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投資用マンション「年金代わりになる」「節税できる」の謳い文句に潜む恐ろしい盲点

  • 2022.7.14
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〈前編のあらすじ〉

関東のとある地方都市に住む奥村恵美子さん(仮名)は57歳の専業主婦。夫の亮介さん(59歳、仮名)は、一部上場のメーカーに勤務する営業職の転勤族。亮介さんは現赴任地を最後に定年となり、その後は東京にマンションを購入して夫婦で老後生活を送る予定でした。

しかし、亮介さんが恵美子さんに黙って、ワンルームマンション投資を始めていたことが発覚しました。しかも、預貯金の一部を使い、かつ定年後も続くローンも組んでしまったと言います。

家族としては、その投資用マンションを売却し、手放してほしいと考えていますが、それは可能なのでしょうか? 後編では、家計や奥村家の資産、マンションの収支から検証していきます。

●前編はこちら

奥村家の家計とワンルームマンション投資の収支

亮介さんが間もなく定年を迎える、奥村家の家計状況は、以下のとおりです。

亮介さんの手取り年収:約1000万円

1カ月の生活費(夫婦2人分):約35万円

預貯金:3000万円(投資用ワンルームマンションへの頭金や諸経費を払った後の金額)

※亮介さんの定年退職時に2000万円程度の退職金を受け取る見込み

子育てが終わった夫婦2人の生活に経済的な問題はなかったことが分かります。家計収支の黒字分は預貯金に蓄えられ、このまま定年まで増加していく見込みです。亮介さんはゴルフなどの趣味にそれなりにお金を使いますが、特に問題になることはありませんでした。今後は、定年後に“終の棲家”として3000万円程度のマンションを現金で買う予定で、資金を準備していたとのことです。

ワンルームマンション投資の収支等

亮介さんが買ったワンルームマンションの収支は、以下のようになっています。

ワンルームマンションの物件価格:3000万円(築25年、建物部分2100万円)

ローンの返済期間:20年

管理費・修繕積立金:3万円/月

頭金:1000万円

ローン返済額:10万3000円/月

月額家賃:13万5000円

不動産投資では社会問題となった事件もあり、誰でも融資を受けられるわけではありません。しかし、亮介さんのような高収入の会社員であれば貸し出す銀行はあるので、販売会社も強く勧めたのだと推測されます。

亮介さんのワンルームマンションは購入から相談時まで約1年間、ずっと入居者がいて家賃収入を得られています。しかし、ローンの返済に管理費・修繕積立金を加えると収支はトントン、固定資産税・都市計画税、火災保険などの分は赤字となります。赤字となる金額は、年間およそ10万円程度です。

ワンルームマンション投資の謳い文句「節税効果」はなぜ得られるのか

亮介さんはその点について、販売会社の担当者から「赤字分で節税できる」と説明を受けていたそうです。不動産投資で家賃収入から経費を差し引いた金額は、不動産所得として扱われます。不動産所得はマイナスになるケースもあり、その場合は給与所得などから差し引くことが認められています(税の計算では、損益通算といいます)。

固定資産税等“かかったお金”を経費として差し引けるのは当たり前ですが、さらに不動産の場合には減価償却という仕組みがあります。建物の購入費は一度に経費として計算するのでなく、耐用年数に応じた減価分を毎年経費として差し引けるのです。価償却費は建物価格に耐用年数ごとの償却率を掛けて求めます。亮介さんのワンルームマンションの耐用年数は32年(償却率0.032)で、毎年の減価償却費は67万2000円です(2100万円×0.032)。つまり、実際には支出のない減価償却費の約67万円を所得から差し引けるというわけです。

こうしたことから「節税」は、確かに不動産投資のメリットの1つではあり、不動産投資を勧める際の常套句になっています。亮介さんも「年金代わり」に加え、こうした謳い文句で心動かされてしまったのでしょう。

ただし、定年後の年金生活では「節税メリット」はあまり意味がないものに…

亮介さんの現状のワンルームマンション投資の収支は、特段問題があるとはいえません。確かに、ローンの完済後は家賃収入を年金代わりに使えるようになるでしょう。

ただ、定年後は不動産投資の多少の赤字には耐えられても、長期の空室で家賃ゼロが続いた場合はただ赤字が累積する一方になります。また、減価償却での節税が有利なのは高収入な現役のうちだけで、年金生活者になれば、あまりメリットはありません。

「ワンルームマンションを手放してほしい」という家族の想いは叶うか

ここまで説明したところで、

「やはり、それほど割のいい投資ではないと思えます。なんとか売却できないでしょうか」

と、お2人は口を揃えて言いました。

不動産投資に失敗して物件を売却するケースはよくありますが、必ずしも希望価格で売れるとは限りません。ローンの残債を上回る金額で売却できなければ、ローンが残ります。その場合、残りを一括返済できなければ、売却そのものができなくなってしまうのです。

ただ、恵美子さんによれば、マンションの買い取りを希望するダイレクトメールは頻繁に届くとのこと。もしかすると希望価格で売却できるかもしれません。

そこで、いくらで売却できるかを都内の信頼できる不動産会社に査定してもらうことにしました。

後日、由佳さんから不動産会社の担当者との面談の報告をいただきました。その席で、次のように言われたそうです。

・亮介さんのマンションは都内の人気エリアにあり、空室になりにくいと考えられる

・購入金額より高く売るのは無理でも、残債を上回る金額での売却なら可能ではないか

最終的に「売却希望であれば、仲介します」と提案され、ご家族はホッとして仲介を依頼したとのこと。

「これでマンションが売れれば、一安心です。両親には早く定年後に住むマンションを見つけてほしいです」と由佳さん。

ご家族には亮介さんに対していろいろ言いたいこともあるでしょう。しかし、FPとしては「不動産投資で無理をして自己破産」のような痛ましい話ではなく、胸をなで下ろしました(立地がよかったのが幸いしたのでしょう)。

***

このような事例が多いのは、不動産には金融商品の投資とは違う魅力があるからではないかと思います。「大家さん」になることには、一種のロマンがあるのかもしれません。さらに、「節税」「年金代わり」というキラーフレーズが背中を押すのでしょう。

とはいえ、最低でも数百万円の投資となります。一時の感情で取り組むのは避けてほしいところです。

Finasee編集部

金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。

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