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12星座占いは一つの「物語」になっていること、知っていますか。

  • 2022.10.6
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あなたは、占いを信じているだろうか。

占いなんてでたらめだと思う人もいるかもしれない。120万部を超えるベストセラー「12 星座シリーズ」(WAVE 出版)の著者・石井ゆかりさんは、星占いを専門にしながらも、「占いは、社会的に『アリか、ナシか』と言えば、『ナシ』である」と言う。

占いは科学ではない。占い=統計学だという認識もあるが、実際は統計上の根拠はないそうだ。では、占いとは何なのだろうか?

石井さんの新著『星占い的思考』(講談社)は、文芸誌「群像」で2年にわたって連載した内容がもとになっている。本書は、石井さんが接してきた文学作品の一節をきっかけに、各星座の特徴を文学的に綴る構成になっている。本書を読むと、「星占い」が科学よりもむしろ「文学」にずっと近いことがよくわかる。

「星占い」と「文学」の共通点とは......

なぜ星占いは文学との親和性があるのか。それは、星占いも文学も「象徴」で成り立っているからだ。星占いは、「この人は○○座だから~」と、星座のイメージを「象徴」にして人物や出来事を解釈する(決して理屈はないから「理解」ではなく、あくまでも一つの「解釈」だ)。文学にも、たとえば白雪姫の女王の鏡は女王の本心の象徴なのでは? いやいや、鏡は実は女王の夫で、白雪姫の父親の象徴なのでは? というように、象徴的解釈がなされるし、そこに正解はない。

根拠や正解のないものは、社会的には「ナシ」「正しくない」とされる。しかし、人の心が星占いや文学のロマンに惹かれるのもまた事実ではないだろうか。だからこそ石井さんは、文学のフィールドで星占いを語るという試みをしたのだ。

12星座は互いに繋がっている

12星座は、牡羊座から魚座までの旅程である。星々は(イレギュラーもあるが)12星座を順々に進んでいく。
(「水瓶座 ― 友愛の星座」より)

星占いというと、12星座それぞれの性格や運勢が別個に示されるものと思うかもしれないが、実は12星座は一つの大きな物語として繋がっているのだ。牡羊座が「始まり」「誕生」を象徴し、たとえば乙女座の次の天秤座が「結婚」を象徴するというように「人の一生」を描いて、「全ての物語が流れ込む海」である魚座にまで至る。

ここでは、蠍座の特徴を一部ご紹介しよう。石井さんによると、「蠍座は『死』と関連付けられている」そう。確かに蠍は猛毒を持つので、「死」の象徴であるという解釈はたやすい。「死」の象徴というと、一見不吉なように思えるが......。

蠍座の「死」は、あくまで象徴的な意味での「死」である。それまでの自分が死んで、新しい自分に生まれ変わるような根源的変容が、蠍座のテーマとされる。

更に言えば、「死」は「生」との対照で語られるしかない。光がなければ影もないように、生がなければ死はない。しかしおもしろいことに、蠍座の対岸の牡牛座は「生」の星座ではなく、「所有・物質・価値」の星座なのだ。何かを「持っている」ということが、牡牛座のテーマである。その対岸、つまり反対の星座である蠍座は「遺伝・相続・性」、つまり、人が人に財や命や運命を与えるということがテーマとなっているのである。
(「蠍座 ― 再生の星座」より)

ちょうど反対側に位置する牡牛座と照らし合わせることで、蠍座の「死」=「次へ与えること」というイメージが立ち上がってくる。こういったふうに、星座同士の関係で星占いを知る機会は、他ではあまりないのではないだろうか。

さらに、蠍座のキーワードが「闘い」だ。もう一つの「闘い」の星座である牡羊座は己の「正しさ」のために闘うが、蠍座は自分の大切なもののために、怒りや欲望、愛情などを原動力にして闘うのだという。そこで石井さんが引用しているのが、焚書社会を描いたSF小説の金字塔『華氏451度』で、主人公の上司ビーティが本への複雑な愛憎を抱きながら偏執的に本を焼き払う姿だ。ビーティの感情は、とても"蠍座的"なのだという。

朝のテレビ番組の短い星占いでは触れることができない、星占いの深層、そして宇宙がここに。自分の星座だけチェックするのもいいが、ぜひ牡羊座から魚座まで読み通して、12星座の物語のダイナミズムを体感してほしい。

■石井ゆかり(いしい・ゆかり)さん
ライター。星占いの記事やエッセイなどを執筆。「12 星座シリーズ」(WAVE 出版)は120万部を超えるベストセラーに。「愛する人に。」(幻冬舎コミックス)、「夢を読む」(白泉社)等、著書多数。累計発行部数は400万部を超える。

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