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LGBT、人種、血縁...。吉川トリコが多様性を描き切った最新作。

  • 2022.8.14
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『余命一年、男をかう』で第28回島清恋愛文学賞を受賞するなど、いま注目の吉川トリコさん。2022年8月10日に最新作『流れる星をつかまえに』(ポプラ社)が刊行された。本書は、多様性を描き切った連作短編集。

女性をテーマに描き続けてきた吉川さんが、多様性について書き、生きづらさを抱えた人たちに光を当てた本作。ジェンダーや人種の問題、社会の分断、多様な価値観......。葛藤に苛まれる人たちが前に進んでいく様子を、エネルギッシュに描いている。

家族仲がしっくりいかず、生き方に迷う主婦。16歳になる直前まで自分が在日韓国人だと知らなかった姉妹。ゲイであることに葛藤する男子高生。血の繋がった子どもを持てなかった母親。卒業式の日にプロムを開催すべく奮闘するモーレツ女子高生たち――

ままならない日常に悩み惑う、さまざまな人たちが登場する本書は、自分以外の人の人生について考えるきっかけになるだろう。コロナ禍や戦争など、不安定な社会情勢の今こそ読みたい作品。

「とりわけ小説でも映画でもなんでもいいけれど、『物語』というものは他者の人生を垣間見ることで想像力の幅を広げ、すぐ近くの隣人を慮るための訓練のようだと思う。この小説が、だれかにとってのそういう一冊になれたらと願っています」
――吉川トリコ

■吉川トリコさんプロフィール

1977年静岡県生まれ。名古屋市在住。2004年「ねむりひめ」で「女による女のためのR‐18文学賞」第3回大賞および読者賞を受賞。同年、同作が入った短編集『しゃぼん』にてデビュー。21年、愛知県芸術文化選奨文化新人賞を受賞。主な著書に、映画化された『グッモーエビアン!』のほか、『少女病』『ミドリのミ』『ずっと名古屋』『光の庭』『女優の娘』『夢で逢えたら』「マリー・アントワネットの日記」シリーズなど多数。22年第35回山本周五郎賞にノミネートされた『余命一年、男をかう』は第28回島清恋愛文学賞を受賞し、コミカライズされるなどと話題に。

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