タイの“ピー信仰”や台湾の“道教”など、同じアジアに暮らす私たちにも馴染みのない文化もあるので、アジア諸外国のホラーは日本人にとっては少し新鮮なものとして映るのではないでしょうか。ちなみに一神教が強いエジプトやイランなどのイスラム圏ではホラー映画が作られず、中国やベトナムなどの社会主義国でも規制の対象となりがちのようです。中国の莫大な資本を使ってホラー映画を作ったらどうなるんだろう…って考えるといろんな想像が膨らみますけどね」

また、ホラー映画は他のジャンルに比べて低予算で制作しやすいため、経済危機に陥ったあとに多く作られるという説もあるのだとか。

「日本でも、バブル崩壊後にたくさんのJホラーがヒットしましたし、都市伝説も流行りましたよね。もしかすると、ここ数年のアジアホラーブームも、コロナをきっかけに世界的に経済が落ち込んだことが関係しているのかもしれません。景気が悪いと、ホラーが流行るっていう(笑)。そう考えると、コロナ禍の影響を受けたおもしろい作品がこれからも続々と出てきそうで楽しみですね」

『女神の継承』
タイ・韓国合作の『女神の継承』。『哭声/コクソン』のナ・ホンジン監督が原案・プロデュースを担当し話題に。©2021 SHOWBOX AND NORTHERN CROSS ALL RIGHTS RESERVED.

『哭悲/THE SADNESS』
人間の凶暴性を助長するウイルスが蔓延する台湾を舞台にしたパニックホラー『哭悲/THE SADNESS』。『哭悲/THE SADNESS』Blu‐ray&DVD 12月23日(金)発売 発売元:クロックワークス 販売元:ハピネット・メディアマーケティング ©2021 Machi Xcelsior StudiosLtd. All Rights Reserved.

『返校 言葉が消えた日』
台湾の大ヒットホラーゲーム『返校』を映画化。国民党政権下の白色テロ時代を題材にしたダークミステリー。DVD発売中&デジタル配信中 発売・販売元:ツイン ©1 PRODUCTION FILM CO. ALL RIGHTS RESERVED.

『呪詛』
Netflixの配給で今年公開された『呪詛』。大きな反響を受けて、続編の制作もすでに決定しているのだとか。Netflix映画『呪詛』独占配信中

おおしま・やすおき お笑い芸人、YouTuber。東京大学法学部卒業。2016年にお笑いコンビ「XXCLUB」でデビュー。YouTubeチャンネル「【映画・ドラマ考察】の大島育宙」で映像作品のレビューや考察を発信している。

※『anan』2022年11月16日号より。イラスト・武田星良 取材、文・飯田ネオ 大場桃果 菅原良美(akaoni)

(by anan編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる