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小5男子が思わず「うわぁ...」と声を漏らした、"戦争と平和"を考える絵本とは

  • 2022.7.1
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読み聞かせボランティア歴17年のベテラン・ミモザさんがおすすめ絵本を紹介する「ミモザの読み聞かせ絵本」。第2回のテーマは「戦争と平和の絵本」です。夏の平和教育に合わせて、戦争と平和について考える、小学生向けの絵本を選びました。

『へいわとせんそう』(ブロンズ新社)
谷川俊太郎 文/Noritake イラスト

へいわのボク。せんそうのボク。
へいわのかぞく。せんそうのかぞく。
へいわのまち。せんそうのまち。

「へいわ」と「せんそう」をわかりやすいイラストで見比べ、「せんそうになるとどうなるのか」を考える絵本。「へいわ」と「せんそう」はこんなに違う。では、「みかた」と「てき」は違う? 小学校低学年から、全学年におすすめです。

『ぼくがラーメンたべてるとき』(教育画劇)
長谷川義史 作・絵

ぼくがラーメンたべてるとき、
となりのみっちゃんがチャンネルかえた。
そのとなりのまちのおとこのこがバットをふった。
そのとなりのくにのおとこのこがじてんしゃをこいだ。
そのとなりのくにのおんなのこがみずくんだ。
そのとなりのくにでは......。

日本に住む自分がラーメンを食べているとき、他の国の子どもたちは何をしているのだろう? 日常から出発して、世界で起こっていることを身近にとらえます。海の向こうの戦争がメディアで伝えられている今だからこそ、よりいっそう感じるものもあるはずです。

ミモザさんがこの絵本を小学校5年生のクラスで読み聞かせしたときに、最後まで読んだあと、一人の男の子の「うわぁ......」という心の声が漏れたのだそう。きっとその男の子の心には、この絵本で感じたことが長く残っていくのでしょう。

『せかいいちうつくしいぼくの村』(ポプラ社)
小林豊 作・絵

ここは、アフガニスタンのパグマン。
はなでいっぱいの春。くだものがみのる夏。
ヤモはせんそうへいったにいさんのかわりに、
まちへすももとさくらんぼを売りにいきます。
うつくしい村、おいしいくだもの。
次の春にはきっとにいさんも帰ってくるはず。

ところが、最後はこんなページで終わります。

「この としの ふゆ、
村は せんそうで はかいされ、
いまは もう ありません。」

戦争が壊してしまうものとは。子どもだけでなく、大人の心にも深く響く絵本です。

『ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸』(集英社)
ベン・シャーン 絵/アーサー・ビナード 構成・文

最後にご紹介するのは、小学校5・6年生向けの長い絵本。静岡県焼津港のマグロ漁船「第五福竜丸」の乗組員たちは、1954年3月1日、ビキニ環礁でアメリカがおこなった水素爆弾実験で「死の灰」を浴びました。船は帰港しましたが、乗組員たちの症状は悪化し、9月23日、無線長の久保山愛吉さんが「原水爆による犠牲者は、私で最後にしてほしい」と言って亡くなりました。風化させてはならない事件を後世に伝える絵本です。

画家ベン・シャーンが第五福竜丸を描いた絵に、広島市在住の詩人アーサー・ビナードさんが文をつけました。美術作品としても価値の高い作品です。

授業で学ぶ平和学習も大切ですが、戦争を絵本で伝えると、知識だけでなく心の動きとして子どもたちの中に残り、戦争と平和についてより深く考えるきっかけになります。

ミモザさんは今回紹介した絵本について、「みんながみんなわかるとは限らないけれど、わかる子の心には長く残る」と話しています。この夏は、平和学習に絵本を取り入れてみてはいかがでしょうか。

「ミモザの読み聞かせ絵本」、次回もお楽しみに。

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