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石川震度6弱…地震頻発の日本列島「命を守るための第一歩」とは?

  • 2022.7.1
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家具を固定していないと、どうなる?
家具を固定していないと、どうなる?

石川県で最大震度6弱を記録する地震が6月19日に起きるなど、このところ地震が頻発しており、南海トラフ地震の前触れではないかという臆測が飛び交っています。来る大地震に備えて何をすべきか、いろいろとお話したいところですが、防災はケース・バイ・ケースなので、「これでOK」という正解はありません。ただ、「命を守るための第一歩」として、ぜひ最初にやっておいてほしいことがあります。

最初の揺れから命守る

筆者は地震の専門家ではないので、実際のところ、最近頻発している地震と南海トラフ地震の関係はよく分かりません。しかし、一つ言えることは、現代の科学では、私たちが身構えるのに役に立つほど正確に、地震の発生時期を予測することはできないということです。

南海トラフ地震のような海溝型の地震は、プレートが動いている限り、周期的に繰り返し発生します。だから予測時期の範囲を数十年単位まで広げれば、かなり正確に発生を予測できます。実際に、南海トラフ地震は向こう30年間に70~80%の確率で発生すると予測されており、これはかなり高い確率です。

しかし、30年の間のいつ身構えたらよいのかは、この情報からは全く分かりませんし、30年間机の下に潜って生活するわけにもいきません。それでも海溝型地震はいつか必ず起きるので、最近の地震が巨大地震の前触れであろうがなかろうが、被害を減らす準備をしておくに越したことはありません。

先ほども触れましたが、筆者は繰り返し「防災はケース・バイ・ケースなので、これをやっておけばOKという正解はない」ということを書いてきました。この主張を曲げるつもりはありませんが、地震防災でみんなが共通してやっておいた方がよい対策を一つ挙げるとすれば、「最初の揺れでけがをしないための準備」だと思います。

最初の揺れでけがをすると困るのは、個人属性も地域特性も家族構成も季節も時間帯も関係ありません。特に大災害の直後は、救助や医療の人員・設備・資材などが圧倒的に不足するので、平時のように適切な医療を受けられる保証はありません。また、津波や火災など、地震に付随して危険なことが起きた時に、けがをして逃げられなくなってしまうと、生き延びられる確率が大幅に下がります。

では、私たちは何をしておけばよいのでしょうか。まずは倒壊した建物の下敷きにならないことが重要なので、自宅や職場など、長い時間いる建物の耐震性に問題がある場合には、補強をするか引っ越すことを検討してください。

また、耐震性が十分か分からない場合には、専門家の診断を受けましょう。もちろん補強や引っ越しには大きな費用がかかり、生活の変化を伴うこともあるので、容易ではありません。しかし諸般の事情が許すなら、シンプルで有効な対策です。自治体によっては、診断や補強に補助金を出しているところもあります。

「家具固定」が第一歩

家も職場も丈夫な建物の場合には「有効な方法」で家具固定をしてください。家の補強や引っ越しに比べれば 、家具固定ははるかに安価で手軽です。そして、これが「命を守る第一歩」となるのです。地震によるけがの3~5割は、倒れてきた家具によるものです。可能ならL字金具を使って家具を壁に固定してください。これが最も強力な家具固定の方法です。

「賃貸だから無理」と思っている人は、ダメ元で大家さんに相談してみましょう。もちろんダメと言われるかも知れませんが、住人がけがをして家賃収入がなくなる可能性を考えたら、OKしてくれる大家さんもいるかもしれません。

それに、家具固定で開く穴は数ミリ程度なので、パテ埋めすれば、ほとんど目立たなくなります。次の人に貸す時に壁紙を替えるなら、パテ埋めの必要もありません。この記事を読んでいる大家さんは、住人に相談されたら、ぜひOKを出してください。いや、むしろ大家さんの側から、住人に家具固定を勧めに行ってもよいかもしれません。

重たい家具が倒れて死亡者が出てしまうと、そこは事故物件になってしまいます。また、危険が予見でき、回避する方法を住人から提案されたのに拒否したとなると、場合によっては、けがをした住人から訴えられるかもしれません。

L字金具が難しい場合、突っ張り棒とストッパーの組み合わせも一つの選択肢です。どちらか一方では大きな効果は期待できないようですが、組み合わせればそれなりの効果はあるようです。ただし、つり天井など、天井に十分な強度がない場合には、効果は限定的だと考えてください。また、L字金具で固定する場合も共通ですが、上下に分かれる家具は、忘れずに連結しておきましょう。

固定以外にも、模様替えで被害を減らす方法もあります。要は、普段人がいる場所に家具が倒れてこなければよいのです。家具同士を合体させて、倒れにくくする方法もあります。また、そもそも背の高い家具や重たい家具を置かないのがベストです。背の高い家具を低い家具に買い替えてもよいかもしれません。

オフィスのコピー機など、車輪がついている重たいものは、地震の時に部屋中を走り回って大変危険です。壁との間に挟まれたら、致命傷を負う場合もあります。こういったものはまず車輪をロックし、可能なら床や壁に固定しましょう。床への固定はネジが理想ですが、粘着式のストッパーでもそれなりの効果を発揮します。

ガラスや食器の飛散にも気を付けましょう。普段靴を履いていない自宅で、ガラス戸や食器の破片が飛び散ってしまうと、大けがの原因になります。ガラス戸には飛散防止フィルムを貼る、食器棚は開かないように扉にストッパーを付けるなどしておくとよいでしょう。もちろん職場のガラスも飛び散らないに越したことはありません。

内閣府の調査によれば、自宅の家具固定をしている人は約4割です。残りの6割の皆さん、私たち素人が最近の地震と巨大地震の関係を考えても分からないので、あれこれ心配する前に、まずは家具固定をしましょう。備蓄や避難計画策定など他にもやるべきことはたくさんありますが、他の対策は全て、一発目の揺れで死ななかった場合の対策です。

まずは発災直後に身を守るための対策を行い、それができたら他の対策に取りかかり、やれることをやりつくしてから、心配しましょう。

近畿大学生物理工学部准教授 島崎敢

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