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リスクは?原因は?予防は?妊娠糖尿病について医師に聞きました

  • 2022.10.24
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妊娠にはトラブルがつきもの。今のうちに知識を身につけておきたいですよね。今回は、妊娠糖尿病について「たいや内科クリニック」院長の加藤大也先生に教えてもらいました。

妊娠糖尿病とはどのような病気でしょうか?

妊娠前に糖尿病の診断を受けていない女性で、妊娠中に初めて指摘された糖代謝異常をいいます。妊娠糖尿病は典型的な自覚症状はなく、妊娠中は体にさまざまな変化が起こるため、気付きにくくなっています。そのため、尿検査や血液検査が早期発見に繋がります。また妊娠糖尿病は、妊娠中の病気の中でも罹患率が高く、妊娠全体の約7〜9%が診断を受けているといわれており、決して珍しい病気ではありません。妊娠糖尿病になり、血糖の管理が不十分で血糖値が高くなると、お母さんと共に赤ちゃんにさまざまな合併症を引き起こしてしまうことがあります。一方で、きちんと早期に診断して治療を行えば、合併症のリスクを防ぐことができます。できるだけ早期に確実に見つけるために、妊娠初期(初診時または10週前後)と中期(妊娠24~28週)にスクリーニングの血糖検査を行い、陽性であればブドウ糖負荷試験を実施しましょう。

妊娠糖尿病になる原因を教えてください

通常食べものは消化・吸収され、ブドウ糖となり血液中に入ります。血液中のブドウ糖(血糖)は、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンにより全身の細胞に取り込まれます。インスリンによって血糖値は下がり、全身の臓器では、ブドウ糖をエネルギーとして利用したり、一部は体内に蓄えられたりします。妊娠すると胎盤からインスリンのはたらきを抑えるようなホルモンが分泌されるため、インスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)が強まり、血糖値が上昇しやすくなります。通常の妊婦さんの場合、すい臓からインスリンを多く分泌して、血糖値を上げないように調節できますが、元々インスリン分泌が少ない方や、肥満がありインスリン抵抗性が強い妊婦さんの場合は、血糖が上昇してしまいます。

妊娠糖尿病になるとどういったリスクがあるのでしょうか?

妊娠中にお母さんの血糖値が高い状態でいると、お母さんの血液中のブドウ糖が胎盤を通って、お腹の赤ちゃんに過剰に運ばれます。赤ちゃんは自分でインスリンを分泌しますが、インスリンは成長ホルモンでもあるため、多すぎると赤ちゃんが成長しすぎて巨大児になります。またお母さんの血糖が高い状態により、お母さんと共におなかの中の赤ちゃんも高血糖になり、以下のさまざまな合併症が起こる危険性があります。

妊娠糖尿病が引き起こすお母さんに起こる病気は、

・妊娠高血圧症候群
・流産
・早産
・羊水過多
・膀胱炎、腎盂炎などの感染症
・血管障害
・網膜症
・脱水、意識障害、昏睡、ショック症状を引き起こすケトアシドーシス(急性代謝異常)

などが挙げられます。

妊娠糖尿病が引き起こす赤ちゃんに起こる病気は、

・巨大児
・子宮内胎児脂肪
・新生児低血糖
・新生児ピルピリン血症
・低カルシウム血症
・呼吸窮迫症候群
・先天奇形
・発育遅延
・心臓の肥大
・多血症
・電解質異常
・黄疸

などが挙げられます。また、妊娠糖尿病のお母さんから生まれた赤ちゃんは小児期から成人期にかけて肥満体質になりやすい傾向にあり、メタボリックシンドロームの罹患率も高まります。しかし妊娠糖尿病は、比較的血糖コントロールが行いやすいため、適切な血糖コントロールを行えば、上記のような合併症を防ぐことができます。

妊娠糖尿病になりやすい人の特徴を教えてください

妊娠糖尿病は誰にでも起こり得る病気ですが、その中でも特に妊娠糖尿病になりやすい体質を持つ人がいます。以下の項目に1つでも当てはまる場合は、特に注意が必要です。

・妊娠前から肥満体質(BMI 25以上)の人
・妊娠してから急激に体重が増えた人
・35歳以上の人
・家族(特に両親や祖父母)に糖尿病患者がいる人
・自分自身が巨大児として生まれた人
・現在妊娠高血圧症候群に罹患している、または既往歴がある人
・原因不明の流産・早産・死産を経験した人
・先天性奇形児の分娩歴がある人

上記の項目に当てはまる人全てが妊娠糖尿病になる訳ではありませんが、当てはまる場合は積極的にスクリーニングを受けるようにしましょう。

妊娠糖尿病の予防方法を教えてください

妊娠糖尿病の予防は、栄養バランスのとれた食生活、適度な運動と適切な体重管理がとても大切です。

食生活ですが、栄養のバランスを気にしながら食事を摂ることが重要です。また血糖値を上げやすい食べ物は、妊娠糖尿病のリスクが上昇するため注意が必要です。具体的には、ご飯やパンなどが多く含む炭水化物、アイス、ジュースなど糖分を多く含む物、ソーセージ・ベーコンなどの加工肉など動物性タンパク質を過剰に摂取すると、妊娠糖尿病のリスクが上昇すると報告されています。

一方、血糖値を上げにくい食べ物は、妊娠糖尿病のリスクを予防すると報告されています。妊娠糖尿病を予防する食べ物では、野菜や植物性タンパク質です。 植物性タンパク質は大豆類などが多く含まれています。食物繊維を含むきのこ類や海藻類は腹持ちが良く、妊娠糖尿病の改善に適しています。医師や栄養士に食事指導を一度しっかりと受けることをおすすめします。

また産後に母乳で育てますと、お母さんも赤ちゃんも将来、糖尿病になる頻度が減ることが知られていますので母乳栄養を心がけましょう。

適度な運動ですが、安定期に入って医師に運動を制限されていなければ、積極的に体を動かすように心がけましょう。食事への配慮と共に適度な運動をすることで妊娠糖尿病のリスクを低くすることができます。ただし、全力疾走や飛んだり跳ねたりという激しい運動は控えてください。おすすめの運動は、ウォーキングです。マタニティヨガや水泳など、妊婦のための運動教室に通うのもおすすめです。激しい運動は避け、出来るだけ日常生活の中でも積極的に体を動かす工夫をしましょう。

適正な体重管理は、妊娠糖尿病予防と出産リスクの軽減につながります。体重が急激に増えていないかを確認することが重要です。太りすぎ・急激な体重増加には注意が必要です。しかしお母さんの体重増加が少なすぎると、赤ちゃんの発育が不十分になったり、早産の原因となりますので注意が必要です。最近、出生時の体重が軽い赤ちゃん(低出生体重児)が将来のメタボリックシンドロームの原因の一つになることが明らかとなってきています。

適正な体重管理をすることが妊娠糖尿病を防ぐだけでなく、健康な赤ちゃんを産むことに繋がります。妊婦検診は必ず受診し、適正な体重管理をきちんとチェックしてもらいましょう。

教えてくれたのは

出典: 美人百花.com

たいや内科クリニック院長 加藤大也(かとう たいや)先生

1997年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、同大学院医学研究科内分泌・代謝内科学修了。2003年4月から同大学医学部内分泌・代謝内科助手を務める。2005年4月、JA愛知厚生連加茂病院(現 JA愛知厚生連豊田厚生病院)内分泌代謝科医長に就任。内分泌代謝科病棟部長などを経て2022年5月、たいや内科クリニックを開院。糖尿病、生活習慣病及び甲状腺疾患を中心に、専門スタッフと共に、患者さんお一人おひとりに見合ったテーラーメイドの治療を行っています。藤田医科大学医学部客員講師、医学博士、日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医、糖尿病研修指導医、日本甲状腺学会認定、甲状腺専門医。

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