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『夜明けまでバス停で』大西礼芳、恩師・高橋伴明監督からの言葉を胸に臨んだ現場での変化

  • 2022.10.6
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映画『夜明けまでバス停で』に出演する大西礼芳 クランクイン! 写真:高野広美 width=
映画『夜明けまでバス停で』に出演する大西礼芳 クランクイン! 写真:高野広美

9月まで放送されていた月9ドラマ『競争の番人』(フジテレビ系)で坂口健太郎扮する小勝負勉の東大時代の同期・緑川瑛子を演じていた女優の大西礼芳。京都造形芸術大学在学中に出演した映画『MADE IN JAPAN 〜こらッ!〜』で主演を務め女優デビューを果たしてから約10年。デビュー作で監督を務めた高橋伴明と10月8日公開の映画『夜明けまでバス停で』で改めて顔を合わせた彼女に本作に出演した思いを聞いた。

【写真】コロナ禍の中の社会的孤立を描く『夜明けまでバス停で』場面カット

■恩師である高橋伴明監督との現場も「まったく緊張しませんでした」

高橋伴明監督は、大西が在籍していた京都造形芸術大学の教授であり、映画学科のプロジェクト「北白川派映画芸術運動」で製作された『MADE IN JAPAN 〜こらッ!〜』では、監督&主演女優という関係で作品を共にした。言ってみれば師匠的な立場の人物だ。

大西は「伴明さんとまた映画を作ることができたのはとてもうれしかった。大学の恩師でもありますし、映画作りにおいての考え方は、いまでも私の中にずっとあるぐらい影響を受けている方」と述べるが、「でも緊張とかはまったくなかったです。いい表現か分かりませんが、自分のおじいちゃんみたいな感じなんです」と笑う。

師匠であり尊敬していながら、かしこまることのない理想的な関係性。現場でも、高橋監督は俳優に対して多くを語らないという。「押さえておかなければいけないことはもちろんありますが、基本的にそれぞれ役者が考えて芝居するべきというのが伴明さんの考え方なんだと思います」。

■パワフルなベテラン女優たちとの現場

本作の主人公は、コロナ禍により職を失い、バス停で寝泊まりせざるを得なくなった一人のホームレスの女性・北林三知子(板谷由夏)。大西は、三知子がパートをしていた居酒屋チェーンの店長・寺島千晴を演じている。千晴は、社員という立場で、従業員を解雇しなければならない現状に板挟みになるという女性だ。

大西は「実在にあった事件がモチーフになっているので、とても慎重に描かなければいけない」と台本を読み進めていったというが、「でも設定などその事件とは違うので、あくまでフィクションとして、どうやって役柄に説得力を持たせるかを意識しました」と語る。

大西が演じる千晴は、コロナ禍によってリストラされなかった立場の人間だ。「店長ということで、従業員よりは安定した立場なのですが、私が意識したのは、すごく不安定なところで踏ん張りながら生きているということ」。そのため、仕事場では部下に対して厳格な態度をとるが、いざ素になったときは「抜けた感じ」をしっかり出せるように心がけたという。


千晴の部下として居酒屋で働いていたのが、板谷をはじめ、片岡礼子、ルビー・モレノといった個性派女優たち。大西は「とても楽しかった」と笑顔を見せると「皆さん、休憩中ずっとおしゃべりしているんです。その姿は劇中のパートさんそのままで。私のこともずっと『店長』と呼ぶので、カメラが回ったときも芝居をしているような感覚ではなかったんです」と、地続きで演技ができたという。

■伴明監督に言われた『飽きた』という言葉を胸に臨んだ本作の現場

こうした現場でのコミュニケーションは「とても大切」だという大西。「やっぱり会話はとても大事。話すことで、その人が持っている癖みたいなものが分かるじゃないですか。そういうのって必ず芝居にも出てくるので、反応がしやすくなります」。

それは対立する立場の関係性でも同じだという。「敵対する役であればあるほど、相手のことを信用していないとやりづらくなるので、対峙(たいじ)する人にもよりますが、できるだけコミュニケーションはとりたいと思っているんです」。

本作でも、共演者の方々としっかり会話をしながら撮影を進めることができた。先ほど高橋監督との現場で「緊張感はなかった」と話していたが、大西は、ある思いを胸に秘めて撮影に臨んでいたという。


「私は、伴明さんが監督をされた昨年公開の『痛くない死に方』にも出演させていただいたんです。そのとき、私の芝居を観た監督から『飽きたぞ』と言われてしまって…。結構グサッときてしまったんです」。

大西自身「なかなか人間らしさを出せるような芝居ができなくて、少しいい子ちゃん的な表現になってしまっていたと思うんです」と自己分析したが、「この現場でまた『飽きた』と言われないように、納得できないときは、伴明さんに相談しました。これまではもらった台本通りに演技をしてきたので、『言えないせりふはない』と思っていたのですが、あまり受け身にならず、能動的に役者からも発信できるようにという思いが強くなってきました」と自身の芝居に対する変化を明かした。

■いろいろな国の人と作品を作りたい

キャリアは10年に達した。現在は女優として作品に携わっているが、大西は「芝居をすることが楽しいのかは正直分からないんです。なによりやりがいを感じるのは、いろいろな部署の方たちと話し合いながら一緒に作品を作ること」と語る。

「この作品でも、居酒屋でのシーンが出てきますが、エキストラの方たちを含めて、一つのシーンを作り上げるために、たくさんの人たちが参加するじゃないですか。そのチームワークの中に自分がいることが、とても楽しいんです」。


モノづくりの一員としての女優業。演じるときの視点も、頭の片隅には視聴者目線があるという。将来的には監督業にも? という問いには「少しだけ考えたことはあります。絵を描くのが好きで、たまに漫画なども描くので、自分が描いた物語をどのような絵で見せるか…ということには興味があります」と語っていた。

「日本に限らずいろいろな国の人と作品づくりをしたい」と今後について語った大西。文化や風土が違う中、人とのつながりによって生み出される表現――。大西の中心にあるのは常に“コミュニケーション”というキーワードなのかもしれない。(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)



映画『夜明けまでバス停で』は10月8日より新宿K’s Cinema、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開。

ヘアメイク:廣瀬瑠美/スタイリスト:田中トモコ(HIKORA)

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