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市川染五郎『三谷かぶき』出演がつないだ大河への縁 三谷幸喜作品の魅力は「どのキャラクターも愛しい」

  • 2022.8.11
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「鎌倉殿の13人」で源義高を演じた市川染五郎 撮影=曽我美芽
「鎌倉殿の13人」で源義高を演じた市川染五郎 撮影=曽我美芽

【写真】流し目がはっとする美しさの市川染五郎

8月12日(金)から18日(木)の1週間限定で、シネマ歌舞伎「三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち」が全国の映画館で上映される(東劇のみ9月1日[木]まで上映)。2019年に三谷幸喜が作・演出を務め上演された本作は、江戸時代、異国の地ロシアに漂流した日本人船乗りたちが、さまざまな困難に直面しながらも故郷を目指す姿を描いた冒険コメディ。WEBザテレビジョンでは、本作での三谷との出会いをきっかけに、のちに大河ドラマ「鎌倉殿の13人」へ出演することとなった市川染五郎にインタビューを実施。「鎌倉殿」では木曽義仲の息子・義高を演じ、凛とした美しさと悲劇的な最期で話題を集めた彼は、三谷作品の魅力を「キャラクターひとりひとりの個性が際立っていて、どの人も愛しいところ」と語った。

三谷の演出は「接続詞が大事」

――普段の稽古と、シネマ歌舞伎「三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち」の稽古に違いはありましたか?

期間が1か月くらいありました。現代的な言葉のお芝居が初めてだったので、脚本と演出を担当された三谷さんや、共演の八嶋智人さんにお芝居の基本的なところから教えてもらいました。衣装が洋装っていうのも初めてで不思議な感じがありましたね。稽古のときは、普段は浴衣でやることが多いんですけど、今回は基本ジャージで参加していました。新作の歌舞伎のときは、みなさんTシャツにジャージでお稽古される方も多いですね。

――実際に舞台を見させていただいて、笑いのシーンが印象に残りました。

笑いのシーンを特別に稽古するということはなかったんですが、先輩方の作るテンポや空気感が自然とできあがっていって、自分もそこに自然に乗せてもらった感じでした。

――三谷さんの演出をそのときに初めて受けられていかがでしたか?

三谷さんの演出を受けて、一番「なるほどな」と思ったのは、「接続詞が大事」とおっしゃっていたことです。もちろんセリフで伝えたい内容を伝えることが重要ですが、その前後の接続詞をどう強調すれば、本当に伝えたい内容がお客様に伝わるかということを教えていただきました。今もそこは意識しています。

市川染五郎 撮影=曽我美芽
市川染五郎 撮影=曽我美芽

義高は「父の義仲だったらどうするか」をいつも考えている

――この作品が、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」につながったそうですが、「鎌倉殿」の出演に際して、三谷さんに何か言われたことはありましたか?

シネマ歌舞伎を上映するのは今回が2回目なんですけど、初公開(2020年10月)のときに、映画館で舞台挨拶があったんです。父が登壇したので見に行っていて、その控室で三谷さんに久しぶりにお会いして、大河ドラマに是非出てくださいと言っていただきました。

――そのときは、源義高 (冠者殿)を演じるということはわかってたんですか?

そのときはまだ知りませんでした。その後、正式にオファーをいただいてから源義高という人についていろいろ調べ始めて。本当は11、12歳の役なので、子供っぽく演じたらいいのか、年齢は意識せずに演じたらいいのかなど、いろいろ考えながら作っていきました。

――さきほど「三谷かぶき」のときにいろいろアドバイスをくれたという八嶋さんとも、同じ時期に「鎌倉殿」に出演されていましたよね。

はい。同じシーンもありました。八嶋さんは「三谷かぶき」で共演して以来とても気にかけてくださって、今年の6月に勤めた「信康」という歌舞伎を見に来てくださったりして。ただ、なかなかお話をちゃんとする機会はなかったので、大河で同じシーンがあったのはすごくうれしかったですね。八嶋さんは舞台のときすごく細かいところまで見てアドバイスしてくださるので、とても心強かったです。

――「鎌倉殿」で演じられた源義高に関しては、どのようなことを考えながら演じていましたか?

父親である木曽義仲を心から尊敬しているということは意識して演じていました。実際に脚本に描かれない場面でも、義高は何かを決断するときに「父の義仲だったらどうするか」を毎回考えて行動しているのではないかと意識しながら演じました。

市川染五郎 撮影=曽我美芽
市川染五郎 撮影=曽我美芽

父・松本幸四郎は「ずっと歌舞伎のことを考えている」

市川染五郎 撮影=曽我美芽
市川染五郎 撮影=曽我美芽

――父と息子というと、染五郎さんとお父さんの十代目 松本幸四郎さんとの関係性はいかがですか?

父は、普段の家にいるとき、舞台に立っているとき、お芝居を教えてくれるときとで境目のない人なんです。ずっと松本幸四郎でいて、ずっと歌舞伎のことを考えているから、普段もお芝居を教えてくれるときも変わらないです。だからこそ、自分にとっても歌舞伎が身近な存在だし、小さいときから、すんなりその世界の中に入れているのかなと思います。

――私は以前、13歳くらいのときにも取材をさせてもらったことがあるんですが、染五郎さんはそのころからすごく雰囲気があって。ともすればミステリアスな感じもあると思うんですが、ご自身の素はどんな感じなんでしょうか。

自分ではぜんぜんミステリアスだとは思わないですね。妹からは「おじさん」って呼ばれてます(笑)。若い人たちの流行りを全然知らないですし、妹が見ているものも「この人誰?」とか「この曲何?」って聞いて、驚かれてしまうので、そこから「おじさん」と言われるようになってしまいました。

――逆に最近は、山口百恵さんや沢田研二さんに興味があるそうですね。

今の年代のものより、そのころのものに惹かれてしまうんですよね。山口百恵さんや沢田研二さんの時代は、生放送の歌番組でも、毎回、見せることの熱量みたいなものがあって、時を超えて今映像で見ても、その熱量を感じます。そういうところが光って見えているのかもしれません。

三谷作品の魅力は「どのキャラクターも愛しいところ」

市川染五郎 撮影=曽我美芽
市川染五郎 撮影=曽我美芽

――ご自身も楽器を演奏されるんですよね?

そうですね。三味線や小鼓はもちろんですが、エレキベースとウッドベースも持っています。ジャズが好きなので。でも、単純に好きでやってるだけですね。

――以前のインタビューのときから、演出や脚本にも興味があるといわれていましたが、今も変わらず関心がありますか?

はい。新作も作ってみたいし。「作る」ということが好きなので、絵を描いたりもしていますし、衣裳なんかも作ってみたいなと考えています。

――脚本を誰かに見せたりもされていますか?

最近はなかなか書けていないんですけど、小さい頃は、自分で脚本を書いて、妹と大きなテーブルを舞台にして、ぬいぐるみでお芝居を上演して、家族に見せたりしていました。

――脚本や演出に関心があると、三谷さんの脚本に対しても学ぶところも多いのでは?

やっぱり印象的なセリフがいっぱい出てきますね。三谷さんの作品で自分が好きなのは、キャラクターひとりひとりの個性が際立っていて、どの人も愛しいところなんです。三谷かぶきのときもそうですし、どの作品にも共通する部分だなと思っていて。実際に三谷さんの作品に出させていただいて、愛情を持って書いていただいた役を演じていると、うれしい気持ちになりますね。

「鎌倉殿」効果、若い観客の来場がうれしかった

市川染五郎 撮影=曽我美芽
市川染五郎 撮影=曽我美芽

――染五郎さんは、かなり前から「悲劇」がお好きということもうかがいました。実際に演じられるものも「悲劇」的な役も増えてきたと思いますが、実際に演じられてみていかがですか?

今も好きなんですけど、精神的にはきついところもあります。今年の「信康」は、喜怒哀楽の感情を全部出さないといけない役でした。まず楽しげな雰囲気から始まり、やがて父親の徳川家康の命により、岡崎城から追放される場面があって、そこからだんだんと不穏な空気になっていくんです。二番目の場面は、信康の家臣たちが信康を元気づけようと月見の席を設けてくれるのですが、その後、信康が徳川家のために命を絶とうと決意するところまで悲しさが募っていって、最後は切腹する場面になるので、計3回それぞれの悲しい場面に向けて熱を上げたり、冷ましたりというのが繰り返されるのは、演じがいもあるけれど、きついところもありました。

――そういうときっていうのは、演じ終わってもひきずったりするんですか?

家までは持ち帰らないので、家に帰れば普段と変わりないんですけど、最後に切腹して終わったときには、魂が抜けた感じはありましたね。

――「鎌倉殿」を経て、「信康」などの歌舞伎にも、その反響がありますか?

やっぱり大河を見てくださった方はすごく多いですね。「信康」にも、今までよりも若いお客様が多く来てくださっていました。若いお客様に歌舞伎に来てもらうというのは、自分の一つの目標でもあるので、すごくうれしかったです。自分はあまりSNSは見ないので、反響を把握できているわけではないですが、ドラマをきっかけに歌舞伎を新たに見に来てくれた方がいて、また見に行きたいと思ってくれていたらうれしいです。

――この「三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち」もそんな方が見にこられるといいですね。

この作品も、実際に演じたときの熱量や迫力がそのままに映像に収められている作品になっていると思いますし、それにプラスして映像ならではの臨場感も感じられると思います。セリフも現代の言葉で書かれていますし、笑いの場面も多いですし、すごく見やすい作品です。もし、歌舞伎に固いイメージを持ってらっしゃる方がいたら、そういう方にも気軽に見てもらえる作品になっていると思います。

市川染五郎 撮影=曽我美芽
市川染五郎 撮影=曽我美芽

■取材・文/西森路代

撮影/曽我美芽

ヘアメイク/AKANE

スタイリスト/中西ナオ

衣裳/シャツ33000円、パンツ26400円、ジャケット55000円(すべてガラアーベント/サーディヴィジョンピーアール) 、リング 31000円(サーディヴィジョンピーアール)

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