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『魔女の宅急便』を彷彿させる?黒猫が誘う新たな世界への冒険を描く『ラック~幸運を探す旅~』、監督&キャストにインタビュー

  • 2022.8.14
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自他共に認める“世界一不運な女の子”サムは、黒猫のボブに連れられて“運の国”に迷い込む。児童養護施設で育ったサムは、新しい家族に迎えられる友人のために、幸運のコインを手に入れようとするが…。スカイダンス・アニメーションによるApple TV+用のアニメーション映画『ラック~幸運を探す旅~』のペギー・ホームズ監督とボイスキャストの面々が、バーチャルで行われた取材で映画の成り立ちやそれぞれの人生観について語ってくれた。

【写真を見る】人生観が変わるかも。Apple TV+のアニメーション映画『ラック~幸運を探す旅~』

「黒猫を演じるにあたって思い出したのは、日本のあの名作」

主人公のサムを演じるエヴァ・ノブルザダは、ブロードウェイの『ミス・サイゴン』でミュージカルに初出演し、トニー賞にノミネートされた俊英。これまで舞台でキャリアを積んできたノブルザダは、初の映画出演が声優だった。「舞台の演技と声の出演は、完全に違うものです。舞台では身体のすべてを使って感情や物語を伝えようとしますが、アフレコでどんなに身体を動かしても、声しか録音されません。そのことに気がついて、声にどのように感情を込めていくのかとても悩みました。悩みながらも、とても大きなことを学んだと思っています」と告白し、実写映画に挑戦する際は「絶対にトム・クルーズと共演したいんです。彼のようなキャリアを積んで、彼のように稼ぎたい(笑)」と抱負を語る。

 主人公のサムを演じるのはエヴァ・ノブルザダ [c]Apple TV+
主人公のサムを演じるのはエヴァ・ノブルザダ [c]Apple TV+

黒猫が誘う新しい世界への冒険と気づき…勘のいい方ならあの作品を思いつくかもしれない。ボブを演じるサイモン・ペッグは、「宮崎駿監督の大ファンとして、『魔女の宅急便』のジジを思い出していただけたのはとても光栄です」と言い、両腕に入っている『千と千尋の神隠し』と『もののけ姫』のタトゥーを見せてくれた。『千と千尋の神隠し』は、ペッグと彼の娘が一番好きなアニメーション映画で、何度も繰り返し観ているのだそうだ。「黒猫のボブ役をオファーされた時、アニメ史の偉大なキャラクターの伝統を受け継ぐものだと身震いしました」と笑う。

 黒猫ボブを演じるのはサイモン・ペッグ [c]Apple TV+
黒猫ボブを演じるのはサイモン・ペッグ [c]Apple TV+

ペッグは、ノブルザダや他のキャストに比べ、『アイスエイジ』シリーズや『タンタンの冒険/ユニコーン号の冒険』(11)などの出演でボイスアクトの経験が豊富だ。それでも、声での演技は3作目から出演しアクションをこなす『ミッション:インポッシブル』と比べても、とても難しいという。「アニメーターが僕らの動きを参考にしてキャラクターに活かすために、実際に動いてみることもありますが、基本的に自分1人の声だけでキャラクターを表現しなければなりません。『ミッション・インポッシブル』のような映画は、ほかの俳優と一緒に演技やスタントをする非常にオープンな撮影ですが、アニメーションはたった1人でずっと演技をしているので、不思議な感じがします」。さらに、アフレコは別々に録音することが多いため、「ウーピー(・ゴールドバーグ)とジェーン(・フォンダ)には会ったことがあるけれど、エヴァとは映画が出来上がるまで実際に会っていなかったんですよ」と、画面の中でとても良いケミストリーを築いている2人の意外な事実を明かした。

 ドラゴンを演じるのはジェーン・フォンダ [c]Apple TV+
ドラゴンを演じるのはジェーン・フォンダ [c]Apple TV+

幸運のコインと黒猫に導かれサムが入り込んだ世界、“運の国”には躍るウサギやレプラコーンのキャプテン(声はウーピー・ゴールドバーグ)、愉快なユニコーンのジェフ、そしてエレガントなCEOのドラゴンらがいる。ドラゴンの声を演じるのはジェーン・フォンダ。アニメーション作品には『シンプソンズ』以来の参加というフォンダは、「強さと脆さを持ったCEOという役柄に惹かれて、ドラゴンを演じられたら楽しそうと思いました。このドラゴンはどんな女性なのかと考えたときに、少しばかり虚栄心がある女性として演じようと思いました。気を引きたい時に尻尾をパタパタ動かすのは、私のアイデアなんですよ」と、役作りを語る。映画の中のドラゴンのようにシャキッとしたフォンダは、今年85歳。映画界のレジェンドといえる彼女だが、「60年俳優をやってきて、いまがキャリアの最終章だと思っています。だからこそ、自分が楽しいと思えること、そして自分自身に挑戦することをしたいんです」と、声優に挑戦した理由を述べる。

「光と闇があってこそ、人生」

プチ不幸に見舞われがちなサムの物語に、劇中でサムとウサギたちが80年代の名曲を歌って躍るような躍動感を与えたのは、元ダンサーで振付師出身という異色のキャリアを持つ監督のペギー・ホームズの力が大きい。ディズニーで『ティンカー・ベルとネバーランドの海賊船』(14)や『リトル・マーメイドIII/はじまりの物語』(08)といった作品を手がけてきたホームズ監督は、「サムの身体的な動きで彼女のキャラクターを表したかったのです。例えば、ルシル・ボールやバスター・キートン、チャーリー・チャップリンのように。脚本チームと、自分たちの日常で起きた、笑えるプチ不幸ネタを集めてストーリーを作りました」と語る。この映画の制作中にホームズ監督が見舞われた不運は、「Zoomミーティング中に、ついエキサイトして身振り手振りで話すから、いつもコップを倒してしまう(笑)。サムと一緒で、不運じゃなくて不器用なだけなんですけどね」と言い、周囲を笑わせていた。

サムとウサギたちが80年代の名曲に合わせて歌い躍る [c]Apple TV+
サムとウサギたちが80年代の名曲に合わせて歌い躍る [c]Apple TV+

パンデミック中に誰もが経験したZoomによる打ち合わせもとても楽しい時間だったと、ユニコーンのジェフを演じたフルーラ・ボルクが振り返る。ボルクは、ドイツのコメディアンであり俳優として『ピッチ・パーフェクト2』(15)や『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(21)に出演している。ホームズ監督に負けないくらいユーモアに満ちたボルクが演じるジェフは、映画内随一のコメディリリーフだ。「ペギー(・ホームズ監督)の熱意が画面からも伝わってきたのと、(彼女がコップを倒すならば)僕は常にカップケーキとベーグルを手にしていて、誰かが喋っている間に密かにつまみ食いをしていました。ペギーは行儀をたしなめるどころか、『良いパフォーマンスにはカロリーが必要よ!』と奨励してくれました。最高でしたね!」。

ユニコーンのジェフ(声:フルーラ・ボルク ) [c]Apple TV+
ユニコーンのジェフ(声:フルーラ・ボルク ) [c]Apple TV+

そして映画のテーマでもある“幸運”について、ペッグはこう語る。「車で家に帰る道中に信号がすべて赤だと、『俺に対するなんらかの陰謀か!』と思ったりしますよね(笑)。いまの生活を振り返ってみると…妻との出会いが“幸運”に当たるかもしれない。1999年か2000年のことだと思いますが、『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)を一緒に作ったニック・フロストとロンドンのハイストリートを歩いている時に、ふと思い立って旅行代理店に立ち寄って休暇の計画を立てました。その旅行中に妻と出会い、いまでは子どももいるのだから。この小さな決断がのちに大きなものをもたらしたと考えると、あれは運に導かれたと思いたくなります。だけど、こういうのは偶然の産物で、チャンスがやってきた時に最大限に活かすことが大事なのです。僕らは、与えられた運に責任を持たなくてはいけません。あの時のことを考え直すと、その心づもりで運を掴んでなかったら、いまのこの状況はなかったと思います。それが僕にとっての“幸運”です」と、持論を語ってくれた。同じように、フォンダにとっても幸運も不運も対立するものではないと考えているそうだ。「幸運と不運、黒と白、死と生。人生においては、それらすべてが組み合わさっています。不運がなかったら、幸運のありがたみもわからないでしょう。つまり、光と闇があってこそ、人生と言えるんじゃないでしょうか」と語る。

 人生を見つめ直すきっかけをくれるかも [c]Apple TV+
人生を見つめ直すきっかけをくれるかも [c]Apple TV+

運の捉え方は人生観とも言える。サムは幸運のコインと、日本を含むいくつかの国では不運を運ぶと言われる黒猫とともに、運を左右するメカニズムを知る。サイモン・ペッグが演じるスコットランド訛りの黒猫に導かれ軽快なアニメーションの世界を旅するうちに、サムのように運に対する考え方が少し変わるかもしれない。

取材・文/平井伊都子

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