家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.64空港でのサプライズ

クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。27歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回はvol.63正しさ、よりも、優しさ

vol.64空港でのサプライズ

お盆に帰省していた奥さんと子どもを空港まで迎えに行く、という話を耳にし「優しい旦那さんの休日に私も便乗しようかなー」「でも福岡から帰って来て疲れてるかー」と連絡すると「水くさい。おいでよ」と旦那氏から有難いお返事を貰えたので、私が来る事は折角なら内緒にしておいて。折角ついでに、日々育児に奮闘している彼女が１番好きな焼き菓子屋さんでケーキを買ってから空港に向かおう！と話がまとまった。この夫婦がまだ彼氏と彼女だった頃。駅から少し離れた場所にあるその店に坂道を越え３人で通った。思い出の味。

羽田空港の到着ロビーで抱っこ紐を付けた彼女に駆け寄って行くと「あ、やっぱり」と特別驚いていないご様子。ぽかんとしている私を見ておかしそうに笑う彼女。「なんか今日は来るんじゃないかなって思ってた」

私はこういう時の彼女がとても好きで。サプライズを仕掛けた側からすると普通「えー！いつから気づいてたの！つまんない！」って話になるのだけど。彼女が相手だとそういう気持ちにならない。一応「えー！いつから気づいてたの！つまんない！」とやってはみるものの、私を写しているその瞳のあたたかさや彼女から発せられる空気感が優しくて、気づいたら口にしている言葉の語尾は尻すぼみ…「この人、私のこと分かってくれてるんだなー」って嬉しくなっちゃう始末。

そして、あぁ感じたものって本当だなぁって。大人になると言葉にすることが大事な場面も増えてくるけど。でもやっぱり、本当の安心感や本当の好意は言葉では決して相手に伝えきれないものなのかもしれないって。言葉を使わずあなたの心をあたためてくれる人がいたら、その人はあなたにとって、とても大切な人。