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『ひめさま! じいが かぜを ひいたでござる』【今日の絵本だより 第317回】

  • 2022.9.20
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kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。 こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『ひめさま! じいが かぜを ひいたでござる』【今日の絵本だより 第317回】の画像1

『ひめさま! じいが かぜを ひいたでござる』 丸山誠司/作 光村教育図書 1430円

9月19日は、敬老の日。 おじいさん、おばあさんの登場する絵本にも、素敵な作品が多くありますが、今回は最近の絵本界で注目株のおじいさんのお話をご紹介。 『ひめさま! じいが かぜを ひいたでござる』です。

「じいは どうしたのじゃ。 まだ かぜが なおらんのか。 はよー じいに あいたいぞよ。」 と、縁側にぺたんと座って、すっかり退屈そうなひめさま。 おつきの家来が、 「ひめさま もう しょうしょう おまちくだされ。 じいが げんきになるよう にんじゃに めいじて ぜんこくから うまいものを おとりよせちゅうで ございます。」 と申し上げていたら、そこへちょうどやってきました、最初の忍者。 北海道から参上、イクラにんじゃです。 「じいが かぜを ひいて なんか こわい と きいて おみまいでござる。」

なんか こわい? じいの怖い顔なんて見たことのないひめさまは、心配です。 続けて、青森から参上、マグロにんじゃは 「じいが かぜを ひいて おなかが にやにやする と きいて おみまいでござる。」 岩手から参上、カッパにんじゃは 「じいが かぜを ひいて むねが はっかはっかする と きいて おみまいでござる。」 今度は、にやにやして、はっかはっか? じいは一体、どうなっているのでしょう。 いてもたってもいられず、ひめさまがじいの部屋に駆けつけると……。

お気づきの人もいるでしょうか、忍者たちの謎の言葉。 全部、忍者の地元の方言なんですね。 楽しさあふれるこちらの絵本は、東日本大震災後に、全国から被災地へ応援に駆けつけた医師たちが、診察の聞き取りで方言がわからず苦労した、というエピソードをきっかけに生まれたのだそう。 そんな成り立ちを聞くと、「方言って面白い」だけでなく、方言を理解することの大切さにも思い至ります。 何より最初から最後まで、じいのことが大好きで心配でたまらない、ひめさまの気持ちが伝わってきて、こちらもほっこり。 すっかり元気になったじいと、全国の忍者と家来とひめさま、みんなそろってのにっこりおいしいハッピーエンドも、あっぱれなのです。 シリーズ第一弾『ひめさま!ぞうはすごくおおきいでござる』も、方言の楽しさ満載です。 ぜひあわせてどうぞ。

選書・文 原陽子さん はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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