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再解釈/13名のクリエイターによるディオールのメダリオンチェア。

  • 2022.9.26
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9月のパリは月末のファッションウィークに先駆けて、デザイン&インテリアでスタート。8日から12日まではパリ郊外で恒例の国際的トレードショー、メゾン・エ・オブジェが、そして同時に始まったパリ・デザイン・ウィークは9月17日まで開催された。これには多くのギャラリーやブティックが参加し、パリ市内がデザイン色に染まった。

クリスチャン・ディオールがこよなく愛した18世紀。ルイ16世様式の「メダリオンチェア」は当時の室内装飾を象徴するアイテムである。モンテーニュ通り30番のクチュールサロンに顧客のために彼が用意していたのが、楕円の背もたれとその上に飾られたフォンタンジュリボンが特徴の「メダリオンチェア」。「落ち着きがあり、シンプルで、何よりもクラシックでパリらしい」と彼が回想録で述べているクチュールサロンの内装に、この椅子がさらなるエレガンスを添えていたのだ。また、創設当時に店内の階段のふもとに設けられた香りや小物を販売するバザール「コリフィシェ」の写真を見ると、背もたれがカナージュで座面はトワル ドゥ ジュイのプリントという彼によって“パーソナライズ”された「メダリオンチェア」が目に入る。

ブティックで販売されている、コーデリア・ドゥ・カステラーヌがアーティスティック ディレクションを務めるディオール メゾンの「メダリオンチェア」。photos:Mariko Omura

2021年6月のミラノサローネ国際家具見本市にてディオールは、世界を舞台に活躍する16名のアーティストたちがメゾンのコードのひとつに数えられるこのメダリオンチェアを再解釈するという「メダリオンチェア」プロジェクトを披露した。サム・バロン、ピエール・シャルパン、ディモーレスタジオ、マルティノ・ガンパー、コンスタンス・ギセ、インディア・マーダヴィ、nendo、アタン・ツィカレ……国籍さまざまなアーティストたちの異なるビジョン、芸術的・文化的感性から生まれた再解釈は興味をそそるものだった。

話をパリに戻そう。9月15日から18日までモンテーニュ委員会の主催によるイベント「Promenade pour un objet d’exception」がモンテーニュ通り周辺のリュクスなブランドのブティック内で開催され、30番地のディオールのブティックもこれに参加した。昨年のミラノサローネで発表された中から13名のアーティストによるメダリオンチェアを2つのフロアに点在。気になるアーティストの椅子はどこ?と、ちょっとした楽しい“宝探し”が楽しめた。各アーティストによるメダリオンチェアの再解釈をおもしろがりつつ、ディスプレーされているミモザのブーツに目を奪われたり、今年の春に大改装工事を終えてリニューアルオープンした店内のカーテンや壁の素材の見事さにうっとりしたり……と、ブティックを好奇心いっぱいに散策できる機会となったのだ。

左から、ピエール・シャルパン「Untitled」、ピエール・ヨバノヴィッチ「Monsieur et Madame Dior」、マルティノ・ガンパー「 Aloïse」。ピーター・マリノが手がけた見事な内装に見惚れながら、椅子探し! photos:Mariko Omura

左:ラテックスと樹脂が素材のスンジュン・ヤン「Blowing Chair」。シンプル、ユニーク、面白みの3つの言葉で彼はこの再解釈を解説した。中:時代を超越した面、そのフランス的エスプリを気に入ったディモーレスタジオの「0071」は椅子を一旦細かく解体し、それを再度組み立てたものだ。部品のサポートにはブロンズや真鍮といったノーブルな素材を使用。右:背もたれの楕円と同じフォルムを座面に。コンスタンス・ギセの「Pop-Up」。photos:Mariko Omura

短期間のイベントの終了後メダリオンチェアは見られないけれど、ブティックの魅力は変わらず一周に値する。あちこちにさりげなく飾られたメゾン所蔵やギャラリーから貸与のコンポラリーアートピースの数々。中には名前を聞いたことのないアーティストの作品もあるだろうが、これらはクリスチャン・ディオールの最初の職業がギャラリストだったことを思い出させずにはいられない。1920年代後半、当時の無名アーティストたちの作品を積極的に扱った画廊で、その中にはダリやマン・レイも。またムッシュ ディオールが花を愛し、素晴らしい庭師だったことは有名だが、ブティック内にもふたつの素晴らしい庭が作られているのでぜひ鑑賞を。

パリの中央にこんな空間が!!と驚かされるのは、メンズの売り場からアクセスのあるガラス張りの庭園だ。奥にジョン・チェンバレンによるスティールの彫刻「Mysting Tonatta」が展示されている。イべント期間中は庭園内にハレド・エル・メイズによる3点の「メダリオンチェア」が展示された。photos:Mariko Omura

左: 地上階、庭の緑に恵まれたカフェスペース。その中に展示されたのはサム・バロン「Romance」。右:その庭は吹き抜けなので、2階からも眺められる。展示の椅子はカラフルなインディア・マーダヴィの「Swan」「Iris」「Swan」。photos:Mariko Omura

左:  伝説のアドレス、モンテーニュ通り30番地のディオール本店。中、右: ブティック内、試着室にもアーティストの家具や作品が。イベントがなくても、店内散策は目を十分に楽しませてくれる。photos:(左)Adrien Dirand、(中・右)Mariko Omura

Dior30 , avenue Montaigne75008 Paris開)10:00~20:00(月~土)11:00~19:00(日)無休

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