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曼殊院門跡虹窓〈御菓子丸〉が一皿で表す、京都、寺社仏閣の風景 vol.10

  • 2022.8.27
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出典 andpremium.jp
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京都で和菓子の制作する〈御菓子丸〉が、四季折々の寺社仏閣の風景を、独創的な菓子と文とで表現。京都の風景に思いを馳せたくなる、美しい一皿を紹介します。

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曼殊院門跡
虹窓

これまで京都の茶室をいくつも見たが、特に心に残るのは曼殊院門跡の八窓軒だ。八つの窓が設けられた空間で、釈迦の一生を八つの場面にまとめた「八相成道」から名付けられたという。三畳台目の仄暗い茶室には虹窓と呼ばれる窓があり、庭の常緑樹に反射した緑と、庇に反射したピンクの光がぼんやりと障子に映る。格子状の竹と障子、自然光によって引き起こされるその美しさは例えようのないもの。構成するものはシンプルでも、計算し尽くされた構造が秘められていて、天候と時刻によって常に移り変わるその景色からは実に日本らしい美意識が見て取れる。そして和菓子を手がける私が目指すのも、そんな虹窓のような美しさをたたえる菓子だと、気づかせてくれるのだ。
透明の梅シロップを寒天で固め、青柚子の果皮と山葡萄の果汁を浮かべる。すると思いもよらない爽やかな風味が口の中で広がる。作りはシンプルでも、おいしさを生み出す構造がこの菓子にも込められた。光のプリズムが織りなす虹窓の風景を菓子にするなら、きっとこんなふうに鮮やかで明るい味わいをしているだろう。

小さな桂離宮と呼ばれる美しい名刹。『曼殊院門跡』京都市左京区一乗寺竹ノ内町 075-781-5010 9時〜17時(16時半受付終了) 拝観料600円

photo : Yoshiko Watanabe
*『アンドプレミアム』2022年10月号より。

和菓子作家 杉山早陽子

1983年三重県生まれ。老舗和菓子店での修業を経て、2006年から和菓子ユニット〈日菓〉として活躍。2014年から〈御菓子丸〉を主宰。

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