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ディズニーはどうしてレプリゼンテーションを適切に反映できる?ドラマ版『ハイスクール・ミュージカル』責任者が明かす秘密【取材】

  • 2022.8.11
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ディズニープラスでシーズン3の配信がスタートしている『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』は、どうしてレプリゼンテーション(表象)を適切に描けている? ショーランナーであるティム・フェデラーにインタビュー。(フロントロウ編集部)

『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』シーズン3では全エピソードに女性監督を起用

オリジナルの『ハイスクール・ミュージカル』シリーズでアシュレイ・ティスデイルが演じたシャーペイ役に男性であるジョー・セラフィニを抜擢したり、そのジョーが演じたセブに同性パートナーであるフランキー・ロドリゲス演じるカルロスがいたりと、多様な人たちのレプリゼンテーションを作品を通して描いているディズニープラスのドラマ『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル(以下、HSMTMTS)』。

画像: 『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』シーズン3では全エピソードに女性監督を起用

シーズン2でワイルドキャッツが『美女と野獣』のミュージカルを上演した際には、ジュリア・レスター演じるプラスサイズのアシュリーをベル役に抜擢して、多様な体型のレプリゼンテーションを取り入れたことでも称賛を集めた本作だが、先月よりディズニープラスにて独占配信がスタートしたシーズン3では、『アナと雪の女王』がミュージカルのテーマに。エルサとアナの姉妹が主人公である同作の世界観に合わせるように、今シーズンはすべてのエピソードで女性監督が起用されている。

フロントロウ編集部では本作のショーランナーを務めるティム・フェデラーに話を訊く機会があったので、今シーズンの全エピソードに女性監督を起用した経緯について訊いてみると、「私たちは舞台裏とキャストの両方において、可能な限りの多様性を反映できるように取り組んでいます」と答えてくれた。

「ハリウッドにおいては、女性監督のレプリゼンテーションが未だに低いという現状があるので、(複数のエピソードで指揮を執った女性監督の)キンバリー・マカローやディズニーと協力して、キャスティングやクルーの起用において変化を起こせるよう、(ハリウッドの現状とは)異なるアプローチをできるように心がけました。監督たちは言うまでもなく全員が一流の人たちで、まさにオールスターという陣容ですし、そんな彼女たちが集結したのは圧巻でしたね」。

『アナと雪の女王』を選んだ理由は“シスターフッド”

女性監督たちが全エピソードで指揮を執った今シーズン、ワイルドキャッツたちはキャンプ場で出会う新しい仲間たちと一緒に『アナと雪の女王』のミュージカルに挑戦するが、『アナと雪の女王』をテーマに選んだ理由について、同作で描かれるエルサとアナの「シスターフッドというテーマに共感」したからだとティムは説明する。

画像: 『アナと雪の女王』を選んだ理由は“シスターフッド”

「必ずしもロマンチックなものではない愛がテーマです。今シーズンは、ジーナやコートニー、アシュリーに加えて、マドックスと、メグ・ドネリーが素晴らしい演技を披露してくれたヴァルという新しいキャラクターたちによる女性同士の絆を見てもらえるはずですよ」。

シーズン3でワイルドキャッツたちはキャンプ場で初めての共同生活を送るが、子どもたちが初めての環境で協力しながら生活するという状況も、シスターフッドを描くのに打ってつけだと考えたという。「サマーキャンプのために初めて家を離れた子どもたちについての物語を描く上で、シスターフッドは興味深いテーマになると思いました」とティムはフロントロウ編集部に明かした。

若者たちのリアルを描く上で心がけていること

『HSMTMTS』ではあらゆるレプリゼンテーションを見ることができるが、そうしたレプリゼンテーションを適切に描けているのは、当事者たちが脚本や撮影に参加しているというのも理由の1つ。「多様なライターを脚本家に起用しています。それからLAでの実際の撮影現場においても、これまで以上に多様なバックグラウンドを持つクルーを起用しています。あらゆるジェンダーや民族、アイデンティティの人たちが集まっていますよ」とティムは説明する。

ドラマの最高責任者として、ティムは自分でもリサーチすることを欠かさない。「時には現場でのリサーチも行ないます」と続けたティムは、その方法について次のように教えてくれた。「私には18歳と21歳のいとこがいるのですが、シーズンが始まる前には必ずいとこたちに会って、今日の若者たちが抱えている問題や不安について話を訊くようにしています」。

子どもたちが観るような作品で、世の中のレプリゼンテーションが適切に反映されていることはとても大切なこと。ティムはリアルな世の中を描くことを最も大切にしているといい、「私たちが伝えているのは前向きなミュージカルを通じた物語ですが、究極的には、現代の若者たちが経験しているリアルな現状を反映することを目指しています」と語った。

画像: 若者たちのリアルを描く上で心がけていること

ちなみに、ゲイであることを公表しているティムは、自身の小説を基にした自伝的な監督作『ブロードウェイ ドリーム!』もディズニープラスで配信されている。『HSMTMTS』で主演を務めるリッキー役のジョシュア・バセットも出演する同作も、LGBTQ+のレプリゼンテーションを描いて称賛を集めたが、ティムは今後も、自身が手がけるそうした作品に『HSMTMTS』のキャストを起用したいと考えているという。

「今は『HSMTMTS』のシーズン4の脚本を書くのに忙しいのでまだ定かではありませんが、(別作品についても)構想はあります」とティムは明かす。「ジョシュアを『ブロードウェイ ドリーム!』に起用したのは、才能のある俳優である彼が日々のセットに良い雰囲気をもたらしてくれることを確信していたからですが、(『HSMTMTS』のキャストたち)全員が同じだと言えますよ。才能のある人たちが集まっていますし、どんどん力をつけていく彼らを見届けられるのは喜ばしいことです」と、『HSMTMTS』の俳優陣に太鼓判を押した。

『HSMTMTS』や『ブロードウェイ ドリーム!』など、今まではあまり描かれてこなかったような人々のレプリゼンテーションを高める作品が続々と配信されているティムの次回作も楽しみにしたいところ。彼の最新作である『HSMTMTS』シーズン3は現在、第3話までディズニープラスにて独占配信中。新着エピソードは毎週水曜日に配信される。(フロントロウ編集部)

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