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自由自在に音と言葉を紡ぐビッケブランカ「柔軟性がありながらも強さがある。そんなアーティストでありたい」

  • 2022.8.17
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溢れるアイデアをカラフルなサウンドと表現力豊かなボーカルで彩るアーティスト、ビッケブランカがデビュー5周年のアニバーサリーイヤーを迎えた。

【写真を見る】花びらが舞う中での撮影。何度も花びらをぶつけることになりましたが、快く協力してくれたビッケブランカ

ビッケブランカといえば、ドラマ挿入歌として話題となった「まっしろ」のようなしっとりとしたバラードから、音楽ストリーミングサービス・SpotifyのテレビCMソングとなったカオティックなアップチューン「Ca Va?」まで、音楽ジャンルを軽々と飛び越えて、自由自在に音と言葉を紡ぐ表現者として音楽ファンから信頼を集めている。

そんな彼が、その節目となる5周年の最終コーナーを飾るにふさわしい最新EP『United』を完成させた。EPのリード曲で、夏感が瑞々しいポップなラブソング「This Kiss」は、ドラマ「あなたはだんだん欲しくなる」(BS-TBS)主題歌に起用されるなど、収録された4曲全てにタイアップがつく豪華盤だ。新作についてはもちろん、これまでの歩みや8月から始まる全国ツアー「THE TOUR 『Vicke Blanka』」に込めた想いについてもじっくりと伺った。

最新EP『Unitrd』をリリースするビッケブランカ 撮影=西村康
最新EP『Unitrd』をリリースするビッケブランカ 撮影=西村康

僕にとって、メロディーやリズムはとても大事なもの

「もともと『This Kiss』は、ドラマのために書き下ろしたというより、このEPのリード曲になるような、8月から始まる全国ツアーに向けて楽しくなれる曲を創りたいと思ったのがきっかけで作ったものです。

曲の冒頭で『LOVE!』と叫んだのは、聴く人が日常の中で曲を再生したとき、一瞬にして違う所へ連れていけるような、強いフックがあるといいなと思ったからなんです。デビュー曲の『ウララ』で変な声を入れたのも、そういう意図がありました。

それに、『LOVE』はもともと僕の口癖でもあって(笑)。例えば、美味しいマカロンをいただいたときにもつい口から出るし、いわば“いいね”みたいな、心がいい感じに動いたときに口から出てくる言葉なんですよ。ラブのブでは、ビブラート利かせて歌っているので、案外やってみようとすると難しかったりします。ぜひ、試してみてください(笑)」

ハッピーな気分を、聴いてくれる人にもナチュラルに分かち合いたいという気持ちが、「LOVE!」となって表出したのだろう。この曲に限らず、キャッチ―なメロディーや曲に備わるリズム本来が持っているノリを活かせるよう、歌詞を書くときにも言葉を選んでいるという。そのため、何とも耳心地の良い歌詞が生まれるようだ。

「僕にとって、メロディーやリズムはとても大事なものだから、普段歌詞を創るときはメロディーになじみの言い英語詞を最初に書いて、その英語の語感やリズムを崩さないように心掛けながら、意味としても成立する日本語を選んでいくことが多いです。

ただ、『This Kiss』は、ちょっといつもとは違って、書き方がセクションごとに違っていました。例えば、Aメロは英語でつけた歌詞を日本語に置き換えたものだけど、Bメロは言葉も同時に出てきたものだったりする。サビでは、歌詞を先行して書いていきました。3つの方法を同時に使ったことは、今までほとんどやったことがないと思いますね。

作詞では、音感やリズム、繰り返し性を大事することが多いけど、例外もありますよ。EPの2曲目『魔法のアト』のサビの部分は、同じメロディーで1番、2番は“2人の影だけ鏡に映して”と歌っているので、3回目も“心を返して”の方が、語尾が“エ”で終わるので、ハマりもいいし韻も踏めます。でも、自分がデモで歌っているときに、もっと強烈な思いがそこにはあるなと感じた。だから、リズムとかを犠牲にしてもいいから“返してよ”にしました。セオリーではなく、“よ”という訴えかけるワードが必要だと歌詞が求めている気がしたというか。リズムとメロディーは、『じゃあ、今回はいいよ』と譲ってくれた感じですね」

【写真を見る】花びらが舞う中での撮影。何度も花びらをぶつけることになりましたが、快く協力してくれたビッケブランカ 撮影=西村康
【写真を見る】花びらが舞う中での撮影。何度も花びらをぶつけることになりましたが、快く協力してくれたビッケブランカ 撮影=西村康

この曲には余計な音はいらない。アレンジは最小限にして、声とピアノを活かすことにしました

作詞のセオリーを飛び越えて感情の高ぶりを優先させたという「魔法のアト」は、切ない思いが胸に迫るバラードだ。ピアノ伴奏を軸としたシンプルなサウンドに乗せて情感豊かに歌い上げており、ボーカリスト、ビッケブランカの表現力が際立つ1曲と言えるだろう。この楽曲は、演技という彼にとって新しい扉を開けたことで生まれた曲なのだという。

「この曲はドラマ『個人差あります』の挿入歌として書き下ろしました。僕はドラマのなかで、シンガー・ソングライターのチェルキーとして出演していて、チェルキーとして劇中でこの曲を歌っています。だから、チェルキーの性格や想いを…僕はアーティストとしていろんなことを考えて生きる癖がついているので、彼が感じているであろうことを最大限理解したいと想像を巡らせつつ、自分の考えも重ねて歌詞を書きました。

『ドラマの中でチェルキーが歌う曲』を前提に書いてしまうと、そこに描かれるメッセージが限定されてしまいますからね。そんなふうにいろいろと考えながら歌詞を書いていくうちに、この曲には余計な音はいらないなと。アレンジは最小限にして、声とピアノを活かすことにしました。

演技という新しい挑戦は楽しかったけど、想像していたよりずっと難しかったです。映像を見返すと『なんじゃ、この大根』って(笑)、誰にも見せたくない気分です。監督はOKをくれたものの、自分で思っていたところに到達できていなかったというか。ただ、音楽もはじめはうまくできなくて、試行錯誤を繰り返して今の自分になれました。もしまたお芝居を求められたら、同じようにしていくだけです」

歌い上げるようなバラードに限らず、ボーカルをレコーディングする際はいつも肩に力が入ってしまうという。リラックスした状態で歌うために、ビッケブランカが取っている秘策とは?

「レコーディングでは、いつも知らぬ間に気合が入っていて、それが力みにつながってしまうことが少なくありません。力が入ると喉もしまって固くなるし、聴力もわずかながら落ちる感覚があるので、できる限りリラックスして歌いたいなと思っています。僕の理想は、自宅で録ったデモ音源。なので、スタジオでも自宅で録っているときみたいにテーブルに肘をついて、座りながら携帯で歌詞を見て歌っています(笑)。

デモが最高と言うと、不思議に感じるかもしれませんが、僕は最高を生むのは気合いじゃなくて本性だと思っていて。偶然の産物というか、コントロールとは別のところで最高は生まれると思っているから、力まずに素が出せる自宅で作った歌が自分の最高峰だと感じるのかもしれません。もちろん、その前にはどんな声で歌うか、どの部分はどう歌いまわすかなど、細部にまでこだわって徹底的に選び抜いています。緻密さを通り越した先の、心持ちから生まれる歌が歌えるよう事前にやれることは全部やる。

そして、レコーディングの本番では、スタジオでも自宅と同じようにダラダラして過ごして、他愛のない話をして力みを取っていく…。それはいい歌のためにやっていることですが、スタッフには『ただ、サボってるだけでは?』ってかなり怪しまれています(笑)」

パパラッチから逃げてる風に、に応えてくれました 撮影=西村康
パパラッチから逃げてる風に、に応えてくれました 撮影=西村康

歌詞を書くことで自分を知ることができる

ユーモアを交えた軽やかな語り口のなかに、音楽への深い愛と創造への強い責任とこだわりが顔をのぞかせる。そうした彼の豊かなクリエイティビティーと、元来持ち合わせている優しさは、LGBTQをテーマにし大ヒットした仏映画『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』エンディング曲として書き下ろした「Changes」の歌詞からも透けて見えてくるようだ。

「僕はフランス、パリが好きだから、テーマ曲を依頼されたときはうれしかったですね。フランス人の2人の監督と話し、会話からヒントをもらいながら曲のアイデアを膨らませました。この曲の主題は、“いいやつになりたい”と“変わりたい”だなと早い段階で決まったので、あとは言葉をリズムや語感などと相談しながら選んでいく感じでしたね。

歌の主人公は、いい奴になれないのは自分が悪い奴だからだと思っているんですよ。悪い奴だからいいやつになりたい、変わりたいと思っている…という、その視点が、自分を投影しているなと感じました。だって、人によっては、自分が悪いわけじゃなくて世の中が変わればいいと思うかもしれませんから。いい世の中にしていこうという考え方と、いい奴になるという発想は、違う視点から出てきているんじゃないかなって。

そうした、普段は踏み込まない領域まで、歌詞を書くことで自分を知ることができるし、傷ついていたんだなとか変わりたいんだなと気づかせてもらえました。タイアップだからこそ引き出されるクリエイションがあるなと感じますね」

EP4曲目に収録されている「Treasure」(ドラマ「家電侍」主題歌)もまた、タイアップだからこそたどり着けた、ある意味で挑戦的な楽曲だろう。ほのぼのとした楽曲だが、一聴してビッケブランカだと分からないほど声に加工が施されている。自分の歌声すら大胆に遊ぶ思い切りの良さも、彼の魅力のひとつだ。

「この曲は、ドラマの監督やプロデューサーとアイデアを交換しながら、個性的な声で歌ってみようという話になりました。出来上がった曲を聴いたときは、みんなで『楽しい曲だね』って大笑いでしたね(笑)。テーマは家族への愛で、僕も家族が大好きだから、すごく素直な気持ちを込めて作れました。

このEPからも感じてもらえると思いますが、いい意味で僕の楽曲には決まった方向性や個性がないんですよね。突飛なアイデアを形にすることも、丁寧に歌うことも、みんなと騒ぐことも好きだし、それは僕自身が望むことでもあります。確か…、宝塚歌劇団の皆さんがモットーとしている『しなやかに凛と』という言葉があって、すごく好きなのですが、柔らかく柔軟性がありながらも強さがある。そんなアーティストでありたいなと」

最新EP『Unitrd』をリリースするビッケブランカ 撮影=西村康
最新EP『Unitrd』をリリースするビッケブランカ 撮影=西村康

自分のやり方を通せる環境にありがたさを感じます

デビューから5年。ビッケブランカが、幅広い音楽性を備え、いつも聴く側に新鮮な驚きをくれるびっくり箱のようなアーティストであることは、知られるようになってきた。しかしながら、その多彩さは彼の魅力であると同時に、諸刃の剣でもあるという。それは、どういう意味なのだろうか。

「リリースごとにまるで違った方向性の曲を出す、捉えどころのないアーティストである僕を支える、ビッケブランカ・チームのスタッフは、すごく大変だろうなと思います。だって、プロモーションをするときに、『こういうアーティストです』って言えないと、すごく苦労すると思うから。だから、とても感謝しているし、自分のやり方を通せる環境にありがたさを感じます。

実は、『まっしろ』で注目してもらったとき、それに近いミドルテンポの曲を続けて出した方が成功する近道だろうという提案もありました。でも、それに従ったらずっとそういう曲を求められるのかな…と。飽き性の僕には、退屈に思えたので、周囲を説き伏せて、半ば強引に『Ca Va?』というエキセントリックな曲を出すことにしました。結果的に、タイアップも付いてたくさんの人に聴いてもらえて本当に良かった。あれ以来、僕は一定の路線にはまらない、『路線のないアーティスト』になったんだと思います(笑)。

今回のEPのタイトルを『United』、団結という言葉にしたのは、そうした大変な思いをしながらも支えてくれるチームのみんなと、5周年を迎えた今、気持ちを新たに団結したいと思ったからです。もともと、団結はチームの合言葉だったりするんです。それに、この4曲も個性がバラバラなので、それをEPとして団結させたいという意味もあります。何より、これまで応援してくれたみんなと、もっと団結したいという思いもすごく強いですね。10月30日には、初のアリーナ公演で新たに立ち上げたイベント『RAINBOW ROAD』も控えているので6周年に向けてステップアップした姿をお届けしたいですね」

最新EP『Unitrd』をリリースするビッケブランカ 撮影=西村康
最新EP『Unitrd』をリリースするビッケブランカ 撮影=西村康

自分も体力の限界まで追い込んで、みんなを『ひーひー言わせたい』(笑)

ライブは、ビッケブランカの多彩さをよりダイレクトに体感できる空間だろう。EP『United』には、昨年11月にLINE CUBE SHIBUYAで開催された「FATE TOUR 2147」のライブ音源も収録されている。これを聴きながら、8月からの全国ツアーを予測するのも楽しそうだ。

「ライブは、毎回楽しいです。『FATE TOUR』では、自宅で作ったオープニングの新曲を披露することもできたし、みんなとすごく楽しかった記憶がありますね。

僕がライブを作るときは地続きになっていて、ずっとワクワクできるものを考えます。僕自身が飽き性だから、好きなアーティストが目の前で歌っているだけでは、途中でだんだん物足りなくなっちゃうんですよ。だから、僕はライブの途中で入れるMCの流れも大切にしているし、最後のブロックではランナーズハイみたいな感覚でぶち上げる。自分も体力の限界まで追い込んで、みんなを『ひーひー言わせたい』(笑)と思ってライブを作っています。

5周年でいろいろ振り返っている中で、気付いたことがあります。僕は、ずっと根無し草みたいな、その日暮らしみたいな生き方をしてきたけど、そんな僕にとって音楽だけはずっと変わらないなって。今回、新たに演技に挑戦しましたし、コロナ禍で思うように動けないときはeSportsストリーマーもやりましたが、いろいろなところに踏み出せるのも音楽という絶対的に還れる場所があるからなんです。

思えば小学2年生くらいのときから、既に音楽が僕の中心だった気がします。クラスメイトに、自分が好きなマイケル・ジャクソンの歌と振りを覚えてもらって、一緒に披露して楽しんでましたから。しかも、家庭科の授業参観のときに(笑)。授業が終わろうというとき、突然、『先生、少し時間をください』と手をあげて、10秒くらいの短い時間でしたが、仲間と踊ったらクラス中がざわついた(笑)。そういうことが、すごく楽しかったんですよ。根無し草だと思っていたけど、1本だけ根を、深く深くおろしていたんだなって。

その根を育てるためにも、10月30日、僕にとって初めてのアリーナライブとなる東京ガーデンシアターは、『Vicke Blanka presents RAINBOW ROAD -軌- 』として、ビッケブランカ主催の新しいイベントをスタートさせることにしました。このイベントは、年に1、2回、定期的に開催されることが当たり前になるようにしたいですし、たくさんの人が『RAINBOW ROAD』を楽しみにしてくれるような未来にしたい。6周年に向けて、久しぶりに具体的な目標ができたので、それに向かってみんなと強く団結して前に進みたいですね」

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