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朝からココロが喜ぶ、“がんばらない”ごちそうトースト|your SELECT.Life

  • 2022.10.11
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毎朝1枚のアレンジトーストが、私の1日をご機嫌にする

忙しい朝は、なるべくご飯にも時間をかけたくないのが本心。とはいえ、適当に済ませるとテンションが上がらない……。そんなモヤモヤを解消してくれるのが、ビジュアル豊かで失敗知らずの「アレンジトースト」。

今回その魅力を語ってくれるのは、さまざまなメディアで食のコンテンツを手がけるフードディレクターの山口繭子さん。実は毎朝ごちそうトーストを1枚手づくりすることこそが、1日をハッピーに過ごすためのもっとも簡単な方法だと話します。カロリーが高くたって関係なし。寝ぼけ眼をこすりながらでもつくれる、美しくて体も心も満足できるトーストの世界へといざないます。

Instagramから始まった、私とトーストとの出合い

山口さんがトーストづくりに目覚めたきっかけはInstagram。グルメ雑誌の編集者として働いていた2015年頃、Instagramブームが到来。「編集部でインスタ関連の仕事が徐々に増えてきたこともあり、私も仕組みを知っておかなくてはと思い、始めました」

せっかくInstagramに写真をアップするのなら、写真映えするもので、かつ今の仕事のセンスが生かせるものがいいと考えた山口さん。「毎日オシャレなレストランに行くわけでもないし、おうちでの晩酌の様子を撮っても映えない。でも、朝食なら自然な光で無理なく良い写真が撮れるかも!と思ったんです」

パンの街として知られる神戸出身の彼女にとって、朝食は昔から決まってパン。「私はロングスリーパーで1分でも長く寝ていたいタイプ。和定食みたいなきちんとした朝食を毎日つくるなんて絶対に続けられない!」。そこで彼女が思いついたのが「トースト」だったそう。

山口繭子さんトースト01
「昔からパンは大好きでしたが、種類やお店へのこだわりは特にないんです。コンビニやスーパーで売っている食パンはあらかじめカットされているし、面がきれいに平らになっているから具材ものせやすい。アレンジトーストには、身近な食パンで十分! 私もふだんから重宝しています」

仕事柄、世界中の新しい食文化にふれる機会が多かった山口さん。そこで得たセンスや食材の知識を存分に生かせると気づきつくり始めたのが、見た目も味もごちそうな「アレンジトースト」でした。

パンをキャンバスに見立て、まるで絵画を描くような自由な発想で、大胆に食材を重ねていくアレンジトーストの世界。これまで見たことがないような、美しくかつ食欲をかき立てるアートなビジュアルはたちまちInstagramで注目を浴び、フォロワーも瞬く間に増加。「これをきっかけに、本の出版やテレビへの出演など予想もしていなかった体験をたくさんできて人生が変わりました。トーストには非常に感謝しています」

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Instagramのトーストは、決まってこのお気に入りのお皿にのせて写真撮影。マットな質感で光も反射せず、そのままオーブンにも入れられる優れものだとか

がんばらなくていい、こだわらなくていい。それこそが、続けられるひけつ

芸術的なビジュアルから、一見手間がかかっているように感じるアレンジトースト。けれど実は、「パンに食材をのっけるだけ」といういたってシンプルなつくり方が基本となっています。出版社の編集部に勤めていた頃は毎日が激務だったといいますが、それでもトースト生活を続けられた理由は、やっぱりその簡単さにあるようです。

「料理がさほど得意ではない私にとって、時間がない朝に高度なスキルなしでも手づくりできる、というのは大きな利点でした」。今やコンビニで売っている食パンですら、クオリティが高くておいしいのが当たり前。そんな優秀な土台(パン)のおかげで、今までに400種類ほどのアレンジトーストをつくってきた山口さんも、失敗してまずくて食べられなかったという経験は一度もないのだとか。

「昼や夜は仕事で思うように食事内容がコントロールできない中、唯一自分で自分の“ご機嫌取り”がかなうのが朝。だから朝食って何より肝心だと思うんです」。1日の好調なスタートを切るために、簡単につくれて、おいしく美しく仕上がるトーストは、まさに理想の朝食だといえそうです。

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山口さん作のアレンジトーストの数々。手が込んでいるようで、どれも調理時間は5〜10分ほどと簡単。(左下から時計回りに)枝豆チーズトースト、練りゴママーブルトースト、チーズ&ソルジャーズのスティックトースト、キュウリのボーダートースト、クリームチーズとブルーベリーのトースト

では、がんばらずして、いかに自分を喜ばせられるごちそうトーストがつくれるのか……!? 山口さんがふだん意識している、見た目と味について伺いました。

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キュウリのボーダートーストの調理風景。ピーラーでスライスしたキュウリを、はみ出しを気にせず配置し、後でパンの形に沿って周囲だけを切り落とします。この技、フルーツや野菜などあらゆるものに応用できる、山口さんお得意のトースト術です

まず、ビジュアル面。これは意外にも「きれいに仕上げることを意識しない」ことがポイントだといいます。「きれいに仕上げるよりも、熱々のうちに自分の口に入れることを優先しています」。例えば、食材がパンからはみ出さないようにていねいにつくるのはかなり時間がかかるので、最初から思い切って“はみ出てもいいや精神”でつくることが大事とか。「はみ出たところを最後にぱぱっと切り落としてしまうことで、食パンのサイズにぴったりと収まった美しいビジュアルに仕上がるんですよ」

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はみ出し部分の切り落としが完了したキュウリのボーダートースト。仕上げに塩少々、たっぷりの黒コショウとオリーブオイルをかけるだけ。とっても簡単なのに、いくらでも食べたくなるクセになる味わいです

次に、味と食材について。山口さんの鉄則は、なんと「朝だからカロリーには目をつぶる」ことだとか。「夜は砂糖や油を控えたりと体に気を使っているのですが、そんな私も朝はお構いなし! バターも砂糖も生クリームもどんどん使う。1日のテンションを上げるためのエネルギーだと割り切って、あまりカロリーを意識しないようにしています」

そして、もうひとつ。目新しいものや珍しい食材・調味料をあえて取り入れることで、味のマンネリ化もなく、トーストアレンジがより楽しめるとのこと。身近なところでいえば「スパイス」がそれに当てはまります。「数回しか使わずに棚に眠っているスパイスやドライハーブはありませんか? 例えば、クミンやパプリカパウダー、クローブ、バジル、オレガノなどは、卵やチーズがのったトーストにさっとふりかけるだけで、驚くほどおいしくなるのでぜひ試してみてください」

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クミンはトーストに使いやすいので、業務用のマーケットでどっさり買って容器に移して保管&使用。「少し加えると一気に味も見た目もワンランク上に仕上がるんです」。上級テクニックよりも、上級食材を取り入れるのが山口さん流

見た目も味も、センスが光るレシピの数々

山口さんのトーストはアートな見た目もさることながら、食材の組み合わせも秀逸。国内外の料理メディアや、話題のガストロノミーからも大きな影響を受けているので、バルサミコ酢×ヨーグルト、ようかん×オレンジマーマレードなど、普通ではなかなか思い浮かばないような前衛的な組み合わせが次々と飛び出します。

彼女の手にかかれば、スーパーで手に入るような身近な食材だって、組み合わせ次第で立派なごちそうトーストに変身! それでは実際に、山口さんおすすめの2つのアレンジトーストの簡単レシピを教えていただきましょう。

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いつも頭の片隅にはトーストの存在があり「仕事やプライベートで新しいものを見たときに、まずはトーストで実験してみよう!と考えるようになった」と話します

1品目は「アーティスト気分で楽しむ、練りゴママーブルトースト」。トーストしたパンに練りゴマをまんべんなく塗ったら黒蜜を回しかけ、お箸の先で引っかいてマーブル模様をつくります。「マーブル模様は誰がやっても天才的にきれいに描けるので、アレンジトースト初心者でも心配はいりません」。そして最後に、生クリームと砕いたクッキーをトーストからこぼれるようにトッピングすれば、よりアートな雰囲気に仕上がります。

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和食材であるゴマと黒蜜に、クッキーを組み合わせる斬新さが山口さんならでは。お絵描き感覚で楽しめるので、親子でつくるのにも◎

2品目は、スティック状のパンを半熟卵につけて食べるイギリスの伝統料理「エッグ&ソルジャーズ」から着想を得た「チーズ&ソルジャーズのスティックトースト」。まず、卵ではなく数種類のフレッシュチーズをミックスしてディップクリームをつくります。そして食パンにバターをたっぷり塗ってクミンをふりかけ、縦4等分にカットしたら、こんがりするまでトースト。仕上げに生ハムを巻いて、チーズディップをつけながらご賞味あれ。「今回はクリームチーズとマスカルポーネチーズでディップをつくりましたが、リコッタチーズやブッラータチーズなど、自由に味を変えて楽しんでみてください」

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苦手でなければ、ブルーチーズやウォッシュチーズなどのクセのあるチーズでディップをつくるのもおすすめ。ワインとの相性が抜群なので、朝にかぎらず夜のおつまみとしてもぴったりです

私を幸せにしてくれる朝のごちそう

トーストづくりの最大の楽しみを伺うと、「朝つくっているときはいつも寝ぼけた状態なので、実はあんまり意識はしてなくって。でも10分足らずでつくったトーストをぱくっとひと口食べて、あ、この組み合わせ当たった!みたいな、そういう瞬間がすごくうれしいですね」

肩肘張らずに続けられるのがごちそうトーストの魅力であり、自分で自分を幸せにできる身近な存在だと教えてくれた山口さん。「誰にだってしんどいときや憂鬱(ゆううつ)な日って必ずあるでしょう? でも、朝は必ず毎日やって来る。だから日常に定期的な楽しみや喜びを取り入れるのって、とても効果的です。すごく素敵なワンピースをがんばって買うより、ちょっとだけいい食材、あるいはいいトースターを1台買って毎日の朝ご飯を充実させた方が、きっと生活の質はぐんと上がるはずですよ」
山口さん流“がんばりすぎない”ごちそうトーストで、朝から自分を目いっぱい幸せにしてあげましょう。

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118ものレシピが掲載された話題の著書『世界一かんたんに人を幸せにする食べ物、それはトースト』は、韓国版・台湾版となって海外でも出版。世界へと広がり始めた山口さんの活動からも目が離せません
PROFILE
山口繭子(やまぐち まゆこ)

食のディレクター

『婦人画報』『ELLE gourmet』(ともにハースト婦人画報社)の編集部を経て独立。自身のInstagramに投稿していたトースト写真が話題になったことで2020年11月に、書籍『世界一かんたんに人を幸せにする食べ物、それはトースト』(サンマーク出版)を出版。現在は「株式会社フードコンテンツ」の代表として、食とライフスタイルをテーマにメディアやイベント、新規店舗案件などで活動する。

instagram https://www.instagram.com/mayukoyamaguchi_tokyo/

note https://note.com/mayukoyamaguchi/

CREDIT

取材・文/田中朝子(Roaster) 撮影/藤井由依(Roaster)

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