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「レバナス」ブームを検証! 「取らなくてもよい」リスクという落とし穴

  • 2022.8.10
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長年ネット証券に身を置きながら、こんなことを言うのは自分でも違和感があるが、最近はネットの世界の「拡散力」につくづく驚いている。「老後資金2000万円問題」や新型コロナウイルスのまん延など、さまざまな要因が重なったとはいえ、SNSやYouTubeの後押しによって、つみたてNISAと、つみたてNISAの中で積み立てるインデックスファンドが資産形成の手段として市民権を得たことは間違いない。

そのネットの世界で昨年以降、じわりじわりと認知されるようになったのが、レバレッジ型の投資信託だ。

きっかけは昨年、SNS界隈でNASDAQ100指数のレバレッジ型投信が、「レバナス」の通称で広く「拡散」されたことにある。ネット証券では以前から日本株を対象としたブル・ベア型投信が一定の投資家層に人気で、マーケットのボラティリティが高まると活発に取引される傾向があった一方、約3年前までは買付手数料がかかっていたことに加え、積立の対象外銘柄ということもあり、幅広い投資家に利用されているとは言い難かった。それが、右肩上がりで上昇するナスダック市場の強力な後押しもあって、NASDAQ100指数のレバレッジ型がピンポイントで注目されたというわけだ。

しかし、筆者は今もなお、このブームにどこか居心地の悪さを覚えている。

相場環境に応じた迅速な投資判断が求められる

まずはここで、レバレッジ型投資信託の商品性について確認しておこう。

レバレッジ型とは、商品先物取引などを活用し、レバレッジ(てこの原理)を利かせ、投資資金の何倍もの投資効果を追求する投資信託を指す。この倍率は商品によって異なるが、近年増えている海外の株価指数を対象としたレバレッジ型の場合、2倍から3倍で設計されているものが主流になっている。日々の基準価額の値動きが、連動を目指す指数の値動きの2倍から3倍になるよう運用がなされるため、基準価額の値動きが荒く、リスクが高い。一般的に投資信託では中長期投資が推奨されるが、レバレッジ型は相場環境に応じた迅速な投資判断が求められる、数少ない投資信託でもある。

「レバナス」は元々、大和アセットマネジメントが2018年10月に設定した「iFreeレバレッジ NASDAQ100」を指す通称として、先述した通りネットの世界で広まった。その後、2021年11月には楽天投信投資顧問が「楽天レバレッジNASDAQ-100」の運用を開始。当ファンドの正式な愛称が「レバナス」のため、ネットの世界で「レバナス」といえば、現在は主にこの2ファンドのことを指す。

「レバナス」が従来の日本株ブル・ベア型と異なるのは、積立に対応しているという点だ。理論上、価格変動が大きいほうが積立効果を期待しやすいので、レバレッジ型投信で積立を行うこと自体を真正面から否定するつもりはない。しかし、若年層に広くレバレッジ型投信の長期積立を促してもよいかというと、それは少し違うのではないか。レバレッジは、必ずしもすべての投資家が自発的に取りに行くべきリスクではない。冒頭で触れた、筆者が覚える居心地の悪さは、まさにこの点にある。

レバレッジ型のイメージは「圧力鍋を使った料理」

投資の世界で一般的なレバレッジという取引・運用手法について、理解をすることは当然重要だ。ネット証券では、FX(外国為替証拠金取引)、信用取引、先物・オプションなどのサービスも展開しているし、過去を振り返れば、これらの商品やサービスで幾度となく深刻な問題も起きている。投資家保護の継続的な議論はむろん欠かせないが、少ない元手で高いリターンを追求することが何を意味するのか、投資家側もそのリスクについて十分に理解する必要がある。また、別の見方をすれば、効率的な運用を可能にするという点で、レバレッジは有効である。

そこで筆者は、個人投資家向けのセミナーで、レバレッジ型投信のことを「圧力鍋で料理をするイメージ」と伝えている。圧力鍋は鍋を密封して圧力を加え、沸点を上げることで短時間の調理を可能にする。とても便利だが、使い方を間違えると、料理が失敗に終わるどころか食材が全て無駄になる。

レバレッジ型投信も同じだ。十分な知識が無かったり、使い方を間違えたりすると、想像以上のスピードで含み損が膨らんでしまう。FXや信用取引のように追加証拠金が必要となることはなく、投資資金以上の損失が発生することこそないものの、資産形成の延長で広く一般投資家に勧められる商品かというと、やはり違う。

積立についても同様だ。レバレッジ型投信も、レバレッジのかかっていない通常のインデックスファンドも、積立の終盤フェーズで対象の指数が上昇しないとリターンは期待できないということに変わりはない。さらに、レバレッジ型は、株価指数が上昇と下落を繰り返す、いわゆるボックス圏相場だと「負の複利効果」が働いてしまい、基準価額が日々少しずつ下落してしまう。株式市場が一方向に動かないとリターンを見込みにくいのである。まずはこうしたレバレッジの原理原則について、もっと根気強く啓発すべきではないだろうか。

「レバナス」で失敗しないためのポイントとは?

最後に筆者が考える、「レバナス」を含む海外レバレッジ型投信で大きな失敗を避けるために覚えておきたいポイントを解説する。

ポイント①:「ポジションを持っている」という感覚をもつ

投資信託の場合、信用取引のようにいつまでに建玉を決済しないといけないという期限はない。しかし、レバレッジ型投信の仕組みそのものは、先物を買い建てていることと変わりはなく、株価の方向性によっては短期間で基準価額が大幅に毀損(きそん)するリスクを持ちあわせている。したがって、購入前にあらかじめ「基準価額が○%下がったら、損失が出ていても売る」というルールを自分なりに決めておくことも必要だ。買ったままで安心せず、「ポジションを持っている」という緊張感をもち続けることが重要である。

ポイント②:積立を過信しない

先述した通り、株価指数の動き方によっては、レバレッジ型投信を保有、あるいは積み立てていることが不利に働く。特に、株価が上下を繰り返すような相場環境においては、追加的なコスト(信託報酬)を負担してレバレッジ型を積み立てるよりも、シンプルなインデックスファンドのほうがコストも安く、素直にリターンを享受できる可能性が高い。また、積立に充てられる期間によっても、やはりレバレッジの効いていない、シンプルなインデックスファンドで積み立てたほうが有利なケースは多い。

ポイント③:指数の投資妙味とレバレッジは分けて考える

「レバナス」の積立を推す理由の1つとして、NASDAQ100指数の長期的な投資妙味が挙げられることが多い。確かに、長期目線に立てば、NASDAQ100指数には十分に投資妙味があるだろう。

しかし、株価指数そのものの投資妙味と、レバレッジをかけるかどうかは全く別の話である。繰り返しになるが、レバレッジをかけた場合、株価が一定の方向に動かないと期待通りのリターンは得られない。10年単位の長期的な株価指数の見通しと、足元でレバレッジをかけるかどうかは分けて考えたほうがよい。

どんなに便利なツールでも、基本的な使い方を理解していないと、思わぬ結果になったときになぜそうなったかが分からず、思考が停止してしまう。

圧力鍋がなくても料理はできる。投資家自身がネット上に拡散される情報に惑わされることなく、自分に何が必要かを見極められるよう、着実に基本を押さえる投資啓発を続けていきたい。

篠田 尚子/楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト

慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【最新版】本当にお金が増える投資信託は、この10本です。』(SBクリエイティブ)。

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