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池袋駅周辺はかつて「消滅可能性都市」だった!?どん底からの復活劇に迫る

  • 2022.6.30
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日本有数のターミナル駅、池袋。実はかつて「消滅可能性都市」に指定された過去があります。近年広い公園や小学校が整備されるなど、住みやすい街へと変貌を遂げた豊島区の取り組みについて、エデュケーショナルライターの日野京子さんが解説します。

JR東日本の駅の中で新宿駅に次ぐ第2位の乗降人員を誇る池袋駅。JRの他にも、東武鉄道、西武鉄道そして東京メトロも走る日本有数のターミナル駅です。池袋駅を中心に大型商業施設や、池袋を代表するサンシャイン60を擁するサンシャインシティなど東京を代表する繁華街として知られています。

2016年にリニューアルオープンした豊島区立南池袋公園(画像:photo AC)

池袋というと遊ぶ街というイメージや、立教大学のキャンパスがある街といった若者が集まるにぎやかな印象がありますが、自治体としては順風満帆とは言い難い時もありました。

池袋のある豊島区は2014(平成26)年に日本創成会議が発表した「消滅可能性都市」に東京都内23区で唯一、消滅の可能性があるとされ、当時は報道メディアでも大きく取り上げられました。

「消滅可能性都市」の定義は、2010年から2040年にかけて、20歳から39歳の女性が50%以上減少すると推計された自治体であり、一般的に少子高齢化が進む地方自治体という認識があります。池袋のある豊島区はそうした自治体の対極の立場にあるとみなされていただけに、衝撃も大きいものでした。

子育て世代に魅力を感じてもらえるかどうか

2014年の「消滅可能性都市」から脱却すべく、2016年度には区役所に「女性にやさしいまちづくり担当課」が設置され、自治体が抱える問題を直視し改善解決を目指していきました。また、それ以前から開発が進んでいた国内初となる役所と分譲マンションが一体化した高層ビル「としまエコミューゼタウン」が2015年に誕生するなど、2010年代半ばは豊島区にとって色々な意味で転換期となりました。

実は豊島区は日本一75歳以上の単身高齢者の割合が高い街(市区部)であり、一人当たりの公園面積が23区内で最小(豊島区「消滅可能性都市の指摘からのまちづくりの発展の姿」より)と、様々な課題を抱えている自治体でもあります。

さらに、日本有数の繁華街と子育て世代が住んで生活したいと思う街が両立するとは限りません。待機児童問題の解消といった子どもを育てられる環境の整備や、就学で気になる公教育の環境といった条件は必須です。 どちらかを取れば必然的にどちらかが弱くなるものですが、元々池袋駅周辺には「東京芸術劇場」を始めとする複数の劇場があり、「文化芸術の街」の土壌があります。こうした街の強みは子どもの情操教育や教養を育成しやすく、子育てをする上で魅力的です。

2019年に誕生した池袋西口公園のグローバルリングシアター。クラシック音楽のコンサートやダンス、演劇に対応した野外劇場になっている。(画像:photo AC)

街としてこれまで育っていたポテンシャルを強めるだけでは「住みたい」と感じることはできません。やはり、子育て世代が実際に住みたいと思うには、公教育の施設のきれいさや充実も判断材料になります。

小中学校の校舎の改築

公教育の校舎や施設の改修には時間や経費がかかります。先送りをしていると子育て世代は「もっと良い自治体へ」と住む場所の候補から豊島区を外してしまうため、同区では校舎の老朽化が進む区立小中学校の改築工事や、学校施設の大規模修繕が進められています。

例えば、2016年度に竣工した立教大学近くにある豊島区立池袋第三小学校の新校舎は、赤レンガ校舎で有名な立教大学の雰囲気と調和するような外観です。公立と私立、学校運営の形は異なりますが、「地域が持つカラー」を最大限に活かしています。

また、近年改修されている施設には、老朽化した校舎を単に建て替えするのではなく、地域の防災拠点としての役割も担う機能が備わっています。豊島区内の人口増加を踏まえると、災害時に拠点となる施設の充実も同時に必要なため、学校がその役目を果たすよう改築の際に組み込むのは非常に理にかなっています。

2016年度に完成した豊島区立池袋本町小学校・池袋中学校連携校の新校舎は、防災拠点の機能を兼ね備えています。 この他にも、文部科学省が2020年度に公表した「公立学校施設のトイレの状況」によると、豊島区の公立学校のトイレの洋式化は荒川区に次いで2位の94.3%と、公立学校にありがちな「古い」「汚い」というイメージからは脱却しているといえるでしょう。

「住む街」として進化している池袋界隈

学校の改築工事は、単なる公教育の設備だけでなく、地域が抱える「防災拠点不足」を解消している側面もあります。

緊急時には都心の自治体としての役割を果たせる機能、平常時はイベントが行われ人々が集まる場所、そして子ども達が遊べる場所であることを両立させることは大都市にとっては避けては通れない街づくりの課題です。

国内有数のターミナル駅である池袋駅があり、非常時には帰宅困難者が街に溢れることが懸念されます。豊島区は他の自治体に比べると防災公園の整備が遅れていましたが、2016年度の南池袋公園を皮切りに、池袋駅周辺では公園整備が進められてきました。

2019年にリニューアルオープンした「Hareza(ハレザ)池袋」がある中池袋公園(画像:photo AC)

2020年には、子育て世代に嬉しい子どもの遊び場確保と防災拠点の両方を取り入れた新しい公園「としまみどりの防災公園(通称 IKE・SUNPARK)」が誕生。旧造幣局の跡地を整備した、サンシャインシティからほど近くにある豊島区内最大の公園です。

防災拠点にもなる小学校への建て替え、少なかった公園の整備など、東京有数のターミナル・池袋駅がありながら「消滅可能性都市」と指摘された豊島区は、自治体が抱える問題点を洗い出し、その結果「住みやすい街」「子育てしやすい街」へと現在進行形で進化を遂げようとしています。

参照豊島区「消滅可能性都市の指摘からのまちづくりの発展の姿」https://www.city.toshima.lg.jp/001/kuse/shingi/documents/r2shingikai1-1.pdf

豊島区「池袋第三小学校の改築について」https://www.city.toshima.lg.jp/356/kosodate/gakko/gakkoshisetsu/034064.html

文部科学省 「公立学校施設のトイレの状況」(19ページ)https://www.mext.go.jp/content/20210316-mxt_sisetujo-000013490_02.pdfhttps://www.city.toshima.lg.jp/356/kosodate/gakko/gakkoshisetsu/034064.html

としまみどりの防災公園(通称 IKE・SUNPARK)https://ikesunpark.jp/https://www.city.toshima.lg.jp/356/kosodate/gakko/gakkoshisetsu/034064.html

日野京子(エデュケーショナルライター)

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