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チャーチズの最新インタビュー

  • 2015.10.22
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気がつけば、もう10月。9月は急遽依頼されたアーティストブックの編集に追われ、あと公開生収録のBS番組に出演させていただきました。私はかなり前にTVK(テレビ神奈川)で1年半ほど音楽番組を担当して喋っていたのですが、たっぷり喋るTV番組は久々で、しかも前述の激忙の最中だったのでヘロヘロ顔での出演となってしまいました。とても楽しかったですけどね。


チャーチズ(CHVRCHES)が躍動感に溢れたポップな最新アルバム『Every Open Eye』を先月末に発表し、とても好評なので、ローレンとマーティンに電話インタビューしました。前作での来日時にはフィガロジャポン本誌で取材しています。

左から、マーティン・ドハーティー(Key,Vo)、ローレン・メイベリー(Vo)、イアン・クック(Key,Ba,Vo)。Photo by Danny Clinch

***

■ 音楽制作は、曲の核になる部分に服を着せている感覚

―1stアルバム『The Bones Of What You Believe』を発表し、各国で高い評価を受けました。どこがリスナーの求めているものにマッチしたと思いますか?また、新しい音楽を提供できたと思いますか?

ローレン(以下、L):「デビュー・アルバムを作っている時は、自分たちがライヴバンドになるとさえ思っていなかったのよね。他に仕事もしていたし、夜とか週末を使って徐々に作っていった。新しい音楽を提供できたかどうかはわからないけど、エレクトロでありながら曲作りではアナログの楽器や機材を使っているし、そうすることで真の感情を取り入れようとしている。その部分があるからこそ、曲とリスナーがコミュニケーションをとることができるんじゃないかしら。それは新作でも同じよ」

マーティン(以下、M):「音楽的にはとてもパーソナルな音を追求していたけど、歌詞に関してはパーソナルでありながらも、普遍的にいろんな人が共感できるものだったと思っている。シンセ系のバンドってパーソナルな面を音楽やステージであまり出さないで、サウンドからもファンからも本当の自分を出さずに距離を置いている感じだけど、僕たちはそうじゃないから、リスナーが共感しやすかったんじゃないかな」

―新作ではジュピター8など80年代に活躍したヴィンテージ・シンセサイザーや最新型のパッドといった機材を導入したそうですね。

M:「ジュピター8はアルバム全体で使用している。他にはオーバーハイムやローランドの新しいTR-8というドラムマシーンも使ったし、デイヴ・スミスのプロフェット12など、とにかくいろんなシンセを使っている。それらの新しい仲間が待つスタジオに入る時は、すごくワクワクしたよ」

―今ではエレクトロ・サウンドが幅広く普及し、FKA Twigsのようにパッドに打ち込んだ音を中心にライヴサウンドを構築していくスタイルも増えてきました。チャーチズにとって音楽的なこだわりはどこにあるのでしょう?

M:「僕たちの場合、一番重視しているのはやっぱりソングライティングかな。まず僕たちは曲の核から作り始めるんだ。その後にドラムマシーンやその他の要素が付け加えられていく感じなんだよね。でもその後の要素っていうのは曲に服を着せている感覚だから、核にある部分が良くないと、いい服は着せられないからね。もちろんライブできちんと再現できるということも重要だけど、こだわりの優先順位でいうと、それは三番目くらいに考えることかな」

チャーチズの代表曲と言えば、2013年の大ヒット曲。CHVRCHES 「Recover」


■ 90年代のダンスミュージックを参考に

―今回のアルバムで軸となった曲は?

M:「一曲は確実に『Clearest Blue』。もう一曲は『Leave A Trace』かな。それから『Keep You On My Side』もある意味このアルバムを形付けた曲だと思う。鍵となる曲が決まると、それらの曲を軸にシーケンスとかできるから、そこからアルバムが着々と形成されていくんだ」

―マーティンはヒップホップやR&Bも好きで、ビートに対するこだわりが強いですよね?

M:「そうだね。ファースト・アルバムはその影響も結構出ていたと思うよ。でも今回はヒップホップやR&Bよりもダンスミュージックの世界に踏み込んだ気がする。このアルバムを作る時に、アンダーワールドとか90年代のダンスミュージックをたくさん聴いていたからね」

―「Afterglow」だけはスパイク・ステントではなく、メンバー自身によるミキシングになっていますね? 讃美歌をちょっと想起させる部分もあります。

M:「この曲は一番最後にできた曲で、アルバム全体の音も完成していた頃だった。この曲は壮大な音にするより、スタジオの雰囲気を曲に再現してオーガニックな音に仕上げたいと思っていたんだよね。例えばヴォーカルに関してはワンテイクでレコーディング、シンセも僕が一発録りによるシンプルな演奏にして。だから、自分たちでミックスすることにしたんだ」

L:「この曲は前の出来事に線を引いて、次の何かに進む準備ができているっていう内容よ。それもあって、アルバムの最後のトラックにふさわしいと思ったの」

Chvrches 「Clearest Blue」- Pitchfork Music Festival 2015


■ 歌詞とパーカッションの両方を音符と調和させる

―全体的に躍動感に溢れたポップな曲が多く、しかも同じ言葉を繰り返すことでインパクトと親しみやすさの増した曲が目立ちます。メロディで意識した点はありますか?

M:「僕たちにとって、パーカッションとメロディの存在は音符と同じくらい大切。歌詞に関して言ってくれたように、歌詞とパーカッションの両方が実際に音符と調和することが、僕たちのメロディーメイキングの上ではとても重要なことだと思っている。だからそこに着目してくれたのがとても嬉しい。ドラムと歌詞とメロディの相性を合わせることでもっとインパクトを出そうと試みたりするし、そこは割と意図して挑戦している部分なんだよね」

―歌詞に関していうと、意思の強さを感じさせる曲が多いですよね。ローレンの体験から生まれた歌詞が多いのでしょうか?

L:「そうね。自分の世界観とか自分に実際起こったこととか、自分のパーソナルな経験を基に歌詞を書くことが多いわ。偽りのないものを作りたいっていう気持ちがあるから、自分の視点をそのまま表現するようにしている。でも、前作でもそうだけど、解釈は皆の自由。人によって感じることも違えば、繋がり方も違うと思う。そこがクールだと思うの。私が個人的に好きな音楽も、そういった自分なりの解釈ができる作品が多いの」

―「Make Them Gold」での"And will we deliver once we know where to fall"という歌詞はどう解釈したら良いのでしょうか?

L:「自分たちが何をしているのか、どういう存在なのかを理解するっていったらいいかしら。何か素晴らしいことが起こったとしても、周りの物事はどんどん進んでいくし、環境はめまぐるしく変わっていくでしょ?その中で、自分たち目的や存在をしっかりと把握している必要ってあるわよね。そういう内容なの」

CHVRCHES 「Never Ending Circles (lyric video)」


■ 物事に関してもっとポジティヴな見方を

―『Every Open Eye』では恋愛の歌が多いように感じますが、一番辛い時期に書いた曲はどれですか?逆に、自分を励ますような立ち直るきっかけになったような歌詞はありますか?

L:「『Leave A Trace』と『Playing Dead』の2曲は、スタート地点はネガティヴだったりアグレッシヴなエナジーから始まったと思う。それに対して、『Clearest Blue』や『Down Side Of Me』はもっとポジティヴな曲だといえると思うわ。でも、そういった曲から励まされたってほどではないのよ。物事に関してもっとポジティヴな見方をしよう、もっと希望を持って前進しようというだけなの。このアルバムの曲で、辛い時期に関して歌われているものはないわね」

―怒りを強く出した「Leave A Trace」をリードトラックにした理由はどうしてですか?

L:「歌詞の内容は"自分が何をするか、どんな人間になるのか"ということについて、人から指図されずに"自分の道は自分で決める"というもの。アルバム全体の内容をまとめたような曲だと思ったから、リードトラックにしたの。明るい部分がありながら、アグレッシヴでダークでもある。明暗の両面を持った曲だから、リードトラックにピッタリだと思ったわ」

M:「リードトラックにした理由は、全員一致で"この曲だ!"って言えた曲だったんだよね。アルバムの中でもとてもパワーのある曲だし、バンドメンバーもレーベルのスタッフも、みんながみんな好きな曲だったんだ」

CHVRCHES 「Leave A Trace」

■ やりたいことに集中し、それをやり遂げる女性に共感

―今年インタビューしたBraidsのラファエルがあなたの『The Guardian』紙(2013年9月30日付)に寄稿したネットに蔓延する女性蔑視に対して長文の意見(http://digitalconvenience.net/?p=4607)や、あなたの姿勢をとてもリスペクトしていました。その後、ジャーナリストをしていたあなたが創設したTYCIのページヴューが増えたとか、あなたをとりまく環境は変わりましたか?

―今年インタビューしたBraidsのラファエルがあなたの『The Guardian』紙(2013年9月30日付)に寄稿したネットに蔓延する女性蔑視に対して長文の意見(http://digitalconvenience.net/?p=4607)や、あなたの姿勢をとてもリスペクトしていました。その後、ジャーナリストをしていたあなたが創設したTYCIのページヴューが増えたとか、あなたをとりまく環境は変わりましたか?

L:「大きな変化はないけど、ライヴの後のサイン会の時にその話しが出たりする時は、自分の声にも意味があるんだなと感じたりするわね。メディアから大きな反応があったとかではないけれど、何か感じてくれる人がいるのであればそれでいいわ」

―男女平等やフェミニズムに関してはビヨンセやビョークなども語っていますが、特にローレンが共感するのは誰のどういった姿勢ですか?

L:「10代の時は、キャスリーン・ハンナ(Bikini Kill、Le Tigre、The Julie Ruinと活躍。ビースティ・ボーイズのアダム・ホロヴィッツと結婚)にインスパイアされていたわ。最近彼女が登場するパンク・シンガーのドキュメンタリーを見たけど、彼女はすごく強い女性だし、自分がやりたいことに集中して、やり遂げる女性なの。まわりが求めているものと反していても、自分を貫く。それって素晴らしいわよね。そうやって未だに良い曲を作り続けているわけだし、大ファンよ。ドキュメンタリーのタイトルは『The Punk Singer』。チェックしてみて。UKではネットフリックスで見れるけど、日本ではどうなのかしら」

キャスリーン・ハンナのドキュメンタリー映画のトレイラー「The Punk Singer Official Trailer 1 」(2013)

■ アルバムタイトルには3つのメッセージを込めた

―「Playing Dead」での高音の伸びやかな声や、疾走感ある「Empty Threat」、「Down Side Of Me」の陰影のある歌声など歌唱力が素晴らしいのは、ツアーの成果から? もしくは特に表現力に関して意識した点はありますか?

L:「その両方ね。プロのトレーニングを受けたり、音楽を本格的に勉強したことはないけど、2年間ずっと歌ってきたから声に関してたくさん学ぶことができた。だからヴォーカルに関して今回はもっと自信が持てていたし、何をやりたいかもわかっていたの。私自身、周りのサウンドにどんなヴォーカルが合うかが前よりもわかっていて、それが実行できていると思うしね。楽器が上手くなるのと同じよ。身体で感じるのも大事だと思うわ」

―最後に、アルバムタイトルに込めた意味やコンセプトがあれば教えて下さい。

M:「アルバムタイトルに関しては、『Clearest Blue』っていう言葉も意味も好きで、そういうニュアンスをアルバムタイトルにも入れたいと思って歌詞から持ってきたんだ。『Eyes Wide Open』には、バンド自身のメッセージも込められているんだよね。僕たちに向けられている期待やプレッシャーに対する目を見開いている状況を表している言葉として。もう一つは、同じ世界にみんな立って物事を見ているという壮大的なアングル。そして3つめはもっと歌詞の内容に近いもので、視野の狭い中で何かに目を向けている状況だったり。その3つの方向性から成り立っているタイトルだと思っている。だからリスナーには、自分に最も合うフィーリングのものを感じとってくれるといいな」

2年ほど前のライヴ映像。まだ初々しい感じが......。CHVRCHES - Full Performance (Live on KEXP)

最新アルバム『Every Open Eye』。日本盤に収録されているボーナストラックもオススメ。ライナーノーツを書かせていただきました。

*To Be Continued.

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