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『わたしのゆたんぽ』【今日の絵本だより 第329回】

  • 2022.11.6
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kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。 こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『わたしのゆたんぽ』 きたむらさとし/絵・文 偕成社 1320円

11月7日は、立冬。 暦の上では冬の始まりの日。 その立冬は、湯たんぽの日でもあります。 室町時代からの歴史を持つ湯たんぽを、より多くの人に広めるため、湯たんぽの製造販売元・タンゲ化学工業株式会社が制定。 日付は、湯たんぽの温かさがうれしくなる立冬としました。 そんな湯たんぽの日にはこちらの絵本、『わたしのゆたんぽ』はいかがでしょうか。

「わたしは ゆたんぽが だいすき。」 お湯を入れてもらったゆたんぽを手にして、うれしそうにふとんに向かう女の子。 「でも、ゆたんぽは わたしのこと あんまり すきじゃないのかも。」 わたしの冷たい足を嫌って逃げるので、わたしの足とゆたんぽは、毎晩激しい攻防戦。 ある晩、いつにも増して落ち着きのないゆたんぽは、ついにふとんから勢いよく逃げ出して、窓の外へ。 「こら、 おまちなさい!」 わたしの足はふとんからぐーんと伸びて、逃げるゆたんぽを追いかけます。 ゆたんぽは空を駆け、摩天楼を抜け、ジャングルを飛び越え、ついに宇宙へと。 わたしの足だって、あきらめません。 どこまでもどこまでも追いかけます。 壮大な追いかけっこの末に、はるか宇宙の彼方、銀河のかたすみの小さな惑星でゆたんぽを捕まえたわたしは、 「ゆたんぽ、どうだ、 まいったか!」 さすがのゆたんぽもついに降参、と思ったら……!?

ほっこり懐かしい雰囲気の表紙からは予想もつかない、ダイナミックな大冒険。 勇ましくてパワフルなのに、「ポチャロ」「チョポン」「ポチョル」と、どこかせつなげなゆたんぽの声(?)もいい味なのです。 ほっこりのどかな空気と、どこまでも続くドキドキが同居する、ゆえに繰り返し読みたくなる、不思議な魅力の一冊です。

選書・文 原陽子さん はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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