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この"抜け感"がたまらない。集めたくなる「農民美術」の魅力

  • 2022.10.5
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どことなくユーモアを感じさせる木彫りの人形たち。これは、「農民美術」と呼ばれる手工芸品の一例だ。

「農民美術」は、今から約100年前に版画家の山本鼎(やまもと・かなえ)が提唱した「農民美術運動」に由来している。農村部の若者たちに手工芸品の製作技術を手ほどきすることで、農閑期の副業として美術活動への参加を促すものだったそう。

難しいことはさておき、まずはその独特な作風を堪能してほしい。

どの作品も素朴で温かみがあり、どこか抜けている感じがなんとも可愛い。

これらの農民美術をまとめた『はじめまして農民美術 木片(こっぱ)人形・木彫・染織・刺繍』(グラフィック社)は、たった15年の間に全国各地で制作された様々な制作品を、その成り立ちとともに紹介している。

木片(こっぱ)人形・木彫風俗人形を中心に約200点収録。制作物に加えて、運動全体を俯瞰する解説や同時期に作られるようになった北海道・八雲町の熊彫との関係、現在長野で作られている作品紹介も掲載。初めて農民美術に触れる人とっては良い入門書になるはずだ。

本書の目次は以下の通り。

・戦前の主な農民美術生産組合(全国、長野)
・1章/木片人形その1(日本農美生産組合、信州の生産組合、大湯農美生産組合、木彫秋田風俗人形、大島農美生産組合...)
・2章/木片人形その2(登山人形、スキー人形、スケート人形、野球人形...)
・3章/木片人形その3(越路人形、凹平人形、塩原人形、吾妻木工組合...)
〈コラム〉松本の白樺工芸/彫刻家・木村五郎のこと/八雲熊彫の歴史/各地で作られた竹人形
・4章/戦前の様々な農民美術とデザイン画(菓子入れ、木鉢、白樺巻、テーブルタッピー、クッション、ギニョール...)
・5章/山本鼎と農民美術「農民美術って何だろう?」
・6章/現代の農民美術
・現代の農民美術 主な取り扱い店、戦前の農民美術を見ることができる施設紹介

懐かしさを感じさせる愛らしい作品ばかりで、眺めているだけでも楽しい。興味を持った方はぜひ本書で入門してみよう。

【監修者プロフィール】
■宮村真一(みやむら・しんいち)さん
農民美術研究家。1952年長野県生まれ。武蔵野美術大学卒、多摩美術大学大学院修了。農民美術の木片人形及び木彫風俗人形の分類をテーマに調査して30年。

■小笠原 正(おがさわら・ただし)さん
上田市立美術館 学芸員。1971年長野県生まれ。慶應義塾大学文学部卒。上田市立美術館にて山本鼎及び農民美術に関する調査を行う。同館「山本鼎のすべて展」(平成26年)、「農民美術・児童自由画100年展」(令和元年)などを手がける。

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