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『わたしは最悪。』で見つめ直す自分自身の人生 ヨアキム・トリアーの原点回帰的な作品に

  • 2022.7.2
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『わたしは最悪。』(c)2021 OSLO PICTURES – MK PRODUCTIONS – FILM I VAST – SNOWGLOBE – B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA

リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は思い通りの人生を過ごせていない宮川が『わたしは最悪。』をプッシュします。

映画を安く観ることができるファーストデーの7月1日。『トイ・ストーリー』の人気キャラクターが主人公のピクサー作品久々の劇場公開作『バズ・ライトイヤー』、『ムーラン・ルージュ』のバズ・ラーマン監督がエルヴィス・プレスリーの人生を描いた『エルヴィス』、『ドクター・ストレンジ』のスコット・デリクソン監督がホラー映画に回帰した『ブラック・フォン』、ポール・トーマス・アンダーソン監督がフィリップ・シーモア・ホフマンの息子クーパー・ホフマンと3人姉妹バンド「ハイム」の3女アラナ・ハイムをキャストに迎えて撮りあげた青春映画『リコリス・ピザ』、台湾発のR18+ホラー『哭悲/THE SADNESS』、2021年の韓国No.1ヒット作となったキム・ユンソク主演の『モガディシュ 脱出までの14日間』、マギー・Q、マイケル・キートン、サミュエル・L・ジャクソン共演の『マーベラス』など、7月1日公開の作品は1日ではその全てを観ることができないほどの話題作揃い。その中でも今回は、ヨアキム・トリアー監督の『わたしは最悪。』をオススメしたい。

第94回アカデミー賞で国際長編映画賞と脚本賞にノミネートされた本作は、多彩な才能を持っているもののどうにも方向性が定まらない人生を送る30歳のユリヤが、理想の未来とシビアな現実の間で揺れながらも、人生を選択していく模様を描いた恋と失敗と成長の物語だ。

前作『テルマ』では初のホラーに挑み、その前の『母の残像』ではジェシー・アイゼンバーグ、ガブリエル・バーン、イザベル・ユペール、デビッド・ストラザーンらをキャストに迎えハリウッドデビューを果たしたヨアキム・トリアー監督だが、今回の『わたしは最悪。』は、2015年の『トーキョー ノーザンライツフェスティバル』で上映された長編監督デビュー作『リプライズ』、続く第2作『オスロ、8月31日』の初期2作に原点回帰したような作品だ。

作家志望の幼なじみの青年2人の明暗を描いた『リプライズ』、麻薬中毒患者の青年が得た外出許可の1日を描いた『オスロ、8月31日』。その2作品に共通していたのは、ノルウェーのオスロという街を舞台に、心に孤独や葛藤、絶望を抱えた青年の心の揺れを、ただ悲観的に描くのではなく、スタイリッシュな演出と独特の語り口、類まれなる映像センスでポップに描いていることだった。

そんなヨアキム・トリアーが今度は女性を主人公に据え、再びオスロの街を舞台に描いた『わたしは最悪。』。予告編やすでに公開されている本編映像などを観ればわかるように、その映像センスはさらに研ぎ澄まされており(映像はぜひ映画館でご覧いただきたい)、10代の頃からの付き合いだというトリアー監督と共同脚本のエスキル・フォクトとの洗練されたシナリオにはただただ感嘆するばかり。『オスロ、8月31日』に出演したレナーテ・レインスヴェが主人公のユリヤを演じ、『リプライズ』『オスロ、8月31日』の2作品で主演を務めたアンデルシュ・ダニエルセン・リーがその恋人アクセルを演じていることからも、まさにヨアキム・トリアーの集大成的な作品と言えるだろう。

映画を観終わったあとに自分の人生の景色が変わるような、そんな希望に満ち溢れた映画だ。あなたは最高? それとも最悪?(宮川翔)

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