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『うえへまいりまぁす』【今日の絵本だより 第330回】

  • 2022.11.11
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kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。 こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『うえへまいりまぁす』 長谷川義史/作・絵 PHP研究所 1430円

11月10日は、エレベーターの日。 1890年(明治23年)のこの日、東京・浅草の12階建て高層建築「凌雲閣」で、日本初の電動式エレベーターが一般公開されました。 「雲を凌ぐほど高い」凌雲閣は当時「日本のエッフェル塔」とも呼ばれ、エレベーターという機械の珍しさもあって、連日多くの人々でにぎわったそうです。

今ではすっかり日常に根づいたエレベーターですが、扉が閉じて箱がスーッと上がり、フッと止まって扉が開くと、目の前に別の景色が現れるあの瞬間は、やはり不思議でワクワクするもの。 そんなエレベーターの、他の乗り物とは違う特別感が楽しめる絵本がこちら。 『うえへまいりまぁす』です。

今日は、ぼくとおとうさんとおかあさんの3人で、デパートでお買い物。 エレベーター乗り場で、チーン。 「うえへまいりまぁす…。」 エレベーターが昇って、 「2かい ふじんふくうりばで ございまぁす。」 おかあさんは、花模様の水着を買いました。 3人でまたエレベーターに乗って、チーン。 「5かい しんしふくうりばで ございまぁす。」 おとうさんは、パンダ柄のパンツを買いました。 またまたエレベーターに乗って、チーン。 「6かい おもちゃうりばで ございまぁす。」 ぼくは、水色と黄色の車を買いました。

文字だけで書くとごく普通の風景なのですが、そこはさすが長谷川義史さん。 絵本だからこそ画面に忍ばせられる面白さが、エレベーターが上に上がるたびに、じわじわと増していきます。 45階のおすもう売場、91階の忍者売場と、売場はどんどん愉快に、にぎやかに。 459階、そして最上階では、見たことのないスペシャルな景色が広がります。 約20年前の作品ですが、今読んでも新鮮でおかしくて、画面のすみずみまで「こんなところに、こんなものが」というお楽しみが詰まった、サービス精神いっぱいの一冊。 久々に読み返して、これから初めて読む人がうらやましくなりました。 底抜けに楽しいエレベーター体験、ぜひ親子でどうぞ。

選書・文 原陽子さん はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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