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「同性愛の矯正」に対する専門家たちの見解は? 自民党議連で配布された冊子は誤りだらけ

  • 2022.6.30
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自民党の議員の多くが参加する議員連盟の会合で、同性愛は「精神の障害」「回復治療の効果が期待できる」とする冊子が配られていたことを伝えた松岡宗嗣氏の記事が波紋を呼んでいる。同性愛は治療などによって矯正できるという「コンバージョン・セラピー(転向療法)」について、医学会や研究者はどう言っているのか? 転向療法の研究が進んでいるアメリカの専門家たちの見解を中心にまとめた。

アメリカ医師会(AMA)

「(コンバージョン・セラピーの)根底には、同性愛や性別不適合は精神障がいであり、性的指向や性自認は変えられるという前提があります。この仮定は、医学的あるいは科学的な証拠に基づくものではありません。専門家たちは、同性愛や性別不適合の病理学的処理を否定するということで意見が一致しており、性的指向を変えることの有効性を裏付ける証拠はありません」

www.ama-assn.org/delivering-care/population-care/advocating-lgbtq-community

アメリカ精神医学会(APA)

「同性愛を改心させたり「修正」したりしようとする心理療法は、科学的妥当性に疑問のある発達理論に基づくものであります。さらに、「治癒」についての逸話的な報告は、心理的な害についての逸話的な主張によって相殺されます。この40年間、「修復」しようとするセラピストたちは、彼らの治癒の主張を立証する厳密な科学的研究を何一つ行なっていません」

media.mlive.com/news/detroit_impact/other/APA_position_conversion%20therapy.pdf

拷問被害者のための国際リハビリテーション協議会(IRCT)

「IRCTとIFEGの専門家たちは声明で、転向療法は69カ国以上で実施されており、非科学的で、拷問と虐待の禁止に関する国際条約に違反していると結論づけています。IRCTは、転向療法がもたらす極度の、そしてしばしば想像を絶するような人間の苦痛に基づき、この実践を世界的に禁止することを求めます」

irct.org/media-and-resources/stories/article/1027

米国児童青年精神医学会(AACAP)

「科学的証拠に基づき、『コンバージョン・セラピー』(または、特定の性的指向および/または性別の方が好ましいとするために行なわれる他の介入)は、科学的信頼性および臨床的有用性を欠いていると断言します。さらに、そのような介入が有害であるという証拠もあります。その結果、『コンバージョン・セラピー』は子どもや青少年に対する行動医学的治療の一部とされるべきではありません」

www.aacap.org/aacap/Policy_Statements/2018/Conversion_Therapy.aspx

アメリカ合衆国保健福祉省内の薬物乱用精神保健管理局(SAMHSA)

「同性への性的指向および多様な性自認と性表現は、人間における多様性の正常な範囲の一部であり、精神障がいではありません」

「ジェンダー適合や異性愛指向のような固定的な結果を目的とした介入、性自認、性表現、性的指向を変えることを目的とした介入は強制的であり、有害となる可能性があり、行動療法に含まれるべきではありません」

store.samhsa.gov/sites/default/files/d7/priv/sma15-4928.pdf

コンバージョン・セラピー研究の分野で40年近い経歴を持つ心理療法士Douglas C Haldeman

「この40年間、多くの研究を通して、SOCE(※性的指向を変えようとする取り組み)は効果がないだけでなく、有害であることが明らかになっています」

www.apa.org/pubs/books/case-against-conversion-therapy?tab=1

国連(UN)

「医療従事者が障がいでないものを治療すると称することは一般に非倫理的であり、「害を及ぼさない」という原則から、医療従事者は効果がないと認められた治療法や達成不可能な結果を示す治療法を提供しないことが義務づけられている」

documents-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/G20/108/68/PDF/G2010868.pdf?OpenElement

今回は7つの見解を紹介したが、他にも数十の団体が、同性愛を精神障がいだとする見解や、コンバージョン・セラピー(転向療法)の有効性を否定している。

また、冊子には「世界には同性愛や性同一性障害から脱した多くの元LGBTの人たちがいる」という表現があったというが、コンバージョン・セラピーで同性愛が“治った”と主張してきた人たちの多くが、のちにその主張は差別や暴力への恐怖から強制的に言っていた嘘であることを認めている。このような情報は、日本でもネット検索すれば出てくるうえ、ドキュメンタリー映画や書籍ですぐに確認することもできる。つまり、正しい知識を得たければすぐにできたはずなのだが、それをしない怠慢体質がどれほど多くの重大な話し合いの背景にあるのか? 意思決定者たちには、豊富なエビデンスや専門家・当事者の声を最低限のソースとして求めて欲しいものだ。(フロントロウ編集部)

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