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話題のマルチバースを取り入れたシニカルな物語がおもしろい!大人向け奇天烈アニメ「リック・アンド・モーティ」の名エピソードたち

  • 2022.8.10
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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(22)といった最近のMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)作品の鍵を握っている“マルチバース”。多元宇宙やパラレルワールドとも呼ばれ、自分が生活を送っている宇宙以外にも、無数の宇宙が並行して存在するという考え方だ。そんな話題のマルチバースをMCU以前から物語に組み込み、ぶっ飛んだ世界観を築き上げてきたアニメーション・シリーズ「リック・アンド・モーティ」をご存知だろうか?

【写真を見る】MCUよりも早く“マルチバース”を取り入れた「リック・アンド・モーティ」とは?

【写真を見る】MCUよりも早く“マルチバース”を取り入れた「リック・アンド・モーティ」とは? [c]Everett Collection/AFLO
【写真を見る】MCUよりも早く“マルチバース”を取り入れた「リック・アンド・モーティ」とは? [c]Everett Collection/AFLO

続々とMCUへ才能が流出中!大人向けアニメ「リック・アンド・モーティ」とは?

アメリカのアニメ専門チャンネル「カートゥーン ネットワーク」における大人向けの番組を編成するために作られた放送時間帯「アダルトスイム」にて、2013年にシーズン1が放送され、現在までに5シーズンが制作されている「リック・アンド・モーティ」。主人公は宇宙一の頭脳を持つ天才科学者だが、アルコール依存症で自己中の老人リック・サンチェスと、彼の孫で冴えないナヨナヨ系ティーンエイジャーのモーティ。この凸凹コンビが宇宙や次元を超えた空間を舞台に、危険な冒険に繰りだしていくのが物語の本筋だ。そのうえで、エロ、グロ、バイオレンス、シニカルな笑いがごちゃ混ぜになった、倫理観から逸脱した展開が次々に繰り広げられていくのが特徴で、ブラックかつ哲学的でもあるSFアニメという点から、さながらイカれた「ドラえもん」といったところだろう。

宇宙空間や人間の体内までありとあらゆる世界が登場し、時には『インセプション』(10)や『トータル・リコール』(90)といった名作映画をパロディにしながら、ぶっ飛んだ物語が紡がれていく本作。マルチバースもシーズン1から物語に取り入れており、そのアイデアを生かしたユニークな展開の数々は観る者のド肝を何度も抜いてきた。

パラレルワールド間の移動を可能とするポータルガンで、様々な世界を冒険 [c]Everett Collection/AFLO
パラレルワールド間の移動を可能とするポータルガンで、様々な世界を冒険 [c]Everett Collection/AFLO

複雑なマルチバースをわかりやすく、なおかつおもしろおかしく噛み砕き、痛烈なメッセージも盛り込んだ物語として描いてきた本作のクリエイター陣には、近年のMCU作品にも関わっている者も多い。例えば、脚本家のマイケル・ウォルドロンはドラマシリーズ「ロキ」で脚本と製作総指揮、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』でも脚本を務めるなど、マルチバースど真ん中の作品を担当している。

ドクター・ストレンジのマルチバースを股にかけた活躍が描かれる『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』 [c]Everett Collection/AFLO
ドクター・ストレンジのマルチバースを股にかけた活躍が描かれる『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』 [c]Everett Collection/AFLO

また、原案のダン・ハーモンもアンクレジットながら『ドクター・ストレンジ』(16)にかかわり、エミー賞受賞の名作エピソード「ピクルス・リックの冒険」の脚本を務めたジェシカ・ガオも、8月18日(木)より配信される「シー・ハルク:ザ・アトーニー」のクリエイターに抜擢されている。同じくシリーズの脚本家でプロデューサーのジェフ・ラブネスも『アントマン・アンド・ザ・ワスプ:クワントゥマニア』(公開日未定)の脚本を任されるなど、現在のエンタメ界を引っ張る才能を次々と生んでいるという点でも、チェックしておきたい番組なのだ。

ロキがマルチバースを監視する組織に連行されたことから物語が始まる「ロキ」 [c]Everett Collection/AFLO
ロキがマルチバースを監視する組織に連行されたことから物語が始まる「ロキ」 [c]Everett Collection/AFLO

世界中の人々が“クローネンバーグ”化してしまう「ホレ薬」

そんな「リック・アンド・モーティ」からマルチバースの妙味を堪能できる名作エピソードをチェックしていきたい。まず紹介したいのが、この作品で初めてマルチバースについて言及されたシーズン1の第6話「ホレ薬」だ。

片想いの相手にモテるため、リックに頼んで惚れ薬を作ってもらったモーティ。薬の効果は抜群だったが、インフルエンザウイルスと共に広がりすぎてしまい、モーティは学校中の人たちに迫られてしまう。この危機にリックは、カマキリのDNAを使用した解毒薬を散布するも失敗。感染した人たちはまるでデヴィッド・クローネンバーグの映画に出てきそうなグロテスクなモンスターに姿を変え、世界は世紀末を迎えてしまう…。

このままバッドエンドを迎えるのかと思いきや、ここからがこのエピソードの真骨頂。なんと世界を元通りにすることをあきらめたリックは、不慮の事故で死んでしまったリックとモーティがいる別次元へとモーティと訪れ、この次元の彼らとして生きていくことを選ぶのだ。

自らのせいでもたらされた世界の危機を救うのではなく、別の次元へ逃げて一件落着という自己中心的かつブラックすぎる幕切れとともに、マルチバースが存在する世界であることが鮮やかに明かされたこの名エピソード。多くの人が「リック・アンド・モーティ」のヤバさを思い知ることになった。

遺伝子レベルでハエと融合してしまった男の恐怖を描くデヴィッド・クローネンバーグ監督作『ザ・フライ』 [c]Everett Collection/AFLO
遺伝子レベルでハエと融合してしまった男の恐怖を描くデヴィッド・クローネンバーグ監督作『ザ・フライ』 [c]Everett Collection/AFLO

多次元のリックとモーティが集まった要塞都市が描かれる「リックとの遭遇」

よりいっそうマルチバースの設定を生かしているのが、シーズン1の第10話「リックとの遭遇」。このエピソードは、リックが朝食を食べていると別の次元から現れたリックとモーティによって殺されてしまうという衝撃の展開から幕を開ける。

実は殺されたのは、物語がおもに進行している地球C137のリックとは別次元のリック。しかし、C137のリック&モーティもまた、家族と朝食を食べていたところ、突然ポータルから現れたリック軍団によって“評議会”へと連れて行かれ、多次元のリック殺しの罪に問われてしまう。間一髪逃れたリックとモーティは、濡れ衣を晴らすため、事件を起こした真犯人を捜すというストーリーが繰り広げられていく。

評議会が開かれる要塞都市には、あらゆる次元のリックとモーティが集結しており、なかには見た目が違うものや、性格が異なるものも。そんな次元の違いによる個体差が物語の真相、オチへとつながっており、マルチバースの妙味が存分に味わえるエピソードとなっている。

現実の社会問題ともリンクした名エピソード「アトランティス最高!」

そしてもう1つ、「リックとの遭遇」と合わせてチェックしたいエピソードが、シーズン3第7話の「アトランティス最高!」だ。このエピソードはシーズン3の第1話「絶品の四川風ソース」で、C137のリックとモーティの活躍により、リック独裁が打ち倒されたあとの要塞都市が舞台。しかし、C137のリックとモーティは物語にまったく関与しないというユニークな作りになっている。

独裁政権が崩壊した要塞都市では民主制が敷かれたものの、リックとモーティではリックのほうが基本的には賢いため(次元によって個体差はある)、モーティの多くは貧困層だったり、リックの助手となる教育を受けたりと、支配と被支配の関係がハッキリと線引きされていた。

そんななか、要塞都市の次期大統領を決める選挙が開催。泡沫候補だと思われていたあるモーティが、演説でリックとモーティの間にある分断やリック同士の格差など都市の問題について力説すると、一躍有力候補に躍り出るのだが…。

リック同士でも微妙な差異があり、そのことが格差や不満につながったり、リックとモーティとの間で差別、分断が横行していたり…と、あらゆる次元からリックとモーティが集まっているからこそ生じる問題が、現実社会の問題と重ね合わせて語られるこのエピソード。マルチバースの設定を生かしながら、鋭い社会性も帯びた物語は高く評価された。

モーティと違って、物怖じしない性格のサマー [c]Everett Collection/AFLO
モーティと違って、物怖じしない性格のサマー [c]Everett Collection/AFLO

マルチバース以外にも、バーチャル世界や記憶を題材にしたSF的なおもしろさに満ちたエピソードから、前述のリックがピクルスになって大冒険するという狂気的なエピソードまで、一筋縄ではいかないようなストーリーが楽しめる「リック・アンド・モーティ」。時にはとことんくだらなく、時には深く考えさせられるような唯一無二の世界観をぜひ味わってみてほしい。

文/武藤龍太郎

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