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中村倫也のネクタイを考察『石子と羽男』2話。木村佳乃の声量、おいでやす小田を上回る

  • 2022.7.29
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金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)2話が取り上げたのは、スマホゲームの高額課金をめぐる「未成年者取消権」の問題。有村架純と中村倫也をダブル主演に、『MIU404』『最愛』(ともにTBS系)などを手掛けた新井順子プロデューサー×塚原あゆ子ディレクターがタッグを組んだドラマの2話を振り返ります。

親ガチャとスマホの課金ゲーム

7月22日放送の金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)第2話。弁護士の羽男こと羽根岡佳男(中村倫也)とパラリーガルの石子こと石田硝子(有村架純)が臨んだのは「未成年者取消権」が関わるトラブルだ。

中学受験を目指して塾に通っている小学生・孝多(小林優仁)は、受験をやめるためにスマホゲームの「ドロッピングパズル」、通称「ドロパズ」に19万円以上の課金をしてしまう。運営会社は返金に応じない。困った母親の瑛子(木村佳乃)は、石子と羽男がいる潮法律事務所の無料相談会に駆け込んだ。

スマホゲーム、課金、親子の問題。そこから「親ガチャ」という流行り言葉に繋がる。孝多の塾の仲間には、周囲から「親ガチャに当たった」と言われる医者の息子・栄一(横山歩)や、ゲーム好きなのに親から禁止されており「親ガチャ外れた」と愚痴を言う絵美瑠(夏野琴子)がいる。

孝多と瑛子は母子ふたり暮らしだ。父親については触れられないが、ふたりの家の壁に貼ってあるたくさんの写真からは、孝多が幼い頃からの父親の不在を感じる。ダブルワークで金銭的にも苦労をしている瑛子。孝多と一緒に食卓を囲む時間もない。栄一のような余裕のある家庭ではないとわかっている。それでも、絵美瑠の「親ガチャ外れた」という言葉に、孝多は同意せず沈黙をつらぬいていた。

瑛子に苦労をかけている。それを理解している孝多は、中学受験を諦め、塾を辞めるためにゲームに高額課金をし、「受験ノイローゼ」を装うつもりだった。しかし、孝多が課金をやめても、瑛子の元にはさらに高額な課金の請求が届く。事態は「未成年者取消権」以上の大きな問題になっていく。

声と体格を活かした宮野真守

当初、「未成年者取消権」を行使すればすぐに返金に応じてもらえるであろう、と羽男は踏んでいた。「ドロパズ」の運営会社の顧問弁護士は、かつて羽男が勤めていた「リック&ベンジャミン法律事務所」の同僚・丹澤(宮野真守)。辞めたことを謝る羽男に「支障ない」と笑って返す丹澤は、明らかに羽男を下に見ている。

丹澤に返金要請をしに行くとき、羽男は赤いネクタイを締めていた。その結び目は「エルドリッジノット」という華やかな結び方。結び目が複雑に重なっている。だがそのときは、孝多が年齢確認画面で「18歳以上」を選択していることや、スマホの名義が瑛子であることから、利用者が未成年であると証明できない、と突っぱねられてしまう。

華やかなネクタイの結び方を選んだのは、羽男なりの虚勢だったのだろう。辞めた事務所に行くことも、当時の同僚である丹澤に会うことも、気が重かったはずだ。対して丹澤は、襟のないTシャツにジャケットのこなれたファッション。ハッキリとした口調で何度も羽男の言葉をさえぎる。

丹澤を演じた宮野真守は、身長182cmの人気声優だ。彼の体格と声の通りの良さが、少し頼りなくてつい早口になってしまう羽男を圧倒する。見た目と声で圧倒するという宮野真守は適役だ。

揺るがぬ自信を表すネクタイの結び方

事件は「ドロパズ」への返金要請に留まらなくなっていく。栄一が何者かに脅され、孝多のアカウントを乗っ取り、さらなる高額課金をしていた。
ドラマ終盤、石子と羽男に犯行を指摘された犯人は「受験する子供の足を引っ張りたかった」と理由を明かす。犯人は子どもの頃、十分に教育を受けさせてもらえなかった、親ガチャに外れたと思っている人間だった。

石子もひとり親世帯だ。金銭的に恵まれていたとは言えず、今の時代であれば「親ガチャ外れ」と言われたかもしれない。仕事の経験上だろうか、石子も「ひどい親がいるのは事実」と認めている。そのうえで、犯人にこう訴えた。

「でも、多くの親は頑張って親をしていると思うんです。多くの子供も期待に応えようと頑張って子どもをしています。そういう親子の関係を当たりだハズレだっていうのは、何の意味があるんだろう。以上です」

第2話では、石子の父親・綿郎(さだまさし)と母親が離婚していることや、石子と綿郎は離れて暮らしていた時期が長いことなどが明かされている。苦労の多い親子として生きてきたからこそ言える「親ガチャ」という言葉への批判。孝多も「親ガチャ外れ」に同意してはいなかった。流行りの言葉に乗らずに親を見ている子どももきっとたくさんいる。

クレジットカード不正利用の事件が解決し、改めて「未成年者取消権」を訴えに丹澤のもとを訪れた石子と羽男。羽男が締めているブルーのネクタイは「トリニティノット」に結ばれていた。これもエルドリッジノットと同じく華やかな結び方だ。

けれど最初の訪問時と違うのは、羽男の自信が冷静さとなり、今度は丹澤を圧倒する側になったこと。トリニティには三位一体という意味があり、石子と羽男、そして法律・事実がひとつになっているようにも思えた。また、ブルーも彼の冷静さを表し、脚を組んで前を見据える羽男を正面から撮ったカメラワークは揺るがぬ自信を表現していた。

おいでやす小田を圧倒、木村佳乃の声量

今回は、ベテラン俳優の木村佳乃が参加。潮法律事務所で蕎麦屋の塩崎(おいでやす小田)と鉢合わせたときの「ギャー!」の声量といったら。おいでやす小田と言えば声が大きいことで知られているが、木村の「ギャー!」はそれを上回る勢いで、思わず笑ってしまった。

彼女は、バラエティ番組『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)や『所さん!大変ですよ』(NHK)でも活躍している。黒い全身タイツを着たり、芸人・イモトアヤコのコスプレをしたりと「木村佳乃ってそんなことまでやってくれるの!?」と驚く体当たりっぷり。『石子と羽男』でも、おいでやす小田とともにコメディ部分をグッと際立たせていた。

次回、第3話のゲスト俳優は井之脇海だ。ドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系)や朝ドラ、大河ドラマなどでの好青年役の印象が強いが、今回は「著作権法違反」で訴えられ逮捕された大学生を演じる。まったく反省の色が見えない憎たらしさを、どう演じてくるか楽しみだ。

レギュラー出演で忘れてならないのは、赤楚衛二が演じる潮法律事務所のアルバイト・大庭だ。羽男に「石子が好きなのか」と聞かれて、「そういうアレじゃないです! 全然アレです!」と、元気良く意味不明な受け答えをする姿は下っ端らしさ全開。雨の中、ジャケットを頭に被って走る石子を見つけ傘を差し出し、あいあい傘で肩を思いっきり濡らしているのも可愛らしいベタさ。羽男と話している石子をつい目で追っているわかりやすさも良い。

そんな大庭の視線に、石子も鈍感ながら気づきはじめている。あいあい傘の中で向かい合い、しどろもどろになる大庭を見上げる瞳に、ドラマ『中学聖日記』(2018年 TBS系)での教師役を思い出した。有村架純は、生徒や後輩など年下の心を掴む無垢さを目に宿すのが上手い。ちなみに、『中学聖日記』のプロデューサーと演出家は『石子と羽男』と同じ新井順子・塚原あゆ子コンビ。有村架純の強みを知り尽くしている。

第3話で取り上げられるのは最近話題の「ファスト映画」。第2話では石子の家庭事情に少し触れられたが、第3話では羽男の家族が登場するようだ。ファスト映画の問題と羽男の家庭がどうリンクしていくのか楽しみだ。

■むらたえりかのプロフィール
ライター・編集者。エキレビ!などでドラマ・写真集レビュー、インタビュー記事、エッセイなどを執筆。性とおじさんと手ごねパンに興味があります。宮城県生まれ。

■pon3のプロフィール
東京生まれ。イラストレーター&デザイナー。 ユーモアと少しのスパイスを大事に、楽しいイラストを目指しています。こころと体の疲れはもっぱらサウナで癒します。

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