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家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.63正しさ、よりも、優しさ

  • 2022.9.16
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クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。27歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回はvol.62書き留めなくても覚えていること

vol.63正しさ、よりも、優しさ

お盆に帰省した実家のリビングで母が淹れてくれたお茶を飲みながら、いつだったか斜め読みしたネットニュースの記事を思い出していた。女性は1日に6000単語以下しか話せないと脳がストレスを感じやすくなる…とか。ピンと来るような、来ないような。

確かに自宅で作業する日が続くと、リフレッシュがてらお茶やサウナ、散歩の約束を友達に取り付ける事が多いけれど。言うなればそれは会って話がしたいよってことで。だけど友達とは考えながら話したりしないし、言葉は宙を舞っているし、それは単語ではなく文章だし、文章よりかなりいい加減で甘えた口語だし。で、結局自分がその時間に6000単語以上話しているのかどうか正確に知ろうとするのはかなり難しい。だけどその後作業を再開すると自分でもちょっと驚くくらい作業が捗ったりするのを見ると、ストレス解消になっている=6000単語以上放出したってことなんだろうと思う。好きな人の話を聞くのも、好きな人に話を聞いてもらうのも好き。その上で大事にしたいこと。

先日友達の誕生日を祝いながら優しさと正しさの話になった。この前こんな事があった、と相手が自分に話してくれた時、つい「それはこうした方が良かったんじゃないかなぁ」って意見が頭を過るけれど…ちょっと待てよ。ここで相手に私がアドバイスしたところでその案件はもう終わりを迎えている訳で、だとしたら何で私に話してくれているんだ…?と自分が誰かに話を聞いて欲しいと思う時の気持ちを思い出してみると現実が見えてくる。

仕事も恋も家庭も、人間関係のいろいろ。それが起こった時その場にいないと分からない事が大半で。だけど1人じゃ上手に消化できないから、誰かに聞いてもらいたい。欲しいのは、正しさ、じゃなく、優しさ。分かっているのに話を聞く側になると、どうしてかつい、優しさより正しい事を伝えてしまがちだよねと、友達と頷き合った。

そうだ、本当はみんな知っているんだ。どんなに言葉を尽くしてもその場にいなかった人にその場の全てを理解してもらうなんて無理だと。それでも分かってもらいたい、と話してくれている目の前の人を優しさで包める自分でありたい。

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