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「卵子凍結」のメリットとデメリットは?医師に聞きました

  • 2022.6.27
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結婚や出産の高齢化にともない、話題にあがるのが「卵子凍結」。自分とは別次元の話に思えますが、この時代そうではありません。今回は卵子凍結について、「はらメディカルクリニック」の鴨下桂子先生に伺いました。

Q1.卵子凍結とはどのようなものか教えてください。

卵子凍結とは、将来の妊娠のために、若いうちの卵子を保存しておくことです。女性は年齢の上昇に伴い、卵子の数が減少し、卵子の質が低下することが原因で妊娠しにくくなります。どんなに規則正しい生活をしていても、漢方やサプリメントを積極的に使用していても、卵子は時間に比例して老化を進める細胞です。卵子の老化は、治療や薬などを使って止めることはできません。また、一度老化した卵子を若い状態に戻すこともできません。だから、卵子の老化を止めようと思ったら、物理的に若い子ころの卵子を卵巣から採取して凍結保存しておく方法以外にないのです。

時代がどのように進んでも、医学的な生みどきは20歳~30歳前半。しかし、医学的な産みどきと、自分の産みどきは、必ずしも同じではありません。正しい知識を持ち、自分の体の状態を知り、医学的な産みどきと、自分の産みどきをすり合わせていくことが大切。そのすり合わせを医療技術の面でサポートするのが卵子凍結です。卵子凍結は女性の健康問題を技術で解決していく、フェムテックの1つです。

Q2.精子は凍結しなくていいのでしょうか?

精子は毎日新しく作られる細胞です。精子は約72日間で作られるため、質の低下は起こりにくいため、将来のために精子を凍結する必要はありません。男性は年齢が高くても妊娠への影響は限定的で、やはり重要なのはそのパートナーの女性の年齢ということになります。

Q3.卵子凍結のメリット、デメリットを教えてください。

メリットは、老化する前の健康な卵子を将来の妊娠のためにとっておくことで、妊娠が可能な年齢を引き延ばすことができるという点です。

デメリットは以下の3つでしょう。

1:お金がかかる

将来的に自然妊娠できれば、妊娠するためのお金はかからないのですが、将来のために卵子を凍結をする場合にはそのためのお金がかかります。

2:通院に時間をとられる

卵子凍結をする方のほとんどが仕事をしていますので、仕事と卵子凍結を両立する必要があります。卵子を凍結するためには平均4回医療機関に通う必要があり、そのうち3回は90分くらい滞在する必要があり、1回は卵子を採取する当日「採卵日」なので半日滞在する必要がります。通院のスケジュールは、卵子の発育次第で決まるため、仕事の都合に合わせられないこともあります。

3:将来の妊娠は保証されない

卵子を凍結保存しても、将来の妊娠が保障されるわけではありません。妊娠には、卵子の要因の他に、子宮内環境や母体の免疫問題、精子の問題など複雑な要素が絡み合っているからです。せっかく卵子を凍結保存したのに、結局将来、子供を授かれないこともありえます。

Q4.保険適用範囲と費用相場を教えてください。

今すぐ子供がほしい人が行う不妊治療は、今年4月から保険適用されました。しかし、将来子供がほしい独身女性が行う「卵子凍結」や、今はまだ子供はいらないが将来ほしいという既婚者が行う「受精卵凍結」は、妊孕性(にんようせい=妊娠する力)の温存が目的のため、これは保険適用外となり、自由診療になります。

自由診療の場合は、費用の設定は各医療機関の自由であるため、差が大きく、相場がわかりません。当院は2008年から卵子凍結をしており都内初の開始と思われますが、そのこともあり費用は恐らく都内で最も安いのではないかと思います。

卵子凍結の費用は、「(1)卵子を何個保存したいのか?」ということと、「(2)1回の採卵で何個の卵子がとれるのか」によって大きく異なります。もし、(1)が10個だとして、(2)において、Aさんは卵巣機能が高くて1回に卵子が10個取れる場合には採卵手術が1回で済みますので、この場合の初診から凍結完了までの総額は当院は40万です。しかし、もしBさんは卵巣機能が低くて1回に卵子は2個しか取れないとなると、採卵手術を5回繰り返しますので、費用は110万くらいになります。当院では、卵子凍結をする前に、1回の採卵で何個くらいの卵子がとれるのかということと、子供1人を生むために必要な卵子数は何個なのかということをシミュレーションしてから卵子凍結をするかどうかを決めていただきます。個別にシミュレーションが必要なくらいに個人差が大きいです。

Q5. どんな方に卵子凍結をすすめますか?

医学的側面から言いますと、産みどきを自分でデザインしたいと考える34歳までの女性に卵子凍結をすすめます。35歳を超えると卵巣内に残っている卵子の半分以上が遺伝子異常を起こすため効率が悪くなることから、34歳以下で行うことが望ましいです。

社会的側面から言いますと、現在生殖年齢にある日本人女性は、義務教育課程において卵子が老化することを全く学んでいませんので、リテラシーがないことは当然です。そうすると卵子凍結という技術を知ってからも実行まで時間がかかることを考慮しますので、36歳までに行うことが良いと思います。これは、36歳女性までは子供を授かれる高い確立がある程度担保できるからです。また、実際に当院で卵子凍結をしている方の平均年齢は38歳であることからも、卵子凍結のデメリットを理解した上で、今以上の卵子に老化が老化しないために、36歳を超えていても卵子を凍結保存するということも否定しません。

女性の生き方は多様化しています。産む人生も産まない人生も等しく価値ある生き方です。でも、産まないのと産めないのは 違います。だからこそ選択肢のある時期に自分の体を知り、自分がどうしたいのか“考える”ことが大切です。その結果、自分らしいライフキャリアの実現に卵子凍結が必要だと考える方と一緒に相談しながら進めていきたいと思います。

教えてくれたのは

出典: 美人百花.com

はらメディカルクリニック」鴨下桂子先生

医学博士、日本産科婦人科学会認定 日本産婦人科専門医、日本生殖医学会認定 生殖医療専門医、日本がん・生殖医療学会認定医がん・生殖医療ナビゲーター。2021年9月よりはらメディカルクリニック勤務。著書に『誰も教えてくれなかった卵子の話』(集英社、2014年、共著)

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