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両親の言い争いが子どもに与える深刻な影響とは?

  • 2022.8.17
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親が言い争いをしている最中、子どもは押し黙っていてもさまざまなことを考えている。沈黙の中で、親の対立が生む衝撃を受け止めているのだ。親のけんかが子どもに与える影響を、フランスの専門家が説明する。

photography: Getty Images

それはいつもの平日の朝。子どもがいる家庭での日常の風景だ。スケジュールは分刻みで進み、家族全員がバタバタしている。突然、子どもが服を着替えたいと言い出し、学校に行く15分前だというのにパンツ姿で寝室に突っ立っている。その時、パートナーが食洗機に残った食器を出していないことが判明。事態は急変する。互いに相手を非難し、責め合う。声の音量が上がり、ドアがバタンと大きな音を立てて閉まる。

この言い争いによって、家族の全員に緊張が走る。しかし子どもは言い争いが収まった後も、大人よりこのいさかいについて考え込んでしまう可能性がある。子どもはスポンジのようだとよく言われるが、このような状況下ではまさにそうだ。子どもたちはすべてを見、すべてを聞き、スポンジのように吸収している。“すべて”の中には、周囲にいる人々の感情や心の状態も含まれる。

この感受性は胎児の時にすでに芽生えている。母親のお腹にいる時から外の音に敏感なのだ。「両親の言い争いが及ぼす影響は、胎児のコルチゾールとアドレナリン(編集部注:ストレスに関係のあるホルモン)の分泌に現れます」とナント大学の小児・教育精神科の名誉教授アニエス・フロランは説明する。生まれた時から赤ちゃんは顔の表情に敏感で、1歳になる前でも主要な感情を読み取ることが出来る。声、口調、話すリズムやその変化などに反応する。「それらに赤ちゃんは注意を払い、場合によっては恐怖を呼び起こすこともあります」

幼い小さい子にとってまるで嵐のようなもの。

上記のような食洗機にまつわる口論は、大人にとってありふれたものであっても、子どもにとってはまったく異なる。軽い口論程度なら激しいけんかほどの緊張は伴わないが、どのようなものであっても、両親の言い争いは脳の中の恐怖をつかさどる部分を活性化し、不要なストレスを生む。「ネガティブな感情もポジティブな感情も子どもの脳の発達に影響を及ぼします。この場合のストレスは子どもの心身にとって有害です」とアニエス・フロランは強調する。

5歳以下の子どもにとって親の言い争いは、自分に襲いかかり、押し流す嵐のようなものだ。理由はシンプル。子どもの脳はまだ事態を理解し、消化し、感情を整理できるほど成熟していないからだ。「話すことができなければ、子どもは泣くことや大声を上げることで恐怖を表現するでしょう」とカップル・ファミリーセラピストのキャロリーヌ・クリューズは説明する。

幼い子どもにとって親は保護や愛情、安心を与えてくれる存在であるのに、言い争いはその安心を破壊してしまう。けんかの原因が自分にあるのかと子どもは考え、罪悪感を覚えてしまう。「原因が自分と関係ある場合、この感情はより強くなり責任を背負ってしまいます。目の前に起きていること、両親が別れてしまうかもしれない可能性に対する無力感を消すためにそう考えるのです」とキャロリーヌ・クリューズは説明する。子どものこの解決策は、当然ながら彼らの中に不安と悲しみを生んでしまう。

行動に影響

子どもが少し大きくなれば、成長とともに社会的な行動範囲が広がるので、ある程度距離を置く能力が身に付く。争いが続くなら兄弟や友だちに頼ることもできるようになる。

しかし親の争いが繰り返し起きる場合、けんかの場面で生じるストレスだけでなく、長期的な影響もあり得る。その一つは子どもの心に不安を増幅させる危険性だ。そして、親の行いを模倣するリスクもある。「子どもは社会的役割や振る舞い方を、他人を通して学んでいきます。特に親はロールモデルであるので学ぶ割合が大きいのです」とアニエス・フロランは付け足す。

「子どもの肌が荒れていたり、消化器系のトラブルを起こしていたりすると報告する親御さんもいます。登校を拒否するようになったり、おねしょをしたり、完全に塞ぎ込んでしまう子もいます」と家庭問題の仲裁専門家、クレール・ボネルは言う。

子どもの前では絶対にパートナーの悪口を言わないこと。

「子どもの方が大事であることは親もわかっていますし、言い争いが子どもに悪影響を及ぼすことも理解しています」と専門家は強調する。しかし「子どもの前では絶対に言い争わない」という根本的なルールを常に守るのは難しい。あまりにも仲が悪い場合、親は争いに気を取られ、子どもが受ける影響に気づかない場合もある。

子どもが不在の時に意見を交換するという重要なルール以上に、もう一つ必ず守ってほしいルールがあるとクレール・ボネルは言う。それは、子どもの前ではもう片方の親の悪口や、否定するようなこと、けなすようなことを言わないこと。「親を攻撃することは、子どもを攻撃していることになります」と彼女は要約する。そして、子どもにどちらの肩も持たせないことも徹底したい。

もし子どもが口論の場に同席してしまったら、大事なのは慰めてあげることだ。「目の前で起きたことを言葉にして説明してあげると子どもは安心します。怒ってけんかしまったけれどお互いのことが好きだし、兄弟や友だちとけんかするのと同じことだと説明してあげるのです」と小児と教育精神科医であるアニエス・フロランは続ける。

そして、もし対立が頻繁に起こり、解決が見つからず、子どもへの配慮ができなくなってしまっているなら、外部の介入が必要かもしれない。この場合、ファミリーセラピストのキャロリーヌ・クリューズは子どもにそのことを伝えるようすすめる。「このステップを踏むことは子どもを非常に安心させます。塞ぎ込み、暴力的な態度、学校での成績不振や不登校などの代替行動に移ることが回避される可能性があります」。遠回しな表現を使って説明する必要はない。「気付いたと思うけど、最近パパとママはけんかばかりしているよね。なぜなのか解決するために助けてくれる人がいるから、どうしたらけんかをしないようになれるか、その人と一緒に考えることにしたの」と子どもに伝えればいい。

家庭専門の仲介制度を利用するのも理にかなっている。(日本では法務省承認の専門家による仲裁制度を裁判外紛争解決手続、ADRと言う)。その専門家であるクレール・ボネルはぜひこの解決策を試してみてほしいと言う。なぜなら子どもがいないところで双方が自分の怒りを言葉にできるからだ。「憎しみが、言葉やまなざしに表れてしまう場合があり、子どもは片方の親がもう片方のことを憎んでいることを感じ取ってしまいます。仲介は親の関係を解決するためのものです。親を助けることは、すなわち子どもを助けることになるのです」

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